表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/126

第73話 ジョブ

いつも誤字報告ありがとうございます


 【三叉槍の魔法使いトライデント・マジックマスター】の三人と合流してから冒険者ギルドに隣接している酒場へ。

 まだ昼過ぎだけど、なぜ三人が戻って来てるのかというと、僕がラピリカさんとメメジさんの護衛依頼に行ってからずっとダンジョンに潜ってたらしい。

 それで、キリのいい五〇階層のボスを倒したところで戻って来たところ、僕とかち合ったようだ。


 受付でもBランク昇格や、パーティランクの説明を受けていて長引いたようだけど、その間に僕もラピリカさんから説明を受けられたのでちょうどよかった。


「じゃあ、明日は休みにするんですか?」

「何言ってるの! キズナが帰って来たんなら休養は今日の半日で十分! 明日からまた潜るわよ!」

「そうですね、私も乗って来ているところです。バンさんという盾役がいると安心感も違いますし、補助系の魔法がこれほど楽しいとは思いませんでした。明日から再び潜るのには賛成です」

「ぐわーはっはっはっは! 俺様も楽しいぞ! 初めの内はつまんなかったが、段々と魔物が強くなってくると俺様も楽しくなって来てよ。人間のダンジョンとはこうも楽しいものだったんだな! こんなのを人間が独占するとは不公平だぜ!」


 最高だぜ! とエールを一気に呷るバンさん。

 この人は暴れられたら楽しい系の人だと思うけど、ブラッキーさんもホワイティさんも大丈夫? バンさんに感化されてない?

 それとバンさん。あんまり人間人間と連呼されると、人間じゃないって言ってるようなもんだよ。それってヤバくない?


「あの、バンさん?」

「なんだい、キズナ様!」

「あの、その、あんまり人間って言い方はしない方がいいというか何というか……」

「人間を人間って言って何が悪いんだ?」

「あれ? キズナもバンのこの口癖は知らなかったんだ。自分の事を真祖ジハード・セカンドだと言っててね、人間を卓越した者だから人間の事を人間って言うんだっていつも言ってるよ」


 あちゃー、自分でバラしちゃってるよ、この人。


「で、キズナは知ってる? 真祖ジハード・セカンドって聞いた事がないんだけど」

「え? い、いや、知りません」


 そうか、始祖すらあまり知られてないみたいだし、人族が知ってるのって吸血鬼止まりなのかも。

 アンダーバットの事を吸血鬼って言ってたぐらいだからな。ここはスルーだな。

 真祖ジハード・セカンドなんてメジャーじゃない種族なんて知らないかも。


「ま、確かにバンの力は凄いわ。バンの協力があってこその五〇階層達成だったものね。もううちには欠かせない存在ね」

「はい、私もそう思います。キズナとは違う意味で勉強になります」

「浅層だとバンが一撃で全部倒しちゃうから全く練習にならなかったけど、三〇階層を過ぎて四〇階層あたりになると私達にも出番が来て、なんとなく連射のコツを覚えられたんだから」

