魔の森の遠征
もふもふに囲まれながら木陰でロー達と綱引きして遊んでいると
目の前に二つの影が出来る。
「おい!お前!」
まだ年若い声に視線をあげると
新米冒険者風な少年と少女がいた
どちらも明るい茶髪で顔も似ている。双子かな?
「私に何か用?」
めんどくさいけど付き合う事にする。…暇だし
私が声を発したことでケレス達もチラッと彼らを見るが
興味がないようで子供達は三匹で器用に綱引きをし
ケレスは相変わらず私の背もたれになってくれている
メイは私の髪に隠れて少し威嚇してるのでそっと手のひらで撫でる
「あんた!貴族らしいけど!レン様とマリー様と一緒に行動してるからって調子に乗らないでよね!」
「そうだ!冒険者になったのだって貴族のお遊びなんだろ!」
「…」
いつの間に私は貴族になったんだろうと思いながら無言でいるとキャンキャンと吠えてくる二人
「どうせ今日の遠征だって無理矢理言って付いてきたんでしょ!」
「お前を守りながら魔の森行くのは大変なんだ!」
「分かったら家に帰りなさいよ!」
「レンさんとマリーさんの手を煩わせるな!」
なるほど、ようするに
「あなた達レンとマリーのファンかしら?」
私の言葉に顔を赤くする二人
これが大人ならスルーするがこの二人はまだ子供だ
「あなた達の知っているレンとマリーは魔の森で私のような娘を守れないほど弱いのかしら?」
「そんな訳ないじゃない!お二人は貴族出身で在りながらとても強いんだから!」
「そうだ!俺達の憧れの人を馬鹿にするな!」
「でもあなた達さっき私がいるとレン達が大変になるって言ってたよね?Aランクの二人でも護衛しながら魔の森は無理なんだ?」
「そんなことないわよ!」
「レンさん達なら余裕に決まってるだろ!」
「じゃあ私が居ても問題なしね!」
「「問題ないに決まってる!」」
この子達こんな素直で大丈夫?
「くっくっく!」
「あんた達何言ってるのよ?」
笑いを噛み殺したレンと呆れた表情のマリーが二人の後ろにいた
「じゃあマキナが居ても問題ないって事だな?」
レンの言葉で今のやり取りが分かったのかハッとする二人
「ちっ違います!」
「こっこれはその!」
憧れのレンとマリーを目の前にしてあたふたする新米冒険者二人
「マキナ…何からかって遊んでるの?」
呆れ顔のリーヴ君が私の横に来る
「面白いよね、この子達」
「…ギルドマスターが呼んでるから行くよ」
はぁ。とため息をついてリーヴ君は私をアーキスの元に連れていく
「あ!ちょっと待ちなさいよ!きゃっ!」
「話はまだ終わってないんだ!いてっ!」
「お前達は誰に喧嘩売ってんだよ!」
「あんた達も行くんでしょ!」
後ろでは双子の冒険者とレンとマリーが
賑やかに付いてくる。
私に気づいたアーキスが腕を上げて挨拶する
「おう!揃った所で説明するぞ」
今回の遠征は最近魔の森の魔物達の動きがおかしい事に気づき
Aランクのレンとマリーが偵察に行った所
誰かさんのおかげで原因は判明したが、事態はよくない状況だと分かり
魔の森近隣の人里に影響がないかの調査班と
魔の森の魔物達の行動の調査班で分かれる。
私はもちろん魔の森の調査班に組み込まれている
そしてそれに文句を言う人達が出るわけで…
「なんで俺達が魔の森じゃないんだ!ギルマス!」
「あんな嬢ちゃんが魔の森に行くだと?」
「「そうだ(よ)!レンさん(様)とマリーさん(様)と一緒に行くなんて!」」
今回の魔の森の遠征はギルドランクを上げるチャンスもあるので不平不満はしょうがない
「お前らよりこの嬢ちゃんが強いってことだ!ほら!分かったらとっとと行ってこい!」
アーキスは一言で済ませる。
それで納得するわけもなくジロリと睨まれるわけで
私もそれに習ってアーキスをジロリと見つめる
「……あぁー、マキナの実力は本物だ。レンとマリーも保証している」
腕組をして少しソワソワしながら簡潔だがさっきよりましな理由を言うアーキス
その言葉に納得するしかなく渋々黙る冒険者達
レンとマリーはAランクってだけじゃなく皆からの信頼も厚いようだ
これ以上面倒に巻き込まれる前にさっさと行ってちゃっちゃと終わらしてメイとロー達と遊びたい
シルフィーは相変わらずケレスの背中で寝てるし…羨ましい
「リーヴ君もう行ってもいいのよね?」
「…あぁ」
「レン!マリー!さっさと行くわよ!」
あ!なんか今の言い方お嬢様っぽかったかも!
