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顔だけは良い妹が何故かバーチャルアイドルをやっているらしい  作者: 光川
日常編

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NEMESIS

ミメシスというゲームが面白そうだなと、ショーケースを眺めて憧れるキッズの気持ちで書きました。一人では遊べないゲームです。

 綾野兄妹は小さなころからゲームを与えられて育ったのだが、妹と比べると僕はさほどゲームに熱中せずに育ったように思う。

 ちまちま育てたり素材収集の要素があるゲームは比較的好きではあるものの、アクションゲームだったり対戦ゲームとなると妹の独壇場で自分でやるよりは妹が遊んでいるのを後ろから眺めている方が爽快だったのもゲームに夢中にならなかった理由かもしれない。思えばロールプレイングゲームなんかも二人で一緒にやっていたような気がする。


 そんな幼少期を送った後、妹と疎遠だった期間と高校受験の期間が重なったりでいつの間にかゲームから離れていたのだが。

 最近はマイ・クラだったりレドメモだったりを嗜むようになり、何となく他にも面白いゲームがあるのかなと探すようになり……気になるゲームを見つけてしまった。

『NEMESIS』という最大四人で遊べるお宝探しゲームだ。

 プレイヤーが発したボイスチャットの音声をAIが学習、そしてその音声を話すAIが仲間に成りすましてお宝探しの妨害をしてくるという愉快な設定が何とも面白そうで値段も千円とお手頃なのでぜひ遊んでみたくなったのだが……。

 このゲーム、一緒に遊ぶ友人、つまり頭数を揃えるのが難しい。学校で僕の首の数では足りないほど豊富な交友関係を当たってみたものの、結果は全滅。

 そもそもゲーミングPCを持っていないというのだからどうしようも無かった。ノートパソコンだったり家族共有のパソコンであれば持っているとの事だったが、いわゆる家電量販店で売っている性能のパソコンとなるとゲームで遊ぶには性能がいささか不足してしまう。


 そしてそうなると残念な事に僕が遊びに誘えるメンツは『健全安心一般コース』から『おいでよ変人の森』コースに移行する事になってしまう。

 幸か不幸か変人の森の住人は皆それなりに性能の良いPCを持っているはずなので、この中から比較的まともな人たちを選出していくしかない。

 頭の中で住人のプロフィールを確認していく。

 ……比較的まともな人たちかぁ。

 とりあえず柚乃さんは誘っておくとして、あと二人。

 元ミュージシャン、現農家(研修中)の人と悪徳芸能事務所のマネージャーは誘えば遊んでくれそうではあるものの流石に学生のタイミングで誘うのは気が引ける。おじさんたちってファミコンしか触った事無いだろうしパソコンでゲーム出来なさそうだし……。今回は見送らせてもらおう。