「私もそうです。四〇階層前後から範囲魔法が上手く行くようになったのです。何かこう、俯瞰して見れるようになったというか、全体視ができるようになったというか」


 レベルが上がって魔力操作が上がったのかな? それとも新しい魔法に目覚めたか。

 きっと、レベル50の壁を超えたんだろうね。『限界突破』か…僕には経験がないね。


「二人とも『限界突破』したんですね」

「「!!!!」」


 ブラッキーさんとホワイティさんは口を開けるが声もでないほど驚いていた。

 僕の言葉はそれほど衝撃的だったみたいだ。


「あれ? 違うんですか?」

「確かに思うところはあります。でも、実際に自分が超越者の仲間入りしたと実感できなくて」

「い、いえ、違うわ! む、むしろ当然よ! 私は…私はこのダンジョンを制覇する者なんだから!」

「そ、そう…ですね」


 この世界では『限界突破』した者を“超越者”って呼ぶんだね。『クロスオーバー』の世界だと上級精霊クラスにならないと呼ばれないのに。

 ブラッキーさんとホワイティさんの二人とシャードルさんとシャイニーヌさんを比べてみる。

 アリとクジラぐらい、いやもっと実力が離れてるよね。それで同じ呼び名って、世界が変わると随分違うんだね。


 その後は話にならなかった。

 ブラッキーさんもホワイティさんも自分が『超越者』だと実感して自分の世界に入ってしまった。

 ポーッとしてしまって、何を話しても上の空だ。

 バンさんに至っては、ずっとエールを飲みながら豪快に笑ってるだけだ。

 ここにも脳筋がいたよ。知ってたけどね。


 話にならないので、バンさんの宿だけ聞いて、三人を残して酒場を出た。

 明日からダンジョンの続きを潜るって言ってたから、僕が買出しをしようと思ったんだ。

 僕も【三叉槍の魔法使いトライデント・マジックマスター】の一員だからね。それに、今では収納袋もあるしお金もあるしね。

 出掛けにお金を下ろそうとして冒険者ギルドの受付でお願いしたらとんでもない額に驚いた。

 さっき、金額も確認しておけとは言われたけど、Sマークが気になって確認を怠ってた。というか、ズラズラーっと並ぶ数字が何なのかな、登録番号なのかな、ぐらいにしか思ってなかった。


 金貨一万枚枚超え……銅貨から数字が続いてるから凄い事になってる。来た当初の文無し生活は何だったのかって話だよ。


 因みに数字はこんな感じ。

 (金貨)11475(銀貨)59(銅貨)87


 しかもこれって収納袋の分はラピリカさんが差し引いてるんだよね? とはいえ、これって使わないといけない気がする。一人で多く貯め込んでると経済が回らなくなるって習ったような……これぐらいの資産じゃ問題ないか。

でも、あんまりお金を使う機会が無いし、メメジーさんのところからまだまだ振り込みが続くみたいなんで、貯まる一方なんだよな。

 大きな買い物をするっていうイメージが湧かないというか、どうでもいいというか。

 元々僕が使ってたお金って宿代と食費と少々の調味料だけなんだよね。

 それも町の中いる時だけで、別に野宿でも苦にならない。むしろ野宿の方が快適な場合だってある。


 そんな事を考えながら、ダンジョンで使うであろう食材と調味料と保存食を下ろしたお金で買って回った。

頑張って大人買いしたつもりだったけど、金貨十枚も使えなかった。

 まぁ、食料関係だからね。

 ポーション系はもちろんメメジーさんの工房。

 僕が行くとメメジーさんのお弟子さん達が歓迎してくれて、効果を試してくれと、種々雑多なポーションを大量に持ってきてくれる。


 いやいや、僕はお金を使いに来たんだよ。もらっちゃったらお金が使えないじゃないか!


 仕方が無いので出されたポーションを収納袋にしまい、代わりと言ってはなんだけど、能力上昇効果のあるポーション作成のためのレシピと魔法陣を書いて渡した。

 ここの人達は十分経験も積んだだろうし、レシピと魔法陣さえ渡せば自分達で何とかするだろう。


 効果としては、身体能力向上薬と魔力向上薬。どちらも効果は二倍上昇で効果時間は三〇分程度。

 一回の戦闘だと十分だと思う。上手くすれば三回の戦闘ぐらいはもつかもしれない。


 そういやメメジーさんがいなかったね。ラピリカさんは帰って来てるのに別行動だったんだろうか。

 その理由もお弟子さんが教えてくれた。


「お師匠様はキズナ様の開発したこのポーション製作機構を各地に布教して回っているのです。キズナ様がいなくなってすぐに周辺の町を巡り、先日から冒険者ギルドマスターに同乗し王都に行って講習・実演・販売・実習を行なっています。今は周辺に広めたポーション製作機構とポーション販売分のマージンが入ってると思いますが」


 だそうです。

 冒険者カードに並んだ数字の犯人はここにいました。

 まだまだお金が入ってくんの!? 何に使えばいいんだよー!

