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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第7章 闇の園 ――ダーク・サンクチュアリ――
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第24話 まぁ、ちょっとした余興だ

「セネイシアを殺す気だったのか」


 私は剣を抜きながら言う。あれだけの強い威力と明らかにセネイシアの倒れている方向を狙った斬撃。この女は、自分を守ろうとした少年を殺そうとした。


「エデン…どうし、て?」

「どうして、だと? ハハハ、そんなの決まっているだろ。お前のことが不要になったからだ!」


 もはやエデンは何の躊躇もなしに大きな声で怒鳴るかのように言う。その目からはおぞましい狂気が宿っていた。


「セネイシア閣下ッ、この女は最初から閣下を裏切るつもだったのです! ヒーラーズ軍が国際政府を滅ぼし、首都を陥落させれば、その場で首都を己の力で破壊し、あなたも殺し、恐怖で世界を支配しようとしていたんですッ!」


 ソフィアは叫ぶようにして言う。


「おいおい、お前はどこまで知ってんだ。……ってことは、第一次討伐の敗北は――」

「ええ、そうよ。私はわざと臨時政府に負けたのよ。あなたの野望を失敗させ、セネイシア閣下を守るために。……酷い裏切りは、あなたの方ね」


 ……そうだったんだ。最初からソフィアは全部気が付いていて……


「ほう、やるじゃないか、戦術士。――だが、頭で私を出し抜いても、それで勝ちにはならないぞ!」


 エデンは右手に黒い雲状のエネルギーを急速に溜める。溜めながら、ソフィアに向かって直線状に飛ぶ。あの手でソフィアを殺す気だ!

 だが、エデンがソフィアの命を奪おうとしたとき、私たちの後ろから誰かが飛び込んでくる。2人のクローン軍人だ。片方のクローンは剣で、もう片方のクローンは拳で、エデンを弾き飛ばす。


「レーリア! アーカイズ!」

「ふざけるのは、――」

「――大概にして貰おうか」


 飛び込んできたのは、剣闘士レーリアと戦闘士アーカイズだった。七衛士の2人だ!


「……ごめんなさい、アーカイズ。あなたの弟子のルベライトは――」

「ああ、分かっている。さっき聞いた……」


 そう静かに言うアーカイズだが、その目には怒りの炎が宿っていた。彼女はルベライトを本気で自慢の弟子だと思っていたんだ。だからこそ……


「ルベライトか。私が生かしてやったんだぞ、あの愚かな劣化クローン。……生きて失う悲しみを味わせてやりたくなってな、ハハハ! まぁ、ちょっとした余興だ。許せ」

「…………!」


 こいつ、なんてヤツだ! 人の心や命をなんだと思っているんだ! 私の中で怒りが煮えたぎる。握る拳が怒りで震える。

 頭の中に、虚ろな目をしたルベライトの姿が思い浮かぶ。ベッドで寝る彼女。部下の話を、目に涙を浮かべながらしていた。――“エデン見つけたら、殺しといてください”。

 アーカイズが弓から放たれた矢のように、エデンの目の前に飛び込む。彼女の胸ぐらを掴む。その目は、もはや人を見る目じゃなかった。


「……遺言はそれでいいな?」

「ハハハ、冗談きついぞアーカイズ! お前と私が戦ったら、勝負に――」


 アーカイズはもう何も言わず、エデンを宙に放り投げる。宙に上がった彼女の身体は、地面に向かって落ちてくる。その表情は、笑みに満ちていた。

 だが、アーカイズが、右腕に黒い雲状のエネルギーを纏わせたとき、彼女の表情は一変する。余裕が消える。


「お前、ラグナロクの力が使えるのかッ!?」


 エデンは慌ててシールドを張ろうとする。だが、もう遅すぎた。全てを破壊するラグナロク魔法を纏わせた拳は、上から下へ、彼女の腹部を勢いよく突く。

 狂気のクローンは、コンクリートの地面に叩き付けられる。その途端、地響きが鳴り、地面が揺れる。エデンの叩き付けられた場所が大きくへこみ、周囲には大きなヒビが何本も入る。

 勢いよく叩き付けられた反動で、エデンの身体は宙に再び上がり、何度も地面を転がる。彼女の口から、真っ赤な血が飛び散る。


「アーカイズ貴様ぁッ!」


 だが、あれほどの攻撃を喰らいながら、エデンは素早く立ち上がる。両手にラグナロク魔法を纏い、それをアーカイズに向かって撃つ。黒い塊が飛んでくる。破壊弾だ。

 戦闘士は両腕にラグナロク魔法を纏い、飛んでくる破壊弾を相殺していく。だが、1発、腹部に喰らい、私たちのすぐ側にまで弾き飛ばされる。


「アーカイズ!」

「クッ……! あの女を殺すまで、死ねるかッ!」


 強力な威力を誇る破壊弾を喰らうも、アーカイズは起き上がる。平気なワケじゃない。あんな強力な魔法、一発当たるだけで致命傷を負うことだってある。


「エデンっ…… なんで、なんで、僕をっ……」 

「セネイシア閣下、アイツは最初からあなたを騙していたのですっ……!」


 ソフィアがセネイシアを抱き締めながら言う。少年の目には、裏切られた絶望が広がっていた。私が彼を追い詰めたときも、そんな目は全くしていなかった。信頼する仲間を守るために死んでもいい。そう強く思っていたからだ。

 ……その一番の仲間に、セネイシアは裏切られた。ことあろうか、あの女は最初から彼を仲間とさえ思っていなかった。都合のいい、使い捨て道具でしかなかった。


「……許さない」

「あんなの、親衛士でもなんでもない!」

「ただの狂ったクローンだ!」

「私が殺してやる!」

「いや、私だ!」


 周りで様子を見ていた1000人近いクローン兵士たちが、一斉にエデンに向かっていく。凄まじいほどの殺気だ。魔法弾や銃弾が激しい雨のごとく飛ぶ。全てがエデンを狙っている。

 だが、彼女は破壊弾を次々と飛ばし、その多くを打ち消していく。それでも、全ては消せなかった。一部の攻撃はエデンの身体にまで届く。


「邪魔なゴミ共が……!」


 エデンは両腕にラグナロク魔法を纏う。その腕で、『空間』を殴る。その瞬間、空間が砕け散ったかのような強烈な衝撃波がエデンの左右で起こる。何百人ものクローン兵が薙ぎ飛ばされていく。地面が揺れ、砕け、飛ぶ――!


「お前らゴミ如きが私を殺せると思ったかッ!」


 エデンが叫んだそのとき、空から次々と白いガンシップが入ってくる。臨時政府軍のものだ。乗っているのは、元ヒーラーズ強襲部隊とヒーラーズ精鋭部隊のクローン兵士だ。更に、城壁からも両部隊の兵士たちが次々と降りてくる。


「ソフィアの野郎……!」


 暗黒城の中庭は、たちまちクローン兵で埋め尽くされていく。その全てがエデンの命を狙っている。彼女に対する怒りが、一帯を覆っていた.


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