「おかえりー」


 あれこれ考えながら学校からまっすぐ帰宅すると、リビングから顔を覗かせる妹と目が合う。

 エリーゼちゃんは……無しかな。

 対戦ゲームでは無いからボコボコにされる心配は無いものの、そもそも妹と遊びたいという欲求が心のどこにも無いので却下だ。


「なんかしつれいなこと考えてない?」

「捉えようによってはそうかもしれない」

「ふーん? あ、温まった」


 キッチンから電子レンジのブザー音が鳴り妹の注意が逸れたので、洗面所に向かいうがい手洗いを済ませて二階の自室に向かい部屋着に着替える。

 ふと見た自室の窓の向こうにはタワーマンションがそびえ立っており、脳裏に変態の森の住人が思い浮かぶ。誘えば一緒に遊んでくれそうではあるけれど……。

 そういえば喋ることは良くあるものの一緒に遊んだことは無かったっけ。妹と同じでまるで一緒に遊びたいと思わないから不思議なものだ。想像するだけで楽しくなさそう。


「レー、ミルクティー温めてたら爆発した」

「……なんでそんな温めちゃうかな」


 部屋の入口から顔を出す妹に軽く頭突きをして仕方なくキッチンへと向かう。


「この飲み物が爆発するのって、とっぷって言うんだよ。知ってた?」


 後ろからついてきて豆知識を口にする妹と共に電子レンジの中を覗くと未だ熱いマグカップと噴き出したミルクティーがあちこちに飛び散っていた。

 電子レンジ内で起こった現象をスマートフォンで調べる前に飛び散ったミルクティーくらい自分で拭けと言いたいところだが、会話の数が増えるだけで最終的に僕が片付ける事に変わりは無さそうなのでキッチンペーパーを手に取りさっさとミルクティーを拭き取る事にする。

 そしてマグカップを手に取り──。


「あ、なんで全部飲んじゃうの!」


 妹への嫌がらせの為だけにマグカップに残されたアツアツのミルクティーを飲み干……。

 

「熱っ!」


・・・


 舌をやけどした後、再び部屋に戻りスマートフォンを確認すると柚乃さんから『いいよー』とだけ返信が来ていた。

 よしよし、これであと二人だ。

 アンジェもどうかと思ったものの、あの人はまずゲームの基本的な操作から教えないといけなさそうなので今回は誘わないでおこう。

 となると……。

 まずい。すでに豊富な友人たちのリストが尽きる。残りは一人、清廉だ。

 清廉はゲームと言うとパワプロで遊ぶくらいのものなのだが、とりあえず誘うだけ誘ってみようかな。想像してみると『え、あんたどっち? AI? 本人? ちょっと何するのよ!』とか言って一人で騒いでいそうで面白そうだ。

 とりあえず誘ってみよう。

 スマートフォンを幾度かタップして清廉にメッセージを送信。

 ほどなくして『いいね』とファンシーな雰囲気のウサギが描かれたスタンプが返って来た。


「……あと一人」


 オフィスチェアの背もたれから身体を起こし、机の上に座ってジッと僕を見下ろしている妹と目を合わせる。


「エリちゃんさ、NEMESISってゲームや」

「やる! NEMESISってエリも興味あったんだけどエリの数多い交友関係だと少しだけ人数足りなかったからちょーど良かった」

「エリちゃんの交友関係って、トネリコさんしかいないじゃん。ナッツは家族共用のパソコンしか持ってないでしょ」

「なんでレーがそんなこと知ってるの」

「僕が先に声かけた」

「やめてよ妹のともだちに声かけんの。ともだちいないの?」

「エリちゃんよりいるよ」

「はあ? エリは1、2……片手の、腕の数では足りないくらいともだちいるけど」

「その数で張り合おうとするんじゃない」

「ま、なんだっていいや」


 妹は机の上からトンと降りると──。


「それじゃあロビーで待ってるぜ」


 自分の巣へと去って行った。


・・・


 汚染された雨の降る工場地帯。

 外に立っているだけで消耗してしまう環境はまるで工場内に立ち入る事を強要するかのようだ。

 目的の宝も工場内に隠されているので、さっさと侵入してしまえば良いのだが。そう易々と探検を許してくれないのが面白いところ。

 猿のような老人のような、謎の生命体に追いかけられてどうにか工場の外に逃げ出した僕は拠点となるワゴンカーまで戻ろうとするが──。


『あーもう、さいあくー。雨降ってるじゃん』


 五頭身ほど、カラスのようなマスクを被ったキャラクターが近づいてくる。このキャラクターを動かして遊んでいるのだが、みな同じ見た目をしているのでAIと区別はつかない。