 どんどん膨らむ未来の数字に頭を抱えながら宿へと向かった。


 因みにバンさんはハーゲィさんと同じ宿だった。

 僕もハーゲィさんと同じ宿に泊まり、夕食時にはハーゲィさんと話に花を咲かせるのだった。



 翌日、朝からバンさんと一緒に冒険者ギルドへ。ブラッキーさん、ホワイティさんと合流し久々のダンジョンへと入った。


 このダンジョンは十階層クリア毎に転移ポイントが解放され、クリアした者だけが転移ポイントに登録できる。

 昨日の時点でホワイティさん、ブラッキーさん、バンさんは五〇階層踏破でポイント登録を済ませていた。

 なので、あとは僕だけなんだけど。


「キズナは前回十階層までだから十階層から行けばいいわよね?」

「私達も復習の意味でいいでしょうね」

「つまらん!」


 バンさんの気持ちは分からなくも無い。でもね…


「僕も五〇階層までは行ってるからポイント登録はしてますよ」

「「「えっ!?」」」


 ブラッキーさんとホワイティさんは『マジ!? うそでしょ?』って感じだったけど、バンさんは『やったぜ! 浅層に行かなくていいのか!』の『えっ!?』だった。


「いつ行ったのよ!」

「私達は毎日探索してるのですよ? 抜かれた覚えなどありません。そもそもキズナは護衛依頼で町にはいなかったではありませんか」

「えーと、護衛依頼に出る前?」

「こっちが聞いてるのよ!」「こっちが聞いてるんです!」


 怒らせちゃった。でも、僕の場合は反則だからね。

 ダンジョンの精霊メイさんに案内を頼んで、韋駄天の精霊イダジュウさんと合体ユニオンして最速で駆け抜けただけだし、ノーカンでもいいんだけど。

 あの時の戦利品も『脱出石』はあの時使っちゃったし、スラ五郎と合体させてる『同化のネックレス』と『大きなルビー』に『身代わりの指輪』とあと魔石があったか。

 あの時は収納袋も無かったし、残りは『クロスオーバー』に持って帰ってもらったもんな。


「まぁいいじゃねーか、五〇階層から行けるんなら手間が無くていいぜ。チマチマ雑魚を相手にすんのはうんざりだからな」

「……納得は行かないけど、まぁいいわ」

「五〇階層からは収納バッグをドロップする魔物が出ましたね」

「あー! そうそうなんて魔物だっけ」

「スクレイルファングです。エンカウント率もドロップ率も低いですけど、有益な品なので是非狙って行きましょう」

「売ってヨシ使ってヨシ! だもんね!」


 いや~、張り切ってる二人には悪いんだけど、僕はもう収納袋を持ってるんですよね。

 ラピリカさんに売ってもらったやつが。しかも超強化済み。

 売るにしても、今はあんまりお金もいらないしなぁ。でも、パーティ資金にすればいいのか。だったら僕も頑張るかな。


 先に三人に断りを入れて五〇階層と五一階層の戦闘は僕に任せてもらった。

 できる限り階層の隅々まで探索し、より多くの魔物と戦った。

 そうしないと、僕ってレベル5のまんまだから誰も喚べ無いんだよね。

 そこそこ戦闘も熟したので、そろそろいいかと思って喚んでみた。足らないなら来ないだけだろう。


 【クロスオーバー】メイ!


 五二階層からは先頭をバンさんに任せて僕は殿に下がった。

曲がり角で一人遅れて皆から死角になってからメイさんを喚び出した。

 声は聞かれなくともゲートが見られちゃうからね。


「キズナ様ー! お久し振りですー!」

「ちょっと声が大きいよ。メイさん今日もよろしくね」

「お任せください! それに私の声はキズナ様にしか聞こえないようにしてますから大丈夫です」

「じゃあ、僕は独り言にならないように気をつけるだけだね」

「はい」


 笑顔で答えてくれたメイさんにお願いをした。


「効率よい順路を出してくれない? それとスクレイルファングがいる場所も教えてほしいんだけど」

「わかりました。では、合体ユニオンしますか?」

「そっか、それが一番良いんだよね。でも、合体ユニオンすると見た目も変わっちゃうよね」

「変わりませんけど?」

「え? うそ……」


 いやいやいやいや、変わるって! 誰と合体ユニオンしてもいつも変わってるし!


「それはレベルの低い者との合体ユニオンの場合ですね。最低、私クラス以上の者との合体ユニオンでないとちょっとした暴走状態になるのです」


 合体ユニオンした相手と意思疎通ができないのもその暴走状態にあるためで、合体ユニオン相手の特徴も現れてしまうとか。

 だーかーらー! なんで僕の能力なのに、皆の方が詳しいんだよ! そんなの習ってないって!


「ちょっと納得できない部分が残るけど、合体ユニオンした方がいいのも分かってるから合体ユニオンしちゃおうか」

「はい、こちらはいつでも」

「じゃあ行くよ」

「はい」

「合体魔法」

「「合体ユニオン」」


 できる限り小さな声で言ったので様にはならないけど、それでも合体ユニオンは成功した。


 自分では見た目が分からないけど目線の高さや肌の色は変わってないね。


「うおっ!」

「ななななんですか!?」

「後ろから魔物!?」

「……ちっ!」


 いきなり脳裏に浮かぶダンジョンマップに驚いて声を出してしまった。

 普段から驚いても動揺せずに次への対処を癖付けられてたけど、これには流石に声が出た。


「い、いや、ゴメン。ちょっと躓いちゃった」

「ほっ」

「そんなので大声出さないでよ! こっちがビックリするでしょ!」

「ふむ」


 あれ? バンさんの反応、おかしくない?

