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人格喪失者、それは記憶喪失を望んだ者  作者: 明進
第一章 運命の出会い、それは物語の始まり
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プロローグ―異光円、それは記憶喪失を望む者―

 ――愛知県某所。

 生まれ育った町の歩き慣れた歩道。

 不機嫌な表情を浮かべながら本屋で購入した二冊の本が入った袋を握りしめてその歩道を歩いていた。

 この日の運勢は最悪だった。

 その手始めと言わんばかりに寝坊してしまい、予定よりも遅めの昼過ぎに目覚めたオレは遅めの朝食を食べるとすぐに身支度を済ませて本屋へと向かった。

 なんて事はない、今日は楽しみにしていた小説と漫画の発売日だからだ。

 家から一番近い本屋まで徒歩で片道十数分。レジに並ぶ時間を加味しても往復でも三十分弱で帰宅して読書に没頭出来る……筈だった。

 ところがこんな日に限って本屋へ向かう道中でいつもより多くの不良達に遭遇してしまったのだ。

 『いつもより』と言うのは詳細を話すと長くなるので割愛するが、オレはある時を境に不良に絡まれるようになっていた。

 幸いにも昔習った武術のお陰で不良を撃退する事は問題なかったのだが、不幸にも不良を撃退する事がオレの日常にすっかりと溶け込んでしまったのだ。

 お陰で無関係な一般人からは俺まで不良視される事も少なくはない。『二番目の人格』こと『俺』ならいざ知らず、オレは襲って来る相手にしか拳も足も使わんぞ。

 『二番目の人格』と言うのは実はオレ―正確にはオレ達だが―は人格喪失者だ。

 因みに今のオレは『三番目の人格』。

 少しだけ昔の話をしよう。当時小学二年生だった『僕』にある病が発症した。その病の影響は幾つかあったがその内の一つが脳波を乱し、それによって『僕』こと『一番目の人格』は人格喪失に陥ってしまい、『二番目の人格』が形成された。

 さて、この『二番目の人格』がどんな奴かと説明をしよう。こいつは一度決めたらそれに向かって頑張るが感情の起伏や衝動が激しく特に喜怒哀楽の怒と楽が激しい傾向があり、怒りに囚われるとすぐに周囲の物を破壊しつくし、楽しい時は極限まで楽しむ為の努力をしていた。

 ただ病によって発症した人格喪失によって形成された人格の為か怒と楽が暴走しがちな反面、喜と哀は表に出辛くなっていて嬉しいと感じても笑えずに、悲しいと感じても泣く事は少なかった。

 そのせいで周囲の人間からは無愛想な人間として評価されてしまっていた。

 表に出辛いだけで感じていない訳ではないのに失礼な話だ。

 それと前述した武術を習う切っ掛けになったのが正にこの『二番目の人格』で、すぐに感情の衝動に囚われて後先考えずに動く事を抑制する事を目的として心身を鍛える為に両親に半ば強制気味に通わされた。

 『健全なる魂は健全なる精神と健全なる肉体に宿る』と言うやつなのだろう。

 その効果があったのかは怪しいが、不味い薬を二種類も飲み続けたお陰でその病は六年の時をかけて一応は完治した。

 一応と言うのは病が治っても『一番目の人格』に戻れなかったからだ。

 『一番目の人格』は以後の人格とは異なり慈しみの心を持っている優しい人格で、でも軽いホラー話ですぐにビビるような臆病さもある奴だった。

 それと『一番目の人格』の時期が幼い頃だからと言うのもあるのだろうが子供特有の純粋無垢で好奇心が旺盛の一面もあった。

 自画自賛だと言われそうなので補足しておくと『二番目の人格』や『三番目の人格』と比較してそういう特徴があるって話だからな。

 それとさっきから『一番目』や『二番目』の事を他人のように扱っているのは今のオレは『三番目』で、オレにとっての彼らは同じ体を共有してはいるが別人格なのでどうしても自分自身だと認識出来ないからだ。

 それと念の為に補足をしておくとオレ達の人格は上書き式の様なもので小説などに出て来るような二重人格や三重人格とは別だ。

 今この体にある人格はオレ―つまり『三番目』―の人格だけで、他二つの人格はもういない。

 多分仮死状態みたいな感じでオレ達の心の中で眠っているのだろう。

 ――二人が完全に消滅したとは思いたくないだけなのかも知れないけど。

 オレ―『三番目の人格』―が形成されたのは病が完治したと告げられてからしばらく経ったとある日だった。

 病が完治してからは『二番目』も少しずつ大人しくなり始めていたのだが、前兆もなく急に『一番目』の記憶や出来事がにフラッシュバックしてきた。

 よく物語の中で記憶喪失のキャラクターが自分の記憶を取り戻す時みたく「頭が痛くて割れそうだ……」的な事は全くなかったが、代わりに俺の肉体はしばらくの間ボーっとしていたようだ。

