第二章:Run a household 02
遅刻して教室に入った私は
不思議なことに何のお咎めもなかった。
シスターセッチがものすご~く
何か聞きたそうな顔をしていたけれど、
結局は何も言わずに出て行く。
「ミミ……その、だな。
どこへ、行ってたんだ?」
カレンが聞いても良いのだろうかと、
そんな感じのことが顔にありありと書かれていた。
カレンは寮では隣の部屋で、
よく私たちは寝る前に話したりをするから、
私が帰らなかったことも知ってるんだろう。
「昨日の夜から帰ってきていなかっだろう?」
だから心配をかけてしまったかもしれない。
「ごめんね、実習先のところに泊まってきちゃって」
正直にそう言うと、
納得いかないとばかりにマリーが飛んできた。
「そんな見え透いた嘘、
このマリーさんには通じないんだからね!」
ピシっと指を突き付ける。
「昨日、男の人に料理作ってあげるとか言ってたでしょ!
そしてその次の日に朝帰りキメられたら……
当然そういうことなんでしょ!」
ここまで慌てたマリーも初めて見るなぁ。
けれど今回はカレンも
何か思うことがあるのか、
「わ、私はミミがそんなことしないとは思うけれど……
その、ほら、なんだか石鹸の香りもするから」
みんなの言葉を整理する。
1つ、前日の話から男性に会うと思われてた。
2つ、そこは石鹸もあり朝から水浴びも
できるくらいの上流階級の場所にいたと思われている。
3つ、朝帰りということは……?
(何もなかったけれど、
状況からしたらそういうことだって
思われてるんだよね)
私も勿論だけれど、
みんなも経験はないと思う。
想像しかできないから、
ついつい連想しちゃうんだろう。
「そ、そのね、ミミ。
ちょ~とだけ教えて欲しいことあるんだけど。
いやマリーさんは経験も豊富で
知識もたくさんあるんだけどね。
今後の参考の一つとして……」
顔を寄せてきて小声で聞いてくる。
「やっぱり痛かった?」
私は悪戯っぽく、笑って言った。
「気持よかったよ」
何を想像したのか
ブファッと鼻血を噴いて
マリーは倒れてしまった。
私は何でもなかったかのように
「なんだか疲れちゃっとつい寝ちゃって……。
それから朝からシャワーなんて浴びれたんだよ。
それがすっごく気持ちよかったんだ」
「あ、ああ……
そういうことだと思った」
カレンはほっと胸をなでおろした。
「あ、そうだ」
私はそこでやっと思い出す。
これまでのやりとりを
微笑みながら見ていたナターシャに向き直る。
「実はお願いがあるんだけど。
ナターシャって今、実習先って確か……」
「ソーダス商会だけど。
それがどうかしたの?」
「どんな商品とか取扱いしてるのかなって」
ソーダス商会といえば、
王都に3つある商工ギルドの
一つを取り仕切っている商家。
とても規模が大きいらしいけれど、
私も実際のところはよく知らない。
「うーん……武器とか工具や農具よりも、
どちらかというと日用品とか
装飾品が主な商材かなぁ」
「薬とかは?」
「うん、それも勿論取引してるけれど
……どうかしたの?」
私は頷いて、満面の笑みでこう提案した。
「――商売のお話がしたいんだ」




