突入前夜のトーキング 3
「……それじゃあさっさと寝ろ。まずは僕が見張りしといてやるからさ」
「わー、ありがとう!どれくらいで交代にしよっか?」
「何時に侵入開始するかによるな。どれくらい寝たい?」
「最低でも六時間は寝たいかなぁ。欲を言えば九時間?」
「わかった。三時間置きに交代でどうだ?」
「そうだねー。それくらいが一番いいかも!」
「よし、それで決まりだな。あの感じだと、悠が一番野営に慣れてないっぽいから、六時間連続で寝かせてやるか?」
「それがいいね!さっすが死神さん!くー、やっぱり慣れてる人は違うなぁ!悠くんもそう思うよね⁉︎」
それは驚くほど白々しく、場の空気は滑ったショーのように凍りついていた。
悠の顔が冷たい。
流石に下手くそ過ぎたか、と自らの行動を振り返って猛省した二人だったが、危惧していた悠はため息をついた後、表情をいつもの穏やかかつ、どこか空虚なものを残したものへと戻した。
「……まぁ、そう思うよ。そうしてくれたらありがたいな。二人と違って俺は慣れてない。ありがとう」
「……!いやいや、無理は禁物だからね。慣れてない悠くんにそんな真似させちゃいけないもん」
「そうだな。ほら、寝ろ寝ろ。睡眠時間は一分一秒でも惜しいぞ」
「はーい、おやすみね、死神さん、悠くん」
「おう。僕は明日のことでも考えとくからゆっくり休め」
「……本当にごめんね?さっきのこと」
「気にすんな。まずお前に期待した僕が馬鹿だった」
「あ、酷い!死神さんが辛辣だよ悠くん!」
「あれは死神さんなりの励ましだよ多分。死神さんは不器用だから、こういう時に素直に言葉が出てこないんだ」
「おい」
「あはは、冗談だって。おやすみ死神さん」
「ちっ、さっさと寝てろ」
相変わらず語調がキツイものの、一ヶ月の付き合いで彼女の性格を理解していた悠は、素直になれない死神の言葉を軽く流して、笑顔で床についた。
リィンも同じようにして、死神に笑いかけるとすぐさま眠りに落ちた。
そして訪れたのは、先ほどまで混沌としていた空気とは打って変わった静寂。
心地のいい虫の鳴き声すらも聞こえるほどの静かな空間。
悠も疲れていたのか、間も無く深い眠りについており、死神が顔を覗き込んでも気づかないほどだった。
死神はなんの邪気もない、空虚な正義の塊である悠を見て、不安そうな面持ちをしてから満天の星を眺めた。
願わくば、彼が救われる時が来ますように。
死神は神頼みの無責任な自分を嘲笑し、彼の心から針が取り除かれるときの為に、今は命を守らなければ、とその場で見張りを開始した。