 そして数秒とも数十分とも分からぬフラッシュバックの感覚の後に唐突に『俺は今までの自分が僕ではない』事を認識し、そしてまた『病が完治した今も僕ではない』事を認識した。

 実は『二番目』の間は我が強かった事もあり、自分が別人格になっている事を認識出来ていなかった。

 しかしこのフラッシュバックによって『一番目』と『二番目』が幾つかの共通項目はあれど、異なる価値観や思想が多すぎる事を思い知らされた。

 これは推測なんだけど恐らく病が完治した事で『一番目の人格』の一部が還元されたが、既に形成されていた『二番目の人格』と混ざり合ってしまい二度目の人格喪失が発症してしまったのだろう。

 そして『三番目の人格』―今のオレ―が形成された。

 それと同時にオレの中には『一番目の人格』である『僕』に戻りたいという欲求が生まれてしまったが、人格喪失(しかも二回分)を戻す薬や治療法、技術などを幾ら調べても見つかる訳はなかった。

 ――とまぁ、こんな感じでオレは一度の人生で三人分の人格を経験すると言う中々にクレイジーな生き方をしている。

 正直な話をすると人格喪失などにならず平凡な一生を過ごしたかった。

 さて(数多の不良を返り討ちにしながら)、無事に本屋に到着したし昔話はこの辺りにしておこう。

 予約していた二冊の本を購入するとすぐに店を出た――もう夕暮れだ。

 往復三十分弱で終わる筈だった買い物は片道だけで(家を出たのが二時過ぎだったので)二時間程かかってしまった訳だ。

 こんな感じで無駄な時間の浪費が今後も続くと思うと溜息の一つや二つも出るし、そりゃ不機嫌な表情にもなる。

 読書はオレを含んだ三つの人格の共通の趣味の一つでもあり、オレにとってはいなくなってしまった彼らとの細やかな繋がりでもあった。

 だからさっさと帰宅して読書に没頭したい。

 そんな事を考えながらしばらく歩いていたら、突如頭上でドカンッ!と爆発音が鳴り響いた。

 その音を耳にした瞬間に反射的に頭上を見上げたオレの瞳に映ったのは頭上から落下してくる数十個の鉄骨だった。


「あっ、オレ死んだわ。」


 無意識的にポツリと呟いた次の瞬間には天から降り注ぐ鉄骨の雨に押しつぶされた。

 まず初めに頭上に痛みを感じて全身に揺れを感じながら体が倒れた。


 次に終わりなく降り注ぐ鉄鋼の雨が目に入ったかと思うと全身に痛みを与えた。


 体の感覚が麻痺する程の痛みを感じたけど、不思議と両手両足そして脇腹に鉄鋼が突き刺さって穴が開いたのだけは何となく分かった。

 いつの間にか握りしめていた筈の二冊の本が入った袋も手放してしまったようだ。


 そのまますぐに痛みは感じなくなった。

 痛み所か何も感じなくなった。


 真っ暗で何も見えない、何も感じない、何も、考えられなく……


 やっぱり今日の運勢は最悪だ。


 薄れいく意識の中で最後に浮かんだのはそんな言葉だった。


 そしてオレは本当に死んだ。

 元より生きていたい訳では無かったが、こうしてオレこと異光(いかり)円(まどか)の人生は一度……いや、三度目の終わりを迎えた。



 鉄骨の雨によって死んだ筈のオレこと異光円は気が付くと暗闇の中で再び意識を取り戻していた。

 ここがどこなのか、何で死んだオレの意識が残っているのか、何もかもが全く分からない。

 そして何よりも意味不明なのが――


「異光円、享年十五歳。生前は地球の日本人で愛知県出身。少年時代に病の影響で脳波が乱れて人格喪失となり、以後別人の様に短気で粗暴な人格に変貌。薬を服用し続けて一昨年の秋に病を完治。しかし元の人格へは戻れずに第三の人格を形成する。」


