表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美しきこの世界で  作者: 猫柳
第一章  新しい居場所
1/20

第零話  死の予感

嫌いだ、こんな世界なんて。


後ろで甲冑に身を包んだ兵士が私の背を突き飛ばした。震える足でなんとかバランスをとると、意味不明の言葉で私に早く進めと合図を送る。


嫌いだ。こんな世界。


学校帰りから全く着替えていない制服は、地下牢に転がされた時に泥まみれになった挙句、三日も着替えていなかった。手を縛られているせいで髪は手櫛すら通していない。身だしなみは最低。三日前の私が見たら絶句するだろうし、今の私も絶句してる。


突然飛ばされた得体の知れぬ世界は、最低な世界。そう、これが異世界トリップだって言うなら、私は他の恵まれてチートでハーレムでウハウハしているトリッパー達を全員呪ってやる。


苛立った兵士が、手に持っていた槍をこちらに向けた。刺されるのかな。刺されるのと、首切られて死ぬの、どっちが楽かな。首切られるほうが楽だよな。だって一瞬だもん。そんなことを考えながらも、私は恐怖で震える足をゆっくりと前に動かした。


聞き取ることのできない、ざわざわとした人々の喚声が通路の向こうから聞こえる。通路をなんとか歩ききり、その先の開けた空間に出たところで、私はもう座り込みたくなった。

人、人、人。広場を、たくさんの人が埋め尽くしている。そしてその中央に、私の処刑台は、あった。


その台の上にそびえる鈍い輝きの刃を見た瞬間、私の目から涙が溢れだした。

「い、やだ……」

ここで死ぬ。私は死ぬ。よくわからないけど死ぬ。なんで殺されるかわからないけど、私は。

ふざけてる。なんで私は死ぬんだ。私はただの被害者だ。気がついたらよくわからない場所に飛ばされていた、犠牲者。


通路を逆走しようとして、兵士に腕を掴まれた。必死にもがいてその腕を振り払おうとすると、隣からもう一人兵士が来た。二人係で押さえつけられて、そのまま台の上に引きずり上げられる。

抵抗しようとして膝を擦りむいた。石畳に立てた爪が二三枚剥がれた。ずるずると引かれる赤い線を見ながら、ほかにもそっくりな黒い染みがあることに気づいた。

そうだよね。みんな抵抗するんだ。そして抵抗の甲斐もなく、台の上に上げられて。

私に視線が突き刺さっていた。ねっとりとするような憎悪の視線だった。醜く無様な今の私に、その視線はきっとちょうどいい。


白馬の王子様なんていない。絶体絶命の時に白い馬に乗って助けてきてくれなんかしない。


「――――、―――――」


ねぇお願い。誰でもいい。


私を、助けてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