第22話 くしゃみ
すっかり日も暮れ、外は街灯が活躍する時間となっていた──
東北の四月のこの時間はやはり寒く、寒がりな私は、カイロを貼っているくらいだ。
ちなみに、これはどうでもいいことだけど、暑がりでもある。
「早く暖かくならないかなぁ。なったらなったで、暑いって言うんだろうけど……」
「ん? いのり寒いの?」
「へちゅんっ! ご覧の通りだよ」
「ははっ、いのりん? くしゃみ独特じゃない?」
「そうかなぁ? 皆こんなもんじゃない?」
天君と奏ちゃんは、顔を見合わせて首を横に振った。
「くしゃみといえば、へっくしょんだよね? 天君」
「そんなはっきり”へっくしょん”て言う人、見たことないけど」
「じゃあ天君は、どんなくしゃみするの?」
その答えを私は知っていた──
「奏ちゃん? 天君のくしゃみはねぇ……」
「いのりっ!」
「いいじゃん。くしゃみの仕方が変だって。私は既に笑われていますが?」
「だから嫌なんだよ」
目をキラキラと輝かせ、好物を見せられた動物のように、ワクワク感を隠しきれていない奏ちゃん──
「誰にも言わないよ?」
誰にも言わない──
世界で一番信用ならない言葉を、にやけ顔で繰り出してきた。
「もう顔が笑ってる」
「私、ママに笑顔がよく似合うって言われるんだぁ」
「笑う準備、整ってますみたいにしか思えない」
「天君、自分でハードル上げてる」
「それはダメだわ。天君」
付き合ってられないと言わんばかりに、一人歩き出す天君だったが……。
「ちょん!」
無言のまま、奏ちゃんが指を差しながら、私の方を見てきた。
「そう。あれだよ」
「ぷっ! 変なのぉ! ちょん! って、ちょん! って。あははっ」
イヤだイヤだと言いながら、結局自分でばらしてしまった天君。
(子供の頃から、やっぱり変わってなかった。なんだかうれしいなぁ)
私は──
くしっ! て感じです(笑)