 このガイコツだ。


 しばらく前に意識を取り戻したオレの眼前にはド派手なローブを着込み、ド派手な玉座に座り込んだ全身ガイコツの存在がいたのだ。

 ガイコツは十数ページ程の薄い本を音読しており、内容からしてあの本にはオレ達の十五年間が記録されているのだろう。

 何と言うか心の中を土足で歩かれているみたいで良い気がしない。

 このガイコツ、何様のつもりだ。


「その後人格喪失に陥っていた事に気付くも本来の人格が戻らない事に絶望。自分は人間もどきのバグった存在だと自暴自棄になる。――そして工事中の建物で発生した爆発事故による鉄骨の落下に巻き込まれて死亡。」

 その後もガイコツは本を読み進め、数分の後に最後の一説を読み上げた。

 音読が終わると同時にガイコツは本をパタリと閉じて傍にある丸型のテーブルに置いてから一呼吸おいて――


「……っとに、オタク随分と難儀な人生な上にこんなに早死にするなんて、かなりの低ラック値だな!」


 人差し指でこちらを指しながら人を子馬鹿にするような声色で失礼な事を言って来た。

 繰り返しになるが、このガイコツは本当に何様のつもりだ。

 本の件と言い、今の動作と声色と言い、このガイコツに対して苛立ちが止まらない。

 ガイコツが普通に喋っている事に対して恐怖心や驚きを覚えるのを忘れてしまった程には腹が立っている。


「そりゃどうも。……で、人の人生をそんな薄い本にして態々音読しやがったお前は一体何様なんだ?」


 ガイコツに腹が立っていたので、不機嫌気味に言葉を返した。


「ありゃ、オタク反応薄いね。普通は『キャーガイコツが喋ってるーーー!?』とか『俺はまだ死にたくねえ!!』とか、パニックになってくれるんだけどなぁ……」


 何故かガイコツが玩具を取り上げられた子供みたいに拗ね始めた。

 こちとら前述した通り腹が立って恐怖心がマヒしてるし、音読された本の内容通りに人格喪失を二回程経験したせいで『今の自分は本物ではない』=『人間もどき』の様な存在だと自暴自棄になって早数年だ。

 今更意味不明なガイコツ相手にビビったりは出来なかった。


「――で、結局お前は誰だよ。」


 再度同じ質問をガイコツへと問う。これでまだ答えない様だったら一発殴ってやる事にしよう。

 蹴りでも良い。


「そんなに知りたいなら答えてやるよ。こっちとしても話が進まないしな。我は死神ハロス。その名の通り、神であるぞ!そしてここは所謂死後の世界だ。」


 やたらと偉ぶっていたと思ったらこのガイコツ、死神なのか。神様の類なのか。

 と言うか神だの、死神だのが本当に存在しているのか。

 『事実は小説よりも奇なり』とは言うが、俺が生きていたあの世界も割とファンタジー的な世界に近しいものだったのかも知れない。


「それでその死神様が死人のオレに何のようだよ。」

「うぬ。今日はその事で貴様に合いに来たのだ。」


 突然ガイコツ……いや、死神が真顔(ガイコツなので表情が分かり辛いが声色的に)になった。いつの間にか座り方も真っ直ぐになっている。


「円よ、先程我が読み上げたようにお前は凡人と異なる道を歩んできた。脳波に干渉する病という不条理な影響で。そして終いにはとても痛々しい死に方をした。……よって死神ハロスの名の下に我が汝に慈悲を与えようと言うのだ。」


 尊厳な態度で相も変わらず言いたい放題言って来るのはやはり腹が立つが、どうやらお情けをかけてくれるらしい。

 死神の慈悲って時点で怪しさ満点だが。


「そう言うのって普通死神じゃなくて女神とか天使とかの役割じゃないのか?ほら、異世界転生ものの小説とか、主人公が勇者のRPGとかにありがちな感じのやつ。」

「確かに女神や天使も似たような事は執り行っている。しかし死神とて女神同様に神の一族だ。当然我にも同種の権限は存在するのだ。」


 ああ、神様的には女神も死神も同じ神の一族って種類に分類されているのか。

 多分警察犬も盲導犬もペット用の犬も全部一纏めで犬と呼ぶ的な感じなのだろう。

 ……ってか、神の一族って事はもしかして結構な数がいるのか神様。


「それで死神流の慈悲ってのは何なんだ。魂の消滅とかそういう物騒な感じの奴?それとも地獄に連れて行ってくれるとか――」

「いや、お主死神を何だと思っているのだ……」


 そりゃ死神って言ったら【悪い神様】とか【死を招く者】とかそんな感じのを連想するだろう。

 ダークファンタジー系の物語にはたまに例外的な死神がいる事もあるが、それらも何かしらはやらかすし。


「――まぁ良い。汝も先程言っていたが、我が今回提案するのは『異世界転生』だ!。――ああ、案ずるなかれ、転生先の世界での言語や文字に関する情報は直接頭の中に書き加えておいてやる。」


