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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第6章 黒の魔 ――ジェネラル・シップ前頭甲板――
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第19話 みなさん、気を付けてください……

 【ジェネラル・シップ 前頭甲板 最高司令室】


 大きな扉が左右に開く。私たちはジェネラル・シップの前頭甲板へと到達した。この大型飛空艇の最高司令室だ。

 司令艦を高度に改造した将軍艦ジェネラル・シップ。最高司令室の造りは、軍艦や司令艦とは全く異なるものだった。この広い空間は、まるで王の間かと思うような感じだ。

 低い半円状の段差が連なるその上に、背の長い白色のイスがある。そこに座るのは、メイド服を着たクローン。……第三次国際政府討伐軍総司令官にしてヒーラーズ掃討部隊管理官の魔導士フェールだ。


「ようそこ……、ジェネラル・シップ前頭甲板――最高司令室へ」


 フェールが丁寧に挨拶をする。落ち着いた声に、穏やかそうな顔つきだが、何か本能的に危険なものを感じ取る。彼女は強い。戦闘士アーカイズや剣闘士レーリアに劣らぬ実力者の持ち主だ。

 私たちが黙っていると、フェールはそっと立ち上がる。


「みなさん、気を付けてください…… もう、戦いは――始まってますから」

「なにっ?」

「…………!」


 私がそう言ったときだった。後ろから勢いよくサファイアに突き飛ばされる。私の身体は前頭甲板の床を転がる。それとほぼ同時に、私のいた場所に何かが刺さる。


「いてて…… …………!」

「パトラーさん……!」


 私のいた場所には、大きな食事用ナイフが突き刺さっていた。上から降ってきた刺さり方だ。……私の頭を狙って――


「フフ、また会ったな」

「ジャスパー!」


 ヒーラーズ掃討部隊一般幹部のジャスパーだ! そうだ、彼女は大きなナイフやフォークを作り出し、それを武器に戦うクローン軍人だ。

 気が付けば、フェールは目を閉じたまま、宙に浮かんでいる。ま、まさか、ゾイサイトのように私の姿をコピーするんじゃ……


「いえ、“あのコピー技はゾイサイト特有の技です”…… 安心してください」

「な、なんだ、よかっ――?」


 今、私、声に出して話したっけ?


「貴女の心は、私の前では裸も同然です。私は人の心を読めますから……」


 フェールは私の疑問に答えるように、言葉を発す。確かに間違いなさそうだ。それにしても、ゾイサイトといい、フェールといい、ヒーラーズ精鋭部隊の幹部は特殊魔法さえも使ってくるのか……


「クッ、なんて野郎だ!」

「ナイフやフォークを次々と……」


 ルビーとクラスタの声だ。そっちを見れば、2人はジャスパーと戦っていた。辺りには槍のような食事用ナイフが何本も突き刺さっている。あっちも心配だけど、こっちも大変だ。なにしろ、フェールは上級幹部(七衛士)だ。

 サファイアが素早く青色の弓を引き、勢いよく半透明状をした紫色の矢を飛ばす。空気を切り裂きながら、矢はフェールの心臓を目がけて飛ぶ。彼女はまだ目を閉じている。行けるかっ!?


「サファイアさん、酷いです」


 一言、呟くと、フェールは手を上げる。その途端、白色をした魔法弾――衝撃弾が飛ぶ。衝撃弾は矢を木端微塵に砕く。矢も威力は強かった。だが、あの衝撃弾もすごい威力だ。


「私の魔法をお褒め頂き、ありがとうございます。パトラーさん……」

「クッ……!」


 フェールは目を開ける。私は強力な魔法シールドを張る。何かしてくる、というのが直感で分かった。それに、彼女は魔導士。魔法攻撃がメインのハズだ。


「いい判断です……」

「私の判断をお褒め頂き、ありがとうございます。フェールさん」

「…………」


 今のはマズかったか?

 フェールは、白く美しい両腕をそっと動かす。まるで何かを操るかのように、変な動きをする。まさか、ナイフでも……


「“プレゼント・衝撃弾”。私はこの技をそう名付けましょう……」

「…………!?」


 フェールの目の前から何発もの衝撃弾が飛ぶ。私を目がけて、次々と迫ってくる。1発目が、剣を盾に、防御態勢に入った私に着弾する。途端、凄まじい衝撃波が私を襲う。私の身体は床を転がる。強力な魔法シールドを張っているのに……!


「フェールっ! 私がいるよ!」

「サファイアさん……」


 サファイアが弓を限界まで引く。3本の矢がセットされている。


「私はこれを“プレゼント・アロー”って名付ける」

「…………」


 私は飛んできた強烈な衝撃弾の痛みに耐えながら、サファイアの攻撃を見守る。彼女が手を放す。その途端、3本以上の大量の矢が雨のごとく宙に飛ぶ。矢が飛ぶ瞬間、次の矢が作られ、飛ばされるらしい。


「…………!?」


 今までずっと冷静だったフェールの表情が変わる。おびただしい矢が彼女を襲う。だが、フェールは魔導士。すぐに物理シールドを張り、多くの矢を防いでいく。

 私は身体がバラバラになりそうな痛みを覚えながら、必死に立ち上がる。ハンド・グローブに内臓された魔法発生装置を使い、フェールの元に向かって走る。走りながら、電撃を溜める。


「はぁッ、はぁッ……! く、喰らえっ!」


 私は電気の槍を飛ばす。それは、フェールの背から胸を貫く。雨のような矢と傷に気を取られていた魔導士は、私の動きに気が付かなった。何の防御もなしに、攻撃を完全に喰らう。

 フェールは浮力を失い、空中からたくさんの矢が散らばる床へと、血を吐きながら倒れる。幸いなことに、彼女が倒れる直前に、矢の雨は止まっていた。


「パ、パトラー……」

「クラスタっ!」


 クラスタが近づいてくる。その後ろではジャスパーが倒れていた。でも、クラスタも重傷だった。脇腹をナイフで斬られたのか、たくさんの血が流れていた。ルビーも似たような状況だった。


「み、みなさんっ……!」

「…………!」


 ルベライトがたくさんの部下とともに最高司令室に入ってくる。ちょっとタイミングがまずいかも。あちこちに飛び散った血を見ながら、私はそう思った。


「ルベライト、すまない。これは……」

「あそこを見てください!」

「…………?」


 私はフラフラになりながら、ルベライトが指さす方向に視線を向ける。


「なッ……!?」


 ジェネラル・シップの最高司令席。さっきまでフェールが座っていた場所だ。そこに、フェールやジャスパー以外のクローンが座っていた。


「フフフ……」

「な、なんであんたがここに――!」


 白いイスに座るクローン軍人は不敵に笑う。……あの経済都市エコノミアシティでも会った。戦闘士アーカイズや剣闘士レーリア、魔導士フェールら七衛士の筆頭である――


「――親衛士エデンっ……!」

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