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「協力校? 協力という名前からして、協力するための校ですよね?」
「そうだ。本校に協力するための校だ。この協力校という制度は、高等学校通信教育規程で定められていて、法律的に認められている」
「合法的ですね」
「協力校を簡単に説明すると、本校以外の場所に設置できる分校だ。本校以外の都道府県に設置でき、複数の校を設置するのも可能だ。たとえば、本校が沖縄県に存在して、協力校が東京都や北海道に存在するといった感じだ」
「会社で言えば支社、店で言うなら支店ですね」
「この協力校の呼び方は、校によってバラツキがある。サポート校、○○キャンパス、学習センター、分校、技能提携校、サテライト校などと呼ばれたりもする」
「ややこしいですね」
「協力校では、面接指導や試験などに協力することが認められている。だが、あくまでも協力だ。学校の授業は、本校の教員以外は行えない。沖縄県の通信制高校に在籍している生徒は、東京都の協力校でも授業や試験を受けられる。本校が設置されている沖縄県まで行かなくても済むのだ」
「便利な制度ですね。本校まで遠出する必要がなくて、生徒の負担も軽いですよ。時間もかかりませんし、お金もかかりません。理にかなった制度ですね」
「一見すると、便利に見える。だが、この協力校という制度に問題があるのだ」
「どんな問題ですか?」
「この協力校の設置に関する取扱いが全国的に統一化されていないのだ」
「なんだか難しそうな話ですね」
「本来ならば、この協力校の制度は、全日制の高校や専門学校の校舎を借りたり、ちゃんとした設備を持った施設の利用が想定されていたのだ。が、しかしだ、この制度が拡大解釈されて、事実上、協力校が日本全国あちこちに無審査で建て放題になってしまっている現状があるのだ」
「やりたいほうだいですか」
「本校は正式な学校だ。設置条件などをクリアして、行政から認可を受ける必要がある。だが、協力校は建て放題なのだ」
「本校さえ建ててしまえば、あとは協力校を建て放題ですか」
「教員に関しても同じだ。本校は正式な学校なので、そこに勤める教員は教員免許状が必要だ。もちろん、中学以降は教科ごとに免許が必要だ。国語の免許なら国語だけ、数学の免許なら数学しか教えられない。英語の教員免許しか所持していないのに体育を教えたり、地理の免許しか持っていないのに音楽を教えたりするのは不可能だ」
「無免許の教員が授業して、授業無効になり、生徒が再履修を強いられる事件が起きますね」
「だが、協力校はやりたい放題なのだ。協力校にしか勤めない教員は、免許など必要ない。本校から出向いた教員が、面接指導や試験を行っているという体裁を執っているものの、現実は、現場で雇った免許を所持しているのか疑わしい教員が授業を行っているケースがかなり見受けられる」
「協力校は無法地帯ですね」
「そうだ。無法地帯だ。本校は正式な学校で、地方の協力校は無法地帯だ。これを踏まえた上で、今回のケースを当てはめる」
「はい」
「長尾グループは、私立沖縄サンフラワー高等学校を作った。それと同時に、協力校も作ろうとしたのだ」
「それ自体は、法律的に認められていますね」
「全国規模で協力校を設置したかったが、新しく作るとなるとコストが掛かる。そこで自分で所持している施設を流用したのだ」
「掛布予備校ですね」と私は先生の言葉を継いだ。「立地条件が悪くて、全国規模で売れ残った掛布予備校を、協力校として流用したと」
「その通り。だが、流用とはいえ、単純に流用したわけではない。掛布予備校という名を、そのまま使うわけにはいかなかった。新しい名前をつける必要があった」
「その新しい名前が、三波学園高等部ですね」
「そうだ。三波学園高等部が学校ではないと説明した理由が、理解してもらえたと思う。行政に正式に認められた私立沖縄サンフラワー高等学校の協力校が、三波学園高等部なのだ。三波学園高等部は、全国規模で展開されている無認可の民間教育施設でしかない。通っても高校の卒業にはならないし、高校の授業も免除されない。お前が見た三波学園高等部笠原校は、そのひとつだ」
先生の説明で、ある程度は納得できた。パズルのピースが繋がりを持ち始めた。
私が見た三波学園高等部笠原校は、無認可の民間教育施設だったのだ。立地条件が悪かったのも当然だ。そもそも、設置するための基準が存在しないのだ。風俗街の雑居ビルのワンフロアでも問題ないのだ。
だが、まだ疑問はある。私の記憶が正しければ、三波学園高等部のホームページには、「通信制高校」「ここで高校を卒業できる」「新しいタイプの学校」といった惹句が載せてあったはずだ。
私は、スマホを操作して、グーグルのトップページを表示した。「通信制高校」「三波学園高等部」のふたつのワードで検索しようとした。が、焦った手は、エンターキーを必要以上に押してしまい、「通信制高校」というひとつのワードだけで検索してしまった。
結果が表示された。
「年に一回一週間程度のスクーリングと自宅学習で高校を卒業 ○○高等学校」「中学生のための学校説明会開催 ××高等学校」「不登校でも大丈夫。大学進学を目指すあなたをサポート △△高等学院」「100%必ず卒業できる通信制高校 □□学院高等部」「携帯やネット利用の自宅学習と年数日だけのスクーリングで高校卒業 ●●高等学校」「充実のスクールカウンセリング ▲▲高等学園」「高校卒業から大学合格まで全面的にバックアップ ◆◆学園高等部」「貴方の夢を応援します。不登校からクリエイターに ◇◇高等学校」「通信制高校 ▽▽高等学院」「自分のペースで高校卒業 ◎◎学園高等学校」「専門的な資格が取れます ▼▼専門高等校」「高校卒業後の進路決定率100% ☆☆ハイスクール」「海外留学で充実の高校生活 ※※高等スクール」「だれでも簡単に絶対に高卒資格取得 〆〆スクール」「不登校から大学進学へ ♂♂学館」「進路を完全に保証 ♀♀高校」「ウェブを使って高校卒業 ##ネットスクール」「カウンセラーが常在してメンタル面をサポート &&学園」「高校卒業をしたい人はまずはご一報を **高等スクール」「高校卒業と専門資格を同時に @@高等学校」「未来の選択肢を広げます ♭♭スクール高等部」「絶対卒業絶対進学 ††高校」「高校卒業から 進路実現まで万全のサポート体制 ‡‡学園高等学校」「不登校の解決なら ??高等部」「中学から高校へ進学しなかったあなたへ !!高等学院」「いつでも入学だれでも卒業 ¥¥学院高等部」「全国どこからでも通えるキャンパスがあります ――学館高等部」「自分のペースで楽して卒業 ∥∥学園高等学校」「有名大学への合格者多数 ∞∞スクール」
私にも、事情が大体飲み込めた。
それでも、疑問はおさえられなかった。「通信制高校」「三波学園高等部」で再検索した。
私の記憶は正しかった。三波学園高等部のホームページには「通信制高校」「ここで高校を卒業できる」「新しいタイプの学校」と書かれている。
「でも、先生、三波学園のホームページには「通信制高校」「ここで高校を卒業できる」「新しいタイプの学校」と書かれていますよ」




