第1章 君が望む 僕が望む
「わかったよ。君の言う通りにするよ」
「ごめんなさい」
「今までありがとう」
「私も幸せだった」
「だった...か」
「ええ」
「最後に聞きたいんだが」
「何かしら?」
「その...離婚の理由」
「アナタ本当に気付かないの?」
「家の事を任せっきりにしていた事を今更だけど
申し訳無かったと思ってるよ」
「そこじゃないわ」
「じゃ、何?教えてくれよ」
「単純にアナタを愛せない私が居るの」
「いつから?」
「結婚式前から」
「愛してもいない男と付き合って」
「愛してもない男と結婚して」
「愛してもいない男と子供を作って」
「アナタの収入に惹かれた...」
「なんだよ、それ」
「知ってるでしょ?私の実家は本当に貧しくて、あの家から抜け出したかったの」
「慰謝料は要らないわ」
「当たり前だ」
「子供も」
「母親だぞ!まだ母親の手が必要かだろうが」
「あの子を見ているとアナタを思い出すの。それが辛いの」
「僕は仕事で帰りが遅いんだ。誰が悠人の世話をするんだ」
「アナタがしてよ」
「ふざけんな!君の望み通りに離婚してやったんだぞ。次は僕の望みを1つ通せよ」
「もし悠人を私が引き取ったら直ぐに施設へ入れるわ」
「そんな事がよく言えるよな!」
「愛していないアナタにそっくりな悠人となんて暮らせないの。分かってよ」
「君って人は...」
リビングに沈黙が流れた。
「条件がある。それを飲むなら」
「なに?内容次第よ」
「離婚してやるんだから、君に選択肢は無い」
「仕方無いわね。なにかしら?」
「2つ有る」
「聞きましょう」
「今後、悠人とは接触を持たない。例え余命いくばくも無い状況になってもだ」
「2つ目は?」
「悠人が学生でいる間の養育費を払ってくれ」
「アナタの方が収入あるじゃ無いっ!」
「なら離婚は無しだ。離婚したいんだろう?」
「いくらよ?」
「月5万だ」
「ちょっと待って!月5万ってアナタ...普通は3万位が相場じゃないの?」
「嫌なら離婚は無しだ」
「月5万は大きいわ」
「何度も言わせるな。嫌なら離婚は無しだ」
「分かったわ」
「それに伴い誓約書にサインしてくれ」
「会社の経理部へ給与のうち5万は悠人の口座へ振り込むこと。
転職したら転職先を僕へ報告すること。
転職先からも同様に悠人の口座へ振り込むこと」
「誓約書だなんて用意周到じゃない!アナタも離婚したかったんでしょう!本当は」
「くだらない妄想はやめてくれ。君から離婚を切り出された時に、どうして良いのか分からなくて弁護士へ相談したまでだ」
「親切な弁護士でね。法的に機能する誓約書を作成してくれたんだ」
「もういいわ。離婚出来るんですもの」
「ねえ、いつから支払いが発生するのよ?」
「離婚成立翌月からだ」
「早々に家を出て行ってくれよ」
「あ、そうそうコレ」
妻の浮気相手と密会している写真をテーブルの上に置いた。
「な、なによコレ」
「養育費の事で裁判になった場合を想定して用意していた証拠書類だ。綺麗に撮れてるだろう?記念にプレゼントするよ」
「要らないわよ、こんなの!」
「悠人は僕が育てる」
「寂しい思いをさせてしまう事になると思うが
僕だけは深く愛しているって事を背中で見せて行く」
川島徹、弥生夫婦は
結婚7年目で離婚した。




