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黒い夢と白い夢Ⅵ ――漆黒の楽園――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 黒の戦 ――ウォルタミア防衛師団本部要塞――
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第11話 残ったのは私とハンターZ型だけか

「クリア、お前“も”セネイシア閣下を裏切るのか」


 スギライトとタンザナイトに武器を突き付けられ、圧倒的不利な状況にあるアーカイズは、怯むことなくクリアを睨みながら話す。

 お前も、と言っているところを見ると、ソフィアも裏切り者とされているのだろう(実際そうなんだろうケド)。


「ふふんっ、ソフィアお姉ちゃんの指令だもん!」

「ソフィア…… あの裏切り者の、か」


 ……クリアはソフィアを慕っているらしい。セネイシアよりも、ソフィアの方に忠誠心を抱いている程らしい。ソフィアの裏切り。それが上級幹部クリアの裏切りを引き起こしたのか。そして、芋づる式にクリアの部下ヘキギョクとスギライトの裏切りも起こった。


「だが、この人数で私を含めるクローン軍と戦うのか? 無謀だな。やはり、ソフィアも焼きが回ったか」

「そうかなっ?」

「なんだと?」


 クリアは笑みを浮かべながら、さっきよりも愉快そうに話し始める。


「ここにいないけど、ヒーラーズ駆逐部隊の指揮官ギョクズイお姉ちゃん。ソフィアお