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飛び立つ影
「ありがとうございました」
ゴロスケが静かに言う。
声は小さく、だけど確かに。
「うん。もう行く?」
クマ蔵は身動きせずに、穏やかに返す。
「はい、お腹も減ったので、ご飯探してきます」
ゴロスケはゆっくりと羽を広げる。
翼の先が月明かりに淡く光る。
「うん。頑張ってね」
クマ蔵は変わらず、静かに答える。
言葉短く。
「それでは、ありがとうございました」
ゴロスケはそう言い残し、音もなく飛び立つ。
丸い、丸い、月にゴロスケの小さな影が重なる。
影は月に向かってゆっくりと進み、やがて溶けるように。
クマ蔵はゴロスケの背中を、じっと見つめ続ける。
影は次第に小さく、小さく、夜の闇に溶けていく。
「ごろすけほーほー」
クマ蔵はぽつりと呟く。
声は低く、森の奥に響く。
「ごろすけほーほー」
もう一度、優しく。
「ごろすけほーほー」
何度も、何度も。
月明かりの下で、クマ蔵の声だけが静かに繰り返される。
夜は変わらず、丸い月が森を照らし続ける。




