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「高校の卒業証書を売るといっても、掛布高校は廃校になりましたよね。校舎も売却済みですし。新しく学校を起こすとなると、お金や手間がかかりますよ」
「お金も手間もかけないようにした。それが、通信制高校だ」
「通信制高校には校舎が必要ないのですか?」
「さすがに校舎は必要だ。法律で定められている設置基準も存在する」
「ここらへんは全日制の高校と同じですね」
「設置基準の説明は省こう。重要なのは、行政からの認可を受けるためには、最低でも学校としての体裁を整える必要があった、ということだ。とにかく、校舎が必要だった」
「新しく校舎を立てたのですか?」
「新しく立てるとなると、土地が必要だ。校舎を新築するにしても、金と手間がいる。お前が指摘した通りだ」
「では、どうしたんですか?」
「掛布高校と同じだ」
「掛布高校と同じですか? 掛布高校は売却したんですよね」
「そうだ。ほかの学校法人が買い叩いて、新しい高校に生まれ変わった。ここで少し考えてくれ。売る方がいるならば」
私は先生の言葉を継いだ。「買う方もいると」
「理解が速くて助かる。長尾グループは校舎を買ったのだ。廃校になった学校の校舎を、安く買い叩いたのだ。沖縄県、最果島、最果村に存在した学校の校舎を手に入れたのだ」
「沖縄県のサイハテジマのサイハテムラですか。名前からして、寂れていそうですね」
「事実、寂れている。経済は悪い。これといった産業もない。観光客も期待できない。職にあぶれる若者はいない。なにせ、若者がいない。子供もいない。学校も廃校になった。そして、状況が好転する見込みもない」
「過疎化の進んだ地方の典型ですよ」
「長尾グループはそこを突いたのだ。地域の活性化を標榜としたのだ。学校を誘致すれば、地元経済の活性化に繋がる、とな。もちろん、天下りも受け入れた。地元が大喜びだったのは、言うまでもあるまい」
「校舎を安く手に入れられたのも、想像つきます」
「長尾グループは新しく手に入れた校に、私立沖縄サンフラワー高等学校の名を付けた」
「私立沖縄サンフラワー高等学校は、正式な学校なのですよね?」
「れっきとした高校だ。行政から認可を受けた、正規の教育機関だ」
「なんだか怪しいですよ。直接見物するのが手っ取り早いのですけど、沖縄まで行くと大変です」
「大丈夫だ。おととい、俺が行ってきた。沖縄県最果島最果村の私立沖縄サンフラワー高等学校へ、直接足を運んだ。写真も撮ってきた」
そう言うと先生は、懐からスマホを取り出し、少しだけ操作すると、私に手渡した。
画面に映っているのは、学校と思わしき画像だ。あくまでも、思わしき、だ。
「先生、これは本当に私立沖縄サンフラワー高等学校の画像ですか?」
「そうだ」
「本当に間違いないんですか?」
「間違いない」
「間違えて、別の校を撮ったわけじゃないですよね?」
「間違いなく、私立沖縄サンフラワー高等学校の校舎の画像だ」
「最近取られた画像ですよね」
「おととい、俺が撮った画像だ」
先生の発言を聞いても、私には信じられなかった。それだけ、先生が撮ってきた画像は異常だった。画面には、あり得ない事実が映っていた。
「本当に間違いないんですか?」もう一度、私は訊いた。
「そうだ」もう一度、先生は頷いた。
「この画像は私立沖縄サンフラワー高等学校で、一昨日撮られた画像で間違いないと?」
「そうだ」
「本当に間違いないんですか?」さらにもう一度、私は念を押すように訊いた。
「そうだ」さらにもう一度、先生は深々と頷いた。
質問したいことが山ほどあるが、なによりも真っ先に聞かねばならないことがあった。
「でも、これ、校門には、沖縄県最果村立最果小学校と書かれていますよ」