 異世界転生。それなら尚の事死神なんて物騒な存在ではなくて女神や天使にお願いしたい。

 別にそういった存在に会ってみたいとかではなく、単純に死神に転生してもらうとか絶対来世でろくな目に合う気がしないから。

 しかも頭の中に書き加えるとか物騒な事までサラッと言っている。


「更に何でも一つだけ願いを叶えてやろう死神ハロスとの契約だ!しかも今なら契約の特典として特別な力も一緒に授けてやるぞ!」


 話が更に胡散臭くなった。契約とか怪しさ満点の単語まで出て来た上に特別な力を授けるとか、好き放題言っている。正直信用ならないと思う。

 特に死神由来の力とか絶対によろしくない物だし、あまり欲しくはないな……。そりゃあファンタジー世界で武器を手に取って魔物と戦ったりだとか、魔法を操ったりとか、スチームパンクな世界で銃の打ち合いをしたり、サイバーパンクな世界で巨大ロボットの操縦をしたりとか、そう言った事に憧れてはいるし、何度も色んな物語の中で夢見て来たけれど、それでもオレは別に中二病とかでもない。

 それに異世界転生物の小説とかだとこう言った展開では女神が願いを叶えてくれたり、転生先を選ばせてくれるような物語も珍しくはない。しかし眼前にいる自称死神がそれを言うだけでとても胡散臭く思えるのは何故だろうか。これが物語ではなく現実だからかも知れないが。

 だけど、もし……もし本当に願い事が叶うのであれば、一つだけ叶えて貰いたい事があった。


「……本当に願い事を叶えてくれるのか?」

「無論。不老不死、レベルMAX、伝説の武具、性別の転換、家族や恋人の有無……どんな願い事でも叶えてやろう。因みに我との契約の都合上、前世……つまり今の記憶を保持したまま転生は行われるので、記憶の保持以外の願いに限るがな。……あっ、言っておくけど願い事を増やす類の願いだけはダメだね。それをすると色々とご破算になるから。」


 願い事を増やすのがタブーなのはこの手の展開では鉄板だ。

 アラジンに出て来るランプの精霊も駄目だと言っていた。

 あれは他にも二つ程出来ない事があった気がするけど。


 だけどオレの願い事は一つだけだ。

 生きていた時は死者を蘇らせる三歩手前みたいに感じていて、どうすればそれが叶うのか全く分からなかったが――


「オレの願いは――自身の人格、及び記憶全てのリセットだ。どうだ、出来そうか?」

「ふむ、可能だ。……だが何故リセットを望む?前世での記憶や知識を元に転生先でやりたい放題するのが異世界転生の定番だろう。」


 神だと言う割には以外と俗物っぽいぞ、この死神。


「さっきお前も読んだだろ?オレは生前に人格喪失となり、病気を治しても元の人格は戻らずに中途半端に混ざった別人格になったって。……それ以来元の、『一番目』の人格を取り戻す事だけを考えて生きて来た。」


 だけどそんな願いは叶わなかった。そもそも人格喪失を克服出来る薬や手術があるのなら麻薬や煙草、お酒などの依存性を後から打ち消す事も出来るようになっていた筈だからだ。

 あれらの依存性も人格喪失の一種だ。一時の快楽を得る為だけに自分で自分を傷つけ、破壊し、殺していく……俺からすればあの毒薬の作成者も使用者も、等しく愚者であり、殺人者同然だ。

 話が逸れた――


「だから異世界に転生をしないといけないって話なら、せめて来世では人格喪失になりたくない。本来のあるべき人格で全うに生きたいってだけだ。」

「それなら人格のリセットだけで、記憶を保持してもよかろうに。」

「人格をリセットしても人格喪失だったと言う記憶が残っていたら影響があるかも知れないだろ?」


 現に三番目である今の人格は一番目の記憶が二番目の状態にフラッシュバックした影響で混ざり合って形成された。

 もし一番目の人格にリセットをした所で二番目や三番目の記憶を持っていたら再び混ざって四番目の人格を形成するとかになりかねない。


「汝の意志は理解した。しかしこの様な願いは四億年の歴史を持つ死神業界でも前代未聞……記憶と人格は心や魂に深く影響している。その全てをリセットしてしまえば廃人になってしまうかも知れないな……それでは困るだろう?」