 声からいって清廉なのだが会話をしてコミュニケーションを取らなければ。


「おーい。せーれん。中、どんな感じ?」

『あ。あんたこんなとこでサボってるんじゃないわよ。もう変なのに追いかけられて大変だったんだから!』


 僕の話を聞いていない。ということは……。

 恐らく清廉だろう。


「変なのって猿っぽいようなおじさんっぽいやつ?」

『それそれ! あたしああいう人っぽい見た目の変なのすっごい苦手なんだけど!』

「妙に不気味な造形ではある」

『どもー、柚乃でーす。は、はっじめましてー。お噂はかねがね。歌姫さまにおかれましてはご機嫌いかがでしょうかぁ。……へへ』


 清廉と会話をしていると第三者の権威に媚びた声が聞こえてきた。

 明らかに不自然な音声は怪しさに満ちている。


『綾野。あれ、ぜったいAI。というか聞き覚えあるわあのセリフ』

「どうしよう。僕、銃とか持ってないよ」

『あれって放っておいちゃまずいんだっけ』

「あんまり近づくとこっちが倒されちゃうかもだから。しかたない、また工場の中に行こう」

『仕方ないかぁ。入口の右、いや違うか。外に出る時の向きから見て右側、そっちの方にお宝あったから二人で行くわよ』


 清廉と共に雨に打たれながら工場内へと向かう。


『柚乃ちゃん、だっけ。まだ生きてるかな』

「生きててほしいところだけど。一回みんなバラバラになっちゃったから、最低限のお宝集めてこの場所から離脱した方が良いかも」

『あたし、こういう時って全員で生還したいタイプなのよねぇ』


 雨雲を逃れ工場内に再入場すると──。


『あ、礼くん、清廉様ぁ! 良かったぁ、もううちのお姫さまがどんどん奥行っちゃうから死ぬかとおもったよぉ』

「止まれAI、人間様に近づくんじゃない」

『いやいやどう考えても私じゃん! ほら、戦利品の飛行機見て』

「やけに流暢に喋るな……。もしかして、柚乃さん?」

『だからそうだって言ってんじゃん』


 僕らは目の前でバタバタと動き身の潔白を伝えてくる柚乃さんを仲間に加えて、再び探索に戻る事にする。


『柚乃ちゃんが無事で良かったわ。あとはあんたの妹だけど』


 三人で固まりながらお宝を回収しつつあちこちを見回ると……。


『レー、おーい、レー、レー』


 そんな声が薄暗い声の中から聞こえてきた。普段のうちの妹らしい言動だけれど、AIが真似しやすい単純な呼び声でもある。


『そう言えば二人はメイドインアイビスって見たことあります? あれで人間の鳴き声を真似て人間を呼び寄せて食べちゃう魔物が』

『うわ、怖い話しないでよ。綾野、あんたが妹と接触して確かめなさい』

「えぇ……」


 徐々に妹の声が近づいてくる。

 清廉に背中を押される形で仕方なく、恐る恐る声のする方に十字キーを入力する。


「エリ、エリちゃんなのであれば両手をあげて出てきなさい。悪いようにはしません」

『レー、おーい、レー。あとユズママとせーれんさーん』


 曲がり角、足音と共に妹(仮)の姿が現れ──その手には銃が握られていた。


「ええと、エリーゼちゃん?」

『あ、みーつけた』


 銃が自分に向けられる。

 あ、これ妹じゃないな。

 そう気が付いた瞬間、パァンッと、発砲音が響き──。


『おっと、危ないところだったねレーくん。このエリちゃんが来たからにはもう大丈夫っ。そろそろ外に出よっか!』


 エリちゃん(偽)の後ろから宝を大量に集めたエリちゃん(真)が現れた。


『綾野ー、生きてるー?』

『あの二人、悪戯でAIのフリしそうだから気を付けないと』


 僕と妹の元に遅れて二人がやって来ると──乾いた銃声が二度聞こえた。


『あ、ごめーん。間違って撃っちゃった。しょうがないから二人(・・)で帰ろっか!』


 かくして、第一次お宝探しは幕を閉じた。

 尊い犠牲者二名に、敬礼。

読んでいただきありがとうございました、いつも感想、誤字報告ありがとうございます!

 高評価もぜひよろしくお願いします!


 リオネット家のチャンネル(ゲーム修理したりドラクエ遊んだり)→ https://x.gd/Q9kC3

 作者のX→ https://x.com/hkrkwmsg

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