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10 父の発狂したのちのスッキリした顔

 澄みきった青空が住宅街に広がっている。その中で大勢の人の群れが何列にもなって、街中へと歩いて行く。

駅へと向かうルナの父、電車は、息づまるほど満員いなって、人が詰まっていた。

駅を出ると、又、列になって他の人と一緒に歩き12階の少し古いビルに入って行った。

自分の席に着くとスグにパソコンに向かい、作業を始める、複数のキーボードの音が室内に鳴り響く

「はぁ~~。」


外はもう暗く、街の光は、輝いていた。

「先輩、何か、最近、元気なくないんじゃないんですか?」

ルナの父の会社の後輩、池田俊一が気兼ねなく聞いてきた。

「そうか?」

「そうですよ、顔色も悪いですし。」

「まぁな。」

「それじゃあ!!行きますか、最近行ってないじゃないですか!!」

そう池田が言うと、ルナの父は、重たい腰を上げ自分の座席から退いた。


「先輩それは、災難ですね。」

「そうだろう。お前もそう思うだろう。」

「でもどうして、その奥さんの息子さんが家に?」

「・・・まぁ、リストラだか何だか、されたって言ってたけどな。でも、もうそろそろ、出て行ってくれないかな・・俺もう限界だわ。」

そうルナの父が首を縦に下げて、皿にのせてある串に刺さった焼き鳥を手に取り口にほうばった。

居酒屋を出たルナの父は、すごく酔っぱらっていて後輩の池田が支えるようにして、タクシーを呼び家まで送って行った。

そして、玄関に入るとスグにルナの父は、広都の事で、怒鳴り声を上げた。

「俺の話しを聞け!!」


 ・・・・一体なに事だろうか、父が大声で叫びまくっていた。

それにしても今、何時なの?・・・・夜中の2時!?

もう勘弁してよ。「ああ眠い~~。」昨日あれから眠れなかったからな。


 リビングに行ってみると、父の顔が思いのほかスッキリしていた。

昨日あんなにも怒鳴り散らしていたのに、疲れてはいないのだろうか?多分あれだけ自分の言いたい事を言っていたから、気分的に気持ちが晴れたのだろうか?

基本。私には、大迷惑だ。

それにしても、あの男が来てからロクな事、ないな。父は突然、逆上するし、こずかいは、減るし、警察沙汰にはなるし、精神的に疲れるよ。

とうの本人を見てみるとソファーに横になり黒目が少し見えるくらいの気味の悪い半目をしてグッスリ、気持ち良く眠っていた。


 「前に来たより、良くなっていますね。」

「そうですか?」

「薬は、毎日飲んでいますか?」

「はい、私が毎日飲ませているので大丈夫です。」

「そうですか。」

精神科の担当医、八幡信明が平常な顔をしてルナの母と話していた。

そして、ルナの義理の兄は、医者の手前の椅子に座り、目と口を大きく開け無表情の顔をしてずっと一緒医者の目だけを見ていた。

「先生、息子はまともに喋ることができるのでしょうか?」

「そうですね。このまま安静に暮らしていると、少しずつまともに言葉を喋る事はできるでしょう。」

「そうですか。」

ルナの母は前に病院に来た時に医者に言った同じ言葉をもう一度言っていた。そして、それを聞くと安心したのか肩をなでおろした。


「今日の晩ご飯何にする?広都ちゃん。」

「・・・・・。」

ルナの義理の兄は、無反応でスーパーの廊下を歩いていた。そして、ショーケースの前へ立ってずっと一点だけを見つめていた。

「これが、食べたいのね。」

ルナの母はトマトのミートソースの缶詰を手に取りかごの中に入れた。

スーパーを出て左へと曲がると狭い路地に出る、そこを歩いていると商店街に着くそして、その商店街を抜けると左には、八百屋や精肉屋がある。

そこを少し過ぎると又、商店街が続いている、そして、そこを抜けると道路に着く信号のある横断歩道を渡ると住宅街に出る。

そこを歩く、ルナの母と義理の兄、夕日が沈み始めていて。

エコバックに食材をつめ自転車のカゴに入れて走っている主婦やスーツ姿のサラリーマンは袋にコンビニの弁当と飲料水を持ち少し早く歩いていていた。


 勢いよくスパゲッティーの麺をすすっている。ルナの義理の兄がミートソースの液があちらこちらに飛び散り、テーブルの上が汚れていた。

それを見ていた。ルナは中くらいの声で「汚い。」と言った。そして、

自分の母の元に行き、小さな声で、

「私、あの男と一緒にご飯食べるのイヤなんだけど。見ただけでご飯、吐きそうになるんだけど。」と

義理の兄の陰口を言っていた。それを聞いたルナの母は、

「あなた何でも、毛嫌いし過ぎなのよ。晴都ちゃんを見なさい。何も言わずに、広都ちゃんと仲良くやってるじゃない。」

「それとは、別よ、あの男、不潔じゃない風呂に入っても、髪は油ぎってるしヒゲもボサボサで気持ち悪いし。第一あの男がこの世界に存在しているってだけで、私は、イヤなの。」

「世界に存在しているだけでイヤ?根も葉もない理由ね。広都ちゃんが今どんな気持ちなのか、あなたには、分からないの?」

「分かるわけないじゃない。それじゃあね!!お母さんは、私の気持ち分かっているの!?」

そうルナが激しい口調で言うと、ルナは、自分の部屋へと向かい、ドアを勢いよく閉めた。すると、その音が家中にに鳴り響いた。そしてルナの半分も食べていないスパゲッティーだけがテーブルの上に残されていた。

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