 声を上げたら残念がって、魔物じゃないって弁解したら安心って、自分が戦いたいだけ?

 ブラッキーさんとホワイティさんの反応が普通だと思うよ?


 その後は安定した戦いを見せてもらった。

 魔物とエンカウントするとブラッキーさんが魔法で先制、相手が怯ませてバンさんが突撃する。そのバンさんに向かってホワイティさんが防御力アップや攻撃力アップの魔法をエンチャントして行きながら戦況を見て指示を出す。

 複数相手でも途中でブラッキーさんの援護魔法もあり、バンさんが負傷してもすぐに回復できるようにホワイティさんが準備をしている。

 まだまだ余裕のありそうなバンさんが負傷するシーンは一度も無かったんだけど、そうやって準備をするのって大事だよね。

 危なげなく魔物を倒し探索を続ける。

 五一階層と五二階層の僕? スラ五郎を振り回すまでも無く、魔法でちゃっちゃとやっつけましたとも。

 なので、ここからは手を出すなと言われてますとも、はい。


 でも、このダンジョンマップで便利だわ。

 道はもちろん、何処に宝箱があって何処にどんな魔物がいるとか全部表示されてるんだもん。宝箱の中身まで表示されてるよ。

 罠も出てるし解除方法まで解説されている。

 ダンジョン内でダンジョンの精霊との合体ユニオンは初めてだから、こんなのができるって知らなかったよ。

 凄く便利で見ていて楽しいね。

 そう言えば、前にメイさんが言ってたけど、ダンジョン内限定で【鑑定】ができるって言ってたよな。


『できますよ、表示しましょうか?』

「うおっ!」

「なっ! またですか?」

「さっきから何やってんのよ!」

「……うむ」


 いや、合体ユニオン中に話しかけられるのって初めてだから、つい……

 怒られちゃったよ。バンさんのは、魔物じゃないと納得の頷きだね。そんなに戦いたいの?


 三人に謝って、探索の続きへ。

 安定した戦いを見せる三人だったので、僕は確認を続けた。


『この状態なら僕も声を出さなくてもいいのかな?』

『はい、伝わってます』


 おー! これは便利だ。


『じゃあ、さっき言ってたステータスを見せてくれる?』

『はい、これです』

「ぶほっ! げほげほ」


 自分のステータスを見て咽た。

 だって、レベルがまた一桁になってんだもん。


「今度は何ですか」

「キズナ! 邪魔するんなら付いて来なくていいわよ!」

「……」

「ごめんなさい……」


 またまた怒られたので、余計な事は慎むことにしよう。


『でも、これだけは聞いておこうかな。なんでレベルがこんなに低くなってんの? もうちょっと高いと予想してたんだけど』

『それは、私のレベルも上がったからです。現在の私を喚ぶにはレベル200分ぐらいの経験値が必要ですから』


 おぅふ、そうでしたか。逆に二階層分でそれだけの経験値がよくあったよ。


 !!!!


 今度は何とか声に出さずに済んだ。

 ホントやばかった。また怒られる所だ。

 何に驚いたかって? 職業欄が変わってるんだよ。

 『精霊師』ってなってるんだ。『スライム戦士』から昇格した?


『この職業ジョブって何でか分かる?』

『それは私と合体ユニオンしてるからです』

『え? じゃあ、【リリース】したら、また『スライム戦士』に戻るの?』

『もちろんです』


 マジ!? じゃあ、今までも合体ユニオン中は職業ジョブ名が変わってたの?


『キズナ様はスライム戦士ですから、昇格先の選択数は星の数ほどありますからね。因みに先日イダジュウと合体ユニオンしてた時は『疾風剣士』でしたよ』


 マジか……合体ユニオン中は職業ジョブが変わってるんだ。なんで教えてくれなかったの?

 あ、聞かなかったからですよねー。まさか合体ユニオンしたら職業ジョブが変わるなんて思いもしなかったもん、聞くわけないよ。

 でも、昇格先が合体ユニオンによって無数の選択肢ができるって、益々タマネギ的な剣士みたいだよね。


 スライムって名前だからもっとこう、吸収とか強奪とか、そっち系だと思ってたよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