↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レテ川に記憶の欠片を沈めて  作者: なつ
第七章 星の輝く場所、名探偵の到着
PR
47/56

 5

 浜嶋佐登留のキーボードを打つ手が止まる。グラスビューワに写された画面に、ウインドウがポップアップする。映っているのは知らない女性だ。前髪を上げていて、おでこが光っている。

「おじゃまします。通信を、三人のプログラマー同時に開かせていただきます」

 その宣言と同時に、ウインドウが二つ立ち上がる。左上に、第一プログラマーの矢口誠一、右上に第二プログラマーの有田百合、右下に、謎の女性、だ。が、少なくとも、ここにアクセスできる権限を持っている人間ということになる。

「権藤警部の許可を得ています。私は、芹沢と申します。直接ではありませんが、権藤の上司に当たります。今回の事件について、皆さんにいくつか伺いたい点がございます。よろしいですか?」

 疑問系になっているが、それは拒否を許さない口調だ。どうみても権藤警部よりも若く見えるが、自分たちがやっている仕事も、能力がすべてで、年齢など重要ではない。その若さで権藤の上司なのだとすれば、かなりの能力があると考えていいのだろう。画面左上の誠一が、肩をすくめてから、なんなりと、と答える。

「それでは、モニター初日の、いたずらプログラムを組んだのはどなたですか?」

「俺だ」

 誠一が答える。

「一人でですか?」

「組んだのは俺一人だが、自分範疇のプログラムだけじゃあ、機能しないから、佐登留にも許可を得ている。有田には、何も言っていないが、気づいてないはずはないだろう」

「百合さん、どうですか?」

「もちろん何かを挿入していることには気がついていました。でも、それが何なのか、解読したのは、当日の日中のこと」

「今そのプログラムは残されていますか?」

「いいや。きれいさっぱり消してしまったね」

「それは、オートですか、マニュアルですか」

「手動でだ」

 右下の女性の矢次早の質問が続く。

「当日、プログラムを少し旧式のものに差し替えたとうかがいました。なぜですか?」

「うまく機能しなかったからだ。プログラムの基本は一人称のもので、一方は片方を追いかけている状態なんだが、お互いが見ている風景にずれが生じてしまったんで、その原因の究明をしようとしたんだけど、時間オーバー。仕方ないから、一昔前の方式に戻したってだけだ」

「まだ原因は分かっていないんですか?」

「残念ながら」

「ではそれは、あなたが組み込んだプログラムが原因ではないのですね?」

「違うと思います」

 右上の百合が誠一の変わりに答える。

「それでは、さらに別のプログラムが組み込んであった可能性がある」

「残っていない」

「可能性は否定できない?」

「まあ、できないな」

 佐登留は先日のやり取りを思い出し、口を挟んだ。

「それなら、前エラーが出ていたときのことが関係あるんじゃないか?」

「ああ、あれか。そうか、そうだな、まさしく、その通りだ。ナイスだ、佐登留」

「説明してください」

「俺は自分が挿入したプログラムを手動で消した。消されていたことを夕方に有田も確認している。が、その日の夜、なぜか俺が消したプログラムが復活していた」

「……それは、誰かが、故意に、プログラムを復帰させた、ということでしょうか」

「そうだろうな。おそらくはオートだ。そいつは、俺がプログラムを組み込んでいたことに気がついていなかった。だから、俺が組み込んだプログラムごと、元に戻したんだ」

「あなたならできますか?」

「できないこともない。だが、俺は別のプログラムが組み込まれていたことに気がつかなかった」

「ありがとうございます。おかげで、かなりのことが分かりました」

 いえいえ、と誠一が答える。

「一つ、お願いがあります」

 芹沢が、拒否できない鋭い口調で続ける。

「もう一度そのプログラムを組み込んでください。そうすれば、そのせいで座標がずれたのではないという証拠になります」

「了解」

 それと同時に右下の通信が切れる。

「……なんだか、すごい人だったね」

「あれは本物だな。逆らっちゃいけない」

 それから少し話してから、他のプログラマーからの通信と途絶える。佐登留は、自分の能力の低さが恨めしい。もっと能力をつけなければ、まるで会話についていくことも出来ないし、プログラムの修正もできない。決まりきったやりかたではだめなのだと、改めて思う。

 時計を確認してから、グラスビューワをはずす。少し早いけれど、今日はもう休むことにしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。