馬車も数台用意され
魔術師やサポート役は乗り込み、他は警戒のために馬車を囲んで徒歩で向かう
私はケレスの背中に乗るけどね
だってあの辻馬車絶対お尻痛くなるやつでしょ?
ケレスならその心配はなしよ!ふかふかのソファーに座ってる乗り心地なの
ロー、レム、ラムは競争しているのかホーンラビットやゴブリンなど魔物を見つけたら片っ端から狩ってくる
カマキリみたいな気持ち悪い魔物を口に咥えてズルズル持ってきた時は「ペッ!しなさい!」って言った気がする
その様子を冒険者達は顔をひきつらせて見ているが
もちろんマキナは気がついていない
魔の森まで全員で行き
そこから班ごとに別れて調査する
魔の森の調査班は深層部の調査と北全般は私達だが
中層がAランク冒険者パーティーの2組と
もうすぐAランクになる現Bランク冒険者パーティー1組
外層がBとCランク冒険者パーティーの2組ずつ
魔の森周辺の調査が5組
あの双子は2人で1組で魔の森周辺の調査だ
魔の森に着き
「今回は今からの時間帯、夜の時間帯、そして早朝の時間帯の魔物達の動きを見る。変化がなければ数日交代で様子を見て終わりだろう。もし明らかな変化があった場合は臨機応変に動いてくれ。何かあったら緊急発弾を!以上!」
レンが全体の指揮を取り各班のリーダーが最終の打ち合わせをしてそれぞれ行動に移す
私達もさっさと深層部に行こうと
レンとマリー、リーヴ君に«超音速»をかける
「うおっ!」
「なにこれ!」
「すごい!」
レン達の声に各自動き出していた冒険者達がこちらを見る
「早く行って終わらせるわよ」
私がケレスに乗ってその場を離れると
レン達もすぐにこの魔法に慣れた様子で追いかけてくる
その様子を見ていた冒険者達が呆気に取られているが…
「おいおい!今の速さ何だよ!」
「加速にしては尋常じゃない速さだぞ?」
「…なぁさっきの嬢ちゃんが乗ってたのってシルバーウルフだろ?」
「あぁ」
「…シルバーウルフってあんなに大きかったっけ?」
「…さぁ?突然変異って聞いたけど」
「俺あのシルバーウルフに勝てる気がしなかったんだが…」
「俺も」「だな」
「テイマーってさ、テイムする魔物に認められなきゃいけないんだよな?」
「…あぁ」
「あの嬢ちゃん何者だ?」
内緒でマキナ達の後を付けようと考えてた双子達も苦い顔をする
「あたしずっとあの女の事見てたけど詠唱してたの気づかなかった」
「は?」
悔しそうに両手を握りしめる少女
――――――――――――――――――――――――
マキナの魔法であっとゆう間に深層部に着いたレン達
「おう…すげぇなこの魔法!」
「うん!しかも疲れてない!」
レンとリーヴ君がやけにはしゃいでいる
「ここに来るまで特に異常なしだったね?」
「そうね、問題は北よね?」
一度ミーミル湖に行き夜営の準備をしてから
東のギガントボアの様子を見てから北の魔物の生態系を調べる事にした
以前に造ったテーブルやイス、竈やグリルも残ったままなのでテントを張るだけですぐに準備を終える
そして皆で東の深層部に行こうとすると
ガサガサッ
東の茂みから大きな魔力を持った魔物の反応が。
ミーミル湖には悪意ある物は近付けない
だけどこの魔力反応はあの魔物しか考えられない…
「「「!!」」」
ミーミル湖に姿を表した魔物を見て驚く三人
「なんで…ここにこいつが…」
「え?エリアボスってミーミル湖に入れたっけ?」
「そんな事は聞いたことがない…」
そう…
ミーミル湖に現れたのは東のエリアボスであるギガントボア
「ガゥッ!」
ケレスが少し警戒をしながら吠える
「フガッ」
ギガントボアがケレスに何かを訴える
「ふむ、奴からは敵意を感じぬ」
ケレスが私の横に来るとギガントボアもゆっくり私の元に来る
ロー達は傷付いた記憶があるので小さく唸りながらケレスの足元から警戒している
その様子を固唾を呑んで見守るリーヴ君達
ケレスの背中から私の側に来たシルフィー
「あの子マキナ様に用があるみたい!」
「私に用があるの?」
私がギガントボアの方を向いて聞くと
目の前に来て座り私に顔を近付ける
うん…すごい迫力にすごい鼻息…そして何より獣臭い…
でもつぶらな瞳が可愛いか…な?
