表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダイバーシティ・ジャパネスク  作者: 月美 結満
ストロベリーガス
3/24

五月三日 十三時五十五分

東京都第一地区の繁華街。と、オフィス街の境目にある高架橋。

今まさに、一台のワゴン車がその高架橋下を潜っていく。


西のオフィス街へ向かうそのワゴン車は、ミルクティー色のボディーに角のないフォルム、そして丸いライトが愛くるしい。


ワゴン車を運転する縞田しまだ しゅうと、助手席に座る縞田しまだ冬葉ふゆはは近所ではちょっとだけ有名な凸凹夫婦である。


オフィス街へ出ると、交差点で赤信号に捕まった。


横断歩道を渡るスーツ姿の女性をぼうっと眺めながら冬葉は呟く。


「ゴールデンウィークも仕事か…」


秋は冬葉の視線の先を追い、こう応える。


「僕たちも、仕事だよ」


スーツの女性と自分達は同じ状況だと言う秋に、冬葉は自分達の状況に補足を入れた。


「この配達で終わるけどね」


その声は小さい棘を孕んでいた。


図体が大きく、運転席で肩を内側に丸めながら運転している秋であるが、冬葉のその一言で更に肩を窄めた。


あのスーツ姿の女性だって、僕達と同じかもしれない-


とは言えず、秋は言葉を飲み込む。


信号が青になり、ブレーキから足を離した。


沈黙は嫌いじゃないが、この沈黙は非常に息苦しいと。ハンドルを掴む掌が汗ばむ。


ほんのちょっとした言葉のすれ違いで生じる沈黙は、車内の酸素を奪っていると感じるほどだ。


信号に捕まることなく二つの交差点を通過し、三つ目の交差点を左折した。


細い道に飲食店が並ぶ。

ゴールデンウィークということもあり、賑わっていた。速度を落とし進むと、赤煉瓦の古ビルの前で停車する。


冬葉はシートベルトを外し、ドアポケットから配達中の札を取り出すと、それをダッシュボードに置く。そして降車し、ワゴンの後部にまわった。


秋は運転席からトランクオープナーのボタンを押し、後部扉の施錠を解除した。


今日の配達はこれで完了する。


襟に糊を効かせたワイシャツ三点と、真っ白に仕上げたリネンセットが二組に、白衣とナース服が各三点だ。


計六点と二組を一つのコンテナに詰め直し、納品伝票を上に乗せる。


「ねぇ秋ちゃん。この後のデート、何処行きたい?」


サイドミラー越しに目が合う。


この沈黙を破ったのは意外にも冬葉の方からで、彼女の眉尻は下がっていた。


秋はふっと笑みを溢すと、こう答えた。


「黒猫のパフェが食べたい」


「うん、わかった」


コンテナを持ち、肩で扉を閉める。


いつもの柔らかい声だった。


小さい体で重い荷物を軽々と運ぶ背中を見つめる。


その表情は、これからデートへ行くそれとは裏腹の、どこか愁いを帯びていた。

縞田しまだ 冬葉ふゆは

年齢: 30歳

職業: クリーニング

身長: 153㎝

体重: 46Kg

近況: 配達先の飼い猫(黒猫)と仲良くなった


縞田しまだ しゅう

年齢: 28歳

職業: クリーニング

身長: 193㎝

体重: 93kg

近況:配達先の飼い犬(柴犬)と仲良くなった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