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小林君が話を終えると、その場に沈黙が生まれた。だれも口を開かなかった。騒音はあったはずだが、聞こえなかっただけなのかもしれない。
私も、古田さんも、小林君も、自分の思考に沈潜している。各自が泉ケイについて考えている。
中学時代に泉ケイを殴り付けたのは正当な反撃だったと、自分に言い聞かせた。
暴力の度合いも違う。大怪我をさせるほどの暴力ではなかったと、自分に言い聞かせた。
私は被害者だと、何度も自分に言い聞かせた。
泉ケイが私に謝ったとき、私が許していれば結果は違ったのだろうか? 違わない。どのみち、あんな人間はロクな死に方はしないはずだと、自分を納得させた。
古田さんも俯き加減で黙っている。「はい」の一言を後悔しているのだろうか? 古田さんは深く考えすぎだ。
三人の沈黙を破ったのは、突然鳴った携帯の音だった。古田さんの携帯からだ。
彼女は軽く断りを入れると、携帯を取った。そして、十秒も経たないうちに、なにも言わずに電話を切った。
「三波学園からや。宣伝の電話や。入学しろ、早く決めろと、しつこくてな」
小林君は三波学園という単語に反応した。
「三波学園って、たしか泉さんが通っていた高校だよね? 通信制高校らしいけど」
「そうや。泉さんは三波学園とやらに通っていたらしい。ウチらはこれからその学校を調べる予定や。学校でのトラブルの線も視野に入れとる。生徒間のイザコザがあったのかもしれん。風俗街の笠原にある校舎まで、直接乗り込むつもりや」
「笠原は風俗街だよね。場所が場所だけに危なくないのかな? 警察の人も、三波学園を調べていると言ってたよ」
「大丈夫や。泉さんが被った被害を考えたら、たいしたことない」
「必至だね。聞き忘れていたんだけど、お姉さんたちがこの事件を調べる理由って、なにかな?」
「ウチもこの事件の犯人のひとりや。アンタの言う犯人のひとりや」
「そう」
これで十分だった。互いに事情が飲み込めたのだ。
小林君は念を押すように言った。
「僕との約束を忘れていないよね?」
「忘れとらん。アンタの望み通り、アンタを手伝う。事件が終わったら連絡する」
「僕も助かるよ」
「ところで、どんな手伝いや?」
「泉さんの中学生時代のことで、ちょっとね」
「アンタ、チャットでウチらのことを訊いとったな。中学自体の同級生とか」
「そうだよ。泉さんの中学時代を知っている人の手助けが必要なんだ。でも、お姉さんたちはいま忙しいよね」
「正直忙しい。すまんな。いますぐは手伝えん」
「あとからでいいんだ。事件が終わったら、僕に連絡を取るのを忘れないで。僕が泉さんのためにできる最後のことなんだ」
小林君との話し合いのあと、私たちは村田警察署へ立ち寄った。捜査の進捗状況を訊くためだ。
警察曰く、「捜査は順調」「危ないから、君たちは首を突っ込んじゃ駄目だよ」だった。




