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出会い

神崎 栞side


「ハァ………ハァ………ハァ………」


右足を引き摺り、傷だらけ少女は身体に鞭を打ち何とか前へ前へと歩みを進める。


どうしてこうなってしまったのだろう?先程まではいつも通りのダンジョン探索だった。仲間とともにダンジョンに潜り、仲間とコメントの皆と共に楽しく探索を進めていた。


だがもう帰ろうと転移陣に乗った瞬間全てが狂った。青く光るはずの転移陣が赤く光輝き、あまりの明るさに目を閉じた次の瞬間にはダンジョン外でも先程までいた場所でもない全く見覚えのない場所にいた。咄嗟のことだったが何とか一緒に来ていた2人を押して転移陣の外に出すことは出来たがその結果私だけがイレギュラーにまきこまれることになった。


生い茂る木々に燦燦と照り付ける太陽、そして眼前にいる通常ではありえない程の数のモンスター。スキルのおかげで何とか逃げ延びることは出来たが何度かモンスターからの攻撃を食らってしまったため何ヶ所かは骨が折れ、肉が裂け、肩には穴が空いており、血を流しすぎたせいか足元も覚束ない。それに逃げ延びたと言ってもこれも一時的なものでしかない。モンスターによっては血の匂いで寄ってくる物もいる。今は匂い消しの薬のおかげで何とかなっているがあと20分もしない内に匂い消しの効果は無くなるだろう。


「ハ…ハハ………アハハハハハッ」


さすがにどうしようも無さすぎて笑えてくる。今にも倒れそうな身体で見たこともないダンジョンに大量のモンスター、そんな中制限時間20分で転移陣を見つけないといけない。絶体絶命がこれ程似合う場面そうないはずだ。


「皆………今まで……ありがとね。」


:嫌だ嫌だ嫌だ!!

:誰かいないの!?

:これは無理だろ…………

:誰でもいいからお願い……!!


「ふふっ、皆……珍しく……優しいね。でもごめんね。私は多分ここまでだから………。」


:生きて生きて生きて!!

:誰でもから!!

:これからはいくらでも優しくするから……!!だから……!!!

:そろそろ死ぬと聞いて

:消えろゴミ


「2人のことお願いね。気に……しちゃう…だろうから………」


それが今の私の一番の心残り。幼なじみで一緒に頑張ってきた2人の親友。私がここで死んでしまったらきっと悲しむ。もしかしたら自分たちのせいだと思うかもしれない。それは……嫌だな………。


:わかった!だから…だから……!!

:いやだいやだ!!

:死なないで死なないで死なないで!!

:誰か助けて!!お願いだから!


「じゃあ……配信は閉じてね……。」


もうずっと前から限界だった。モンスターの攻撃を受けた時痛みで気絶しそうになった。血を流しすぎたせいで意識は朦朧としていていつ気を失ってもおかしくはなかった。それでも、それでも諦めたくなかった。まだまだやりたいことがあった。まだまだ死にたくなかった。それでももう限界だ。目は霞み、意識はどんどんと遠のいていく。ドサリと音を立て体は地面に崩れ落ちる。


「グルゥ………!!」


後ろから右目に傷を負ったモンスターが声を荒あげながら姿を現す。先程逃げる時に切り付けたモンスターだろう。まだ20分は大丈夫だったはずなんだけどな


ハハ、このタイミングで表れるとかもうほんと笑うしかない。もうどうしようもないな……。もっと生きたかったな……。やりたいこともまだまだ沢山あったんだけどなぁ………。お父さん、お母さん、先に逝く親不孝な娘でごめん。もっともっと話したいことが、一緒にやりたいことがあったのに……。咲、小春ごめんね。一緒に逃げれたら良かったのに。でも2人を助けられて本当によかった。私の事気にしないで生きて欲しいな……。


「ガァァァ!!」


モンスターは声を上げこちらに飛びかかってくるが体に力が入らず攻撃を避けることが出来ない。


「誰か……助けて………………」


「はい。今助けますね。」


ザシュ。突如現れた少年が飛びかかってきたモンスターの首を両断し振り向きながら笑いかける。


「え?」


「まぁ今はよく分からないと思いますがあなたの鳩さん達に感謝してあげてください。」


意味がわからない。死を覚悟して目を閉じたはずなのに私は生きて目の前には初心者装備の男の子が立っている。状況が全く理解できない。それでも一つだけわかったことがある。それは私は助けられたと救われたいうこと。それを理解した瞬間張り詰めた糸がピンと音を立て切れるように私は意識を失った。


「ありゃ?気を失っちゃったかな?」


少年は少女に近づき肩口に触れる。


『瞬間回帰』


少年がスキルを使用すると傷だらけだった彼女の体は無傷の状態まで回復し、それどころかところどころ破れていた服すら元の綺麗な状態になっている。


「ふぅ、結構疲れるなこれ。あと彼女が目覚める前に追加分も討伐しておこうか。」


少年は彼女から目を離し、近づいてくる足音の方向へと振り返り剣を構えた。

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