 確かにそれは困る。

 さっきレベルMAXとか伝説の武具とか言ってたし、転生先の異世界が所謂ファンタジー的な世界の可能性もある。

 そんな世界に廃人状態で目覚めたらあっと言う間に魔物や妖の類に殺されるかも知れないし、そうでなくても悪い人に殺されたり、捕まって奴隷にされる事も考えられる。


「そこで提案だ。汝の望み通り人格はリセット、つまり病気で人格喪失になる前の本来のものに戻そう。前世ので記憶も忘却するように設定しよう。……但し、前世での知識は必要に応じて思い出せるようにしよう。」


 なるほど。

 知識や知恵、常識などを理解しているのであれば人格や記憶がリセットされた後でも自分で思考したり、動いたり、問題なく出来そうだ。


「じゃあそれで頼む。」

「ではこれより汝―異光円―を異世界―【リーネド・ムンリ】―へと転生させよう。」


 死神ハロスが玉座から立ち上がりながらそう告げる。

 ハロスの右手がこちらへと向けられると同時に足元に紫色の魔法陣が現れた。

 魔法陣の発生と同時に急激に意識がボーッとし始めた。眠気とは少し違う違和感がある。

 眠くなって眠るのがパソコンのスリープモードだと例えるなら、これは強制シャットダウンするような感じだ。

 それ位違和感が強い眠りに堕ちようとしている。


「――さぁ異光円よ、異なる世界では異なる名が必要だ。これより汝は※※※※※※、イラと名乗るが良い。」


 取り留めない例えが頭の中でグルグルしている内にハロスの声が聞こえた。

 意識が朦朧としてきた為か少し聞き取れない部分もあったが、どうせ目覚めたらここでの出来事も忘れているだろうし関係ない。

 来世ではイラと言う名を名乗らなければいけない、と言う事だけは聞き取れた。

 まあ地球でも外国だと漢字は使えないし、国によっては名と性が逆になる場所とかもあるのでそういう事なのだろう。

 そもそも自分の名に愛着がある訳でもないので来世も同じ名前と言うのはつまらない気がするし。

 ――そう言えば名前に関する情報は記憶に分類されるのか、知識や常識の類なのだろうか。

 まぁ目覚めた時に名前を忘れていても、そこまで困る事にはならないだろう……

 そこまで頭の中で考えると同時に俺の意識は完全に堕ちた。



「――転生完了。ようやく七人揃ったか。」


 魔法陣の消滅とともにイラがこの空間から異世界へ旅立った事を確認したハロスが再び玉座に座り込みながらポツリと呟いた事を異光円――イラは知る由もなかった。

・キャラクター紹介

『異光(いかり) 円(まどか)』

種族:地球生まれの日本人

出身:愛知県某所

年齢:15歳(高校一年生)

性別:男

身長:160cm

髪色:黒色

瞳色:黒色

 幼い頃に発症した病、及び病の完治時にそれぞれ人格喪失を発症(計二回)した人格喪失者で、病にかかる前の元々の人格に戻る事だけを考えている。

 その為意図的に人格喪失を引き起こす煙草、お酒、麻薬などを必要以上に嫌悪している。

 自分の人格をそれぞれ別人視しており、一番目の人格を僕、二番目の人格を俺、三番目の人格をオレと呼んでいる。

 一番目は穏やかで年相応の少年、二番目は短気で粗暴だけど真っ直ぐ、三番目は前者二つが混ざって自暴自棄な気分屋みたいな感じになっている。

 一番目の趣味故か『物語』を好んでおり、面白い物語を追う為にゲームや本、アニメを好んでいる。物語に没頭している時間だけが至福の一時だと思う程に依存している。



 こんな感じに後書きではキャラクターの軽い紹介をする予定です。

 ……とは言っても『円』に関しては作中でも出たように次回から人格と記憶をリセットして『イラ』に転生するので、今後しばらくの間は『円』時代の情報は出て来ない訳ですが。

 緩く不定期に更新していくつもりではありますが、ここまで読んで下さって方は気が向いたら是非次回もお願い致しますl

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