そっとギガントボアの顔を触ってみる
ついでに清潔もかけておく
気持ち良さそうに目を瞑るギガントボア
(先日は助けて頂き感謝する)
ギガントボアの声が私の頭に届く
「いいのよ、むしろあなたも被害者でしょ」
(だが、この森のボスとして強者に倒されるのは仕方のないこと。強き者がボスになるのが運命)
「だとしても今回は人間が卑怯な手を使って介入したのよ。ボスであるあなた達を愚弄しているものだわ」
(そなたから回復魔法をかけて貰ってから調子が良い。次はあんな目に合わぬよう気を付けるとしよう)
「そう。あなたは立派に勤めを果たしているのね」
私が誉めると照れた様子を見せるギガントボア
ちょっと可愛く見えてしまった。
どうやらお礼を言いに来ただけのようだ
「私達はあれから魔の森がどうなったか調べに来たの。あなたは何か知ってる?」
(吾が一時倒れた事で東も今は騒がしいが北はもっとひどい事になっているようだ。南と西は変わらずだ)
「そう、教えてくれてありがとう」
(ではもう行くとする。東は吾が責任を持って静かにさせよう)
そう言ってギガントボアはのそりと起き上がり東の深層部に帰って行く
「だって?聞こえてた?」
リーヴ君達に振り返って聞く
「いやいや聞こえるわけないだろ?!」
「マキナが喋ってたのは聞こえてたけど…」
「…なんかもう…どこから突っ込んでいいのか…」
「シルフィーは聞こえてたよ!」
はいはーい!と手を上げて飛び回るシルフィー
「とりあえず東は大丈夫みたいだから北に行ってみましょう」
両手をパチンと合わせニコリと微笑むマキナ
「……」
互いに目を合わせる3人
時刻は夕暮れ間近
皆、顔を引き締め直し北の深層部に向かう
「こりゃ~ひでぇな…」
北のボス、ブラックサーペントの縄張りの現状を見て思わず呟いたレン
目の前にはブラックサーペントの寝床であろう岩場が崩れ落ち
土はえぐれ、木々はなぎ倒され、魔の森の魔物達の死骸が無数に転がっていた。
この状況を見るとブラックサーペントに相当なストレスを与えていた事が分かる
「そうだな、確かに奴は理性を失っておったな」
ブラックサーペントと実際に戦闘したケレスがポツリと言葉をこぼす
「北の帝国は自分達のエゴのためにひどい事をするのね」
「マキナ様~森が…」
ブラックサーペントを倒すだけなら別にいいのよ
でもケレス達に目を付け欲をかき
魔の森を荒しロー達を危険な目に合わせ更には人里まで影響が出ているわけで。
どれだけの時間をかけてブラックサーペントを東まで誘導したのだろうか
暴れながら移動した形跡が色濃く残っている
「まだ新しいボスは決まってないようだね」
リーヴ君が周りを見渡し考え込む
「真新しい死骸は深層部入り口付近にいる魔物だ」
「あぁ時間が経っている死骸は元々この辺りにいた奴等だ」
持っている剣で魔物をひっくり返すレン
マリーも警戒しながらレンと一緒に魔物の死骸を調べる
その近くで魔物の死骸の匂いを嗅いでるローとレム
ラムは私が抱っこしてます
「新しいボス候補達は深層部の入り口付近で争っている可能性が高いな」
「夜が明けてから向かった方がいいだろうな」
「そうだね~もし深層部の入り口で争ってるなら今から行くのは得策ではないわね~」
レンとリーヴ君マリーが話し合ってる間
私はケレスにもたれて慣れるために千里眼を使っていたりする
深層部のギガントボアの様子を観て
南のボスのウォーリアベアーを観てみる
牙剥き出しでヨダレを垂らしているクマだった
…これまた可愛くないクマだ
…どっかのキャラクラーにいたよね
西のレッドコカトリスもどうせ可愛くないんだろうなと思い観てみると
どうやら戦闘中のようだ
「…ねぇ?魔の森ってしばらく遠征組以外立入禁止だったわよね?」
私の呟きにリーヴ達とロー達も私に注目する
「そのはずだけど?」
リーヴ君がレン達に確認すると二人とも頷く
「レッドコカトリスが冒険者と戦ってるみたいだけど?」
私は視線を西から動かさずに話す
「レッドコカトリスと戦闘出来るパーティーはケント達かバーズのパーティーくらいだが…それでも簡単に勝てるもんじゃないからな、アイツらなら無闇に戦闘はしないよなぁ」
レンが眉間にシワを寄せながら呟くとマリーも疑問を口にする。
「そうね、それにその2パーティーには東と南を任せたよね?だとしたら、どこのパーティーが?」
レッドコカトリスの大きい身体で冒険者の風貌と何人居るか分からないので千里眼をもうちょっと意識して使ってみる
「…あの双子ちゃんとあと三人居るわね、アーキスに文句言ってた冒険者達かしら?…あぁ、結構ヤバい状況だね」
そう、私が観たのは東の門でアーキスに文句を言った(決して私に文句は言ってないはず)冒険者パーティーと双子ちゃんがレッドコカトリスに今にも殺られそうな場面だった―――。




