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 Kと名乗る人物と打ち合わせした結果、村田警察署の前の喫茶店で落ち合うことになった。私が古田さんの身の上を聞いた喫茶店だ。

 入店する前、古田さんは念を押してきた。

「ウチがぜんぶ話をつける。相手は犯人と名乗ったやろ。どんな奴が出てくるかわからん。そやけど、アンタは安全は保証したる。もう一度言うで、ウチがぜんぶ話をつける」

 予定した時刻に入店すると、店内には奇妙なカップル――己の携帯を見つめたまま、互いに一言も言葉を交わしていない――が相変わらずいた。

 その珍カップルのほかに店内にいた客は、たったひとりだけ。Kと名乗った人物は、「僕は時間は必ず守る」と発言していた。消去法で考えると、このたったひとりの人物がKになる。

 自称犯人であるKの容姿には、私も一驚せざるを得なかった。この人物が本当に犯人なのだろうか? 疑問に思わざるを得ない。

 古田さんも私と同じ感想のようだ。口をぽかんと開けている。彼女も疑問に思っているようだ。この人物が犯人なのか、と。本当にこんな人物が泉ケイを殺したのか、と。

 Kのテーブルの上には、器に盛られたサラダセットがあった。茹でただけの野菜のようだ。そのグチョグチョな不味そうなサラダを、Kはドレッシングもかけずに食べている。しかめ面をして、実に不味そうに食べている。Kが好きこのんでグチョグチョサラダを食べているわけではないようだ。

 ジロジロ見ている私たちにKは気づいたようだ。Kと目が合った。了解を得るのは、それでじゅうぶんだった。私たちはKのテーブルの反対側に座った。

 話を切り出したのは古田さんだ。自分で話をつけるといったことを守るようだ。

「アンタがKか?」

「そうだよ」とKは答えた。「僕はこの事件の犯人のひとりだよ。そういわなきゃならないんだ。悪いね。こんなところまで足を運ばせちゃって」

「アンタの名前は?」

「小林。Kというのは、イニシャルから取った」

「小林君といったか? アンタ、ええと、いまいくつや?」

 古田さんが、犯行云々よりも、相手の年齢を真っ先に問うたのもむべなるかな。なにしろ、この小林と名乗った人物は、どう見ても子供なのだ。身長は百四十センチくらいだし、体つきも柔弱だ。一見するとブカブカな服を着ているようだが、よく見ると服が大きいのではなく、彼は病的に細い体をしているからなのだ。泉ケイを暴行して殺すどころか、逆に返り討ちに遭いそうだ。

「十四」少年は答えた。

「十四才? 今日は平日やろ。しかも午前中や。学校はええんか?」

「別にいいよ。自分でいっちゃうのもアレだけど、僕は学力高いし。勉強は問題ない。それに、事件に比べたら、学校なんて些細な問題さ。逆に聞きたいけど、お姉さんたちこそ問題ないの?」

「問題ない。それで。アンタはどこから来た?」

「青森」

「青森? 本州の最北端の青森県か? ここまでどうやって来た?」

「新幹線。きのう、ひとりで来た。近くのホテルに泊まってる」

「費用は? 一万や二万では済まんやろ」

「自腹。といっても、本当は親の金だけど」

「そこまでしてウチらに会いたかったんか?」

「それもあるけど、警察の人に話をするという目的もあった。警察の人にピジョンスクールでの出来事を伝えるためにね。僕の話が殺人事件の解決の一助になればとね。きのう、刑事さんが僕の話を聞いてくれた。いい人だったよ。私見を挟まないで、僕の言ったことを事細かに聞いてくれた」

「アンタ、泉さんの中学時代の話を聞きたいんやったな」

「聞きたかった、というのがいまになっては正解かな。過去形さ。じつはきのう、警察の人にすべての事情を伺ったんだ。泉さんの生まれや、中学時代にイジメられていたことを聞いたんだ。つまり、お姉さんたちの話を聞く必要は、僕にはないということさ」

「ウチらは用済みってことか」

 少し間があった。

 小林君は不味そうなサラダセットを食べ終えたようだ。

 それを機に、古田さんは肝心な本題に入った。

「アンタが泉さんを殺したんか? その、なんや、暴行して絞殺したんか? そんなことが出来るような人間には見えへんけど」

 小林君は苦笑した。

「さすがに僕が直接殺したわけじゃないよ」

「違うんか? アンタ、自分で犯人と名乗っとったやろ」

「僕の話をちゃんと聞いてほしい。僕が直接殺したわけじゃない」

「じゃあ、どういうことや?」

「僕は直接泉さんを殺したわけじゃないんだ。だけど、この事件の犯人のひとりではあるんだ」

「意味がわからん」古田さんは首をかしげた。

「僕の話を聞けばわかるよ」

「わかった。じゃあ、話とくれ」

「その前にひとついいかな?」

「なんや?」

「お姉さんたちが用済みってことはないよ。少し手伝ってもらいたいことがあるんだ」

「ウチらの手伝いが必要なんか?」

「必要なんだ。だから、手伝うと約束してほしい。いまはお姉さんたちは大変そうだから、この事件が終わってからでいい。僕が話をする条件だ」

「わかった。手伝う」古田さんは頷いた。

「必ずと手伝うと、約束してくれるかな?」

「ウチも事件の関係者や。必ず手伝う」

「それを聞けて嬉しいよ。じゃあ、僕の話をしよう。ピジョンスクールでの出来事を。僕の知っている限りの泉さんのことを」

 少年は少し考えてから口を開いた。

「あ、そうそう、一言いわせてほしい。僕は用済みって言い方が嫌いだ。大嫌いだ。だれだって、どんな人だって、だれかのなにかの役には立てるんだ。殺されてしまった泉さんでも、できることがあるんだ。こんな事件を繰り返さないために、泉さんは生まれて死んだんだ。泉さんの一生を無駄にはさせない。僕がさせるものか」

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