いとこのポン酢〔お嬢様騒動〕終章
― 終章 ―
校長先生の長いお話しが終わると、精華学園は一斉にお休みに入ります。
四十五日間の夏休みに突入です。気の早い子は、すでに終業式なんかぶっ飛ばして、タヒチやモルディブに飛んでいます。
麗子たちは、のんびりと欧州周りなので、ゆっくり終業式にも出て、成績表も自分で受け取ることになります。
「ぐはあ!やられた~。数学サイテー!」
雁子は大げさに胸をおさえてうずくまりました。
「はいはい、そこで溶けてないで次の人呼んで。」
「はう~、担任が冷たい!」
「アホやね、雁子の数学が弱いのはわかってるんやから、赤点かどうかが問題なんやよ。」
「麗子~、急に関西言葉で攻めないでよ~。」
「いま、戻し中なんやもん。これから、ウチは京言葉で通さなアカンのよ。」
「そうなん?」
「よしこさんお姉さんの命令ど…どす。えっと、初日はドイツの奈美子さんお姉さんの家に行って、ライン下りに乗るんやそうえ。」
「初日…」
「赤点さんは、補習三日やろ?ライン下りには間に合わへんね。」
「うぐ、だ、だいじょぶよ。なんとか赤点はスレスレ、クリアしたわ~。」
「そらよろしお…おした。」
「レイコぉ~、だいぶ苦労してるねえ。」
「そやし、オノデラに入るには、祇園言葉がネイティブだって言うのよ。信じられる?」
「はあ、そりゃあ大変だ。」
「八月後半には、双葉に特訓してくれるように頼んだわ。」
「へえ、この暑いのに京都に行くの?」
「しょうおへんやろ?こうなったらもう、開き直りやねー。」
「あはは、なんか訳わかんなくなってるねー。」
「はあ…」がっくり…
「あはは、レイコがしょぼくれてるなんてね。」
あやは、腰に手を当てて笑っています。
「あや~、こうなったらあんたたちも、いっしょに祇園言葉で話しなさいよ!」
「うわ~、ヤブヘビだ。麗子もわがままになったものね~。」
「あら、私わがまま言ってる?」
「いいんじゃない?わがままの言える相手が居るっていうのは。」
「そうね~、じゃあきまりね、みんなごいっしょに、おおきに~。」
「「「おおきに~。」」」
「よしよし、ほなこのセンで、みんなたのむし。」
「ちょっと!私にまでやれっていうの?」
東京生まれで東京育ちのあやは、言葉のニュアンスがまるでわかりません。
「ええやん、よしこさんおねえさんかて、板橋生まれの板橋育ちで、ネイティブな江戸弁やったのに、今ではしっかり祇園言葉ネイティブやよ。」
「はう~、よしこさんを出されると弱いのよ~、あの人は私の理想なんだもん。」
「ほな、がんばって祇園言葉を覚えるんやね。」
「はう~。」
がっくりと膝をつくあや。
みんなの心は、すでにヨーロッパに飛んでいました。
とりあえず、完結します。
次のお話は、麗子さんが旅行に行くか、就職する話です。
お読みいただいて、ありがとうございます。