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街へのファーストコンタクト 3

 それから二人は驚くほどの早さで準備を整え、出撃準備を終える。



 そもそも荷物がない悠は準備の整えようがないのだが、手ぶらの悠と同じくらいの速度で武器やらなんやらをすべて揃えてしまったリィンには舌を巻く。



 リィンの後をついて走っていると、既に準備を完了していた大勢の鎧達が待ち構えていた。



 あれだけの時間で全ての準備を完了し、出発を残すのみというところまで待機できる彼らの練度に素直に驚いた。



 基本的にワンマンアーミーな悠では考えられないことである。



 リィンはそこにいた、恐竜に似た生物に跨る。

「後ろに乗って。今回はここで見ていてもらうから」



「お、おう。……なんだこの生き物」



 悠的には正体不明の生き物に跨ることは躊躇われたのだが、彼女達を待たせるわけにもいかず、嫌々跨った。



「それじゃあ出発。三番隊が食い止めてくれてるから、急いでね」



 リィンは淡々とした口調で号令を出し、手綱を握って訓練所を後にした。



 その生き物の速さはデッドノートには遥かに劣るとはいえ、風を直接受けるため予想以上に速く感じられた。



 現場にたどり着くまで、しばし二人で話をする。



「……悠君、さっきニジルを見た時変な顔をしてたけど、君の国にはニジルはいないの?」



「こんなのいないよ。俺たちの国でいる危険な生き物はせいぜい熊とか猪だ。こんな恐竜みたいなやつは昔に絶滅してるよ」



「ニゲルは危険じゃないのよ。見た目こそ肉食竜だけど、比較的おとなしい生物だから、人間の足となってくれてるの。……けど、肉食竜たちがいないなら、悠君たちはどうやって長距離を移動してたの?」



「色々あったけど、一番ポピュラーなのは自動車だな」



「自動車?生き物じゃないの?」



「あぁ。鉄を加工した金属のボディで出来た、四人くらいで乗れる乗り物だよ。ガソリンっていう燃料を入れると、アクセ……ペダルを踏むだけでニジルと同じくらいのスピードが出る」



「……すごい。悠君の国の人は、力が強くない代わりに頭がいいのね。他にはなにがあるの?」



「アルミニウム合金っていう金属で作った、飛行機っていうものとか。百人くらいを乗せて空を飛ぶことが出来る」



「私たちの国にも空を飛ぶものはあるけど、そこまでは乗せられない。どれくらい飛べるの?」



「燃料さえあれば、この星を一周出来るくらい。……まぁ、確実に燃料が足りないし壊れるからあくまで理論上は、だけど」



「速度は?」



「物によっては、音より速い」



「一台欲しい。それさえあれば有利に戦えるよ」



「百人くらいが八十歳まで自由に遊んで暮らせるくらい値段が張るけど、それでもいいか?もちろん学費、食費とか全部込みでだ」



「……それはダメね。便利だからって量産出来るものじゃないと意味がないもの。高すぎるとダメなの」



 空を飛びたいという少女らしい願望からくる発言だと思っていた悠は拍子抜けした。



 リィンの頭の中は非常に現実的だった。



「ねぇ、他には……って、喋りすぎた。そろそろ着くから、気を引き締めてね」



 割と楽しい会話が出来たので忘れていたが、今は戦地へ赴く最中だった。



 リィンもそのことを反省したようで、少しバツの悪そうな表情をしていた。



 やがてリィンの言う通り、もう既に現場では戦闘が始まっていた。



 身の丈ほどの魔物相手に二人でペアを組んで応戦しており、統率された効率のいい戦いを繰り広げている。



「一人じゃ押し負けるから二人で挑ませてるのか?」



「曲がりなりにも魔の者だから、たかだか人間じゃ勝てないの。だから相手が普通の魔物一体だったら二人で、強い魔物だったら四人で。無謀に挑んで数を減らせば力で負ける人間側は確実に負けるから」



「俺の国でも、新撰組ってやつらがそんな戦い方をしてたな。……何百年も前の話だけど」



「お互いの存在を知らないのに、似通った戦術を使ってるだなんて親近感を感じる。また後で聞かせて」



 リィンはニジルを降りると、悠を一瞥して腰の剣を抜いた。



「それじゃあみんな、行って」



 リィンの号令と共に、兵達は一斉に魔物たちへ、向かっていった。



 これにより形勢は一気に逆転し、魔物軍より人間の方が数で勝るようになった。



「私も行くけど……身を守る手段はある?」



 悠はそう言われて、なにかないかとポケットの中や服の中を確認した。



 なにもないことはわかっていたが、もしかしてという淡い希望ゆえの行動だった。



 やがてやはりなにもないかーーと思った瞬間に、その行動は身を結んだ。



 服の内側の、メモリデバイスをいれているスペースに、なにやらそれ以外の固い感触があった。



 もしやーーとその感触に心当たりがあった悠はすかさずそれを取り出し、自分の視線の中にいれた。



「……これがあったか」



 感触の正体は手首に装着する、射出装置だった。



 この射出装置はもしもデッドノートが使用不可の場合、エネルギー攻撃が行えない場合の、生身で行動しなければならない時の為に沈希から貰ったアンカー、ワイヤー、ピアノ線を射出することの出来る代物だった。



 デッドノート装着時にも手首についているが、バレルを除いたこの武装のみは取り外しが可能なのだ。



 これ単体ではお世辞にも戦力とは言えないが、ないよりはマシというほどの物ではあった。

 射出装置に巻きつけてあった特殊手袋とそれを早速装着し「大丈夫だ」と見せつける。


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