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『月の迷宮』(第2巻)「禁断の塔の戦いへの叙事詩より 及び 外伝」  作者: nico


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外伝 その一 『レニの谷のカン』②



「一族の秘密は、守らにゃならん・・」

「・・しかし、これまでカンの学んだ事を全て消し去ってしまうことは、本当はわしが一番残念なのだ・・」

「族長・・」

「族長は、やはりまだカンを〝炎の戦士〟だとお思いで・・」

「わしの中では、カンは奥義を学ぶべき筆頭だったからの」

「そう、お呼びでしたからね・・」


 その言葉に皆が口を挟み、いつものやりとりが始まった。


「しかし職工がなぜ、戦士なんだ・・」

「・・ここでまた、伝承の議論を始めても・・」


 一族の信仰にまつわる伝承の多くは長い流浪のうちに失われていた。

 そのため今に伝わるものは断片的で、それらが本来はどう云う意味を持つのかということが長年に渡る長老達の議論の一つだった。 

 その中でも『炎の戦士』に関する部分は最大の謎の一つで、その謎を解く手掛かりが、実は古来より伝わる『秘伝の奥儀』の中にあると謂うのだ・・。


〝・・いつの日か・・炎の戦士となりし者・・えり・・の・・背負いし運命の・・を・・解き放つ・・〟


 しかしその継承者たる者は皆、その解明に一人で取り組まなければならない。


「わしもなぜ〝戦士〟と呼んだのかわからんのだ・・何か自然に口を突いての」

「しかし、都の軍閥の名門から呼ばれたと云うことは、戦士と呼ばれたのもあながち間違いではなかったのかも・・。陛下からの要請まであると言うことだし」

「つまり、これから〝炎の戦士〟に相応しい人生が始まるということかな・・」

「・・〝成りし者・・〟と、ありますしな」

「でも、これからその肝心の炎を消してしまうのでしょう」

 

 マキの水を掛けるような言葉に、微かな苦笑が広がった。

 そして、一人が再び言った。


「一族の秘密は、守らにゃならん」


 それまで黙って仲間のやりとりを聞いていたセンが、口を挟んだ。


「わしが言うのも何だが・・孫のカンは賢い。このままでは、いつまた小さな炎が力を帯びて、自ら〝危険とも成りうる〟とも謂われる奥義を会得するかも知れませんしな・・」

「そうだ。我らが一族の命運は一族のうちで留めにゃならん。ここを離れる者が、僅かでもその記憶の鍵を握っていてはならんのだ」

「・・我らが古えよりの偉大なる部族。いつかその〝裏切り者〟と云う一門の汚名を雪ぐ時まで・・」



 翌朝、目覚めたカンは自分の寝室にいた。やや頭痛がする。

 何か・・夢を見ていたような気がするが・・覚えていない。


 その日、『レ二の谷』を出発する時、いつも一人で喋ったり歌ったりしている男が、少し離れた木立の間からジッと自分の事を見ていることに気がついた。

 しかしカンと目が合うと、男はフイッとその視線を逸らし、何やら鼻唄を歌いながらどこかに行ってしまった。



 そして十年余りが経ち、厳格な都の祖父の死後、初めて帰郷したカイは、長老だった祖父の遺品を収めた箱の中にしっかりと封印された小さな壺を見つけた。

 家族の誰も、まだ開けたことはないという。


「〝開けるな、危険〟て、じいちゃんが言ってたからな」

「じゃ、なんで、そんな〝危険〟なものをわざわざ残したんだ・・」


 その夜、寝床に就いても一向に眠れないカンは起き上がり、その不眠の原因・・遺品の箱を開けた。

 

 壺を手に取り、暫く躊躇していたが・・心を決めて、その封印を解いた。

 その中には・・緑色の丸薬らしいものが入っていた。

 鼻を近づけると何か・・微かな・・。


(・・これは・・なんだったかな・・)


 暫く手に取って眺めていたカンは・・思い切って口の中に入れてみた。


 ・・その口いっぱいに拡がる苦み・・。

 ・・やがて頭の中に・・その味の記憶が蘇って来た・・。





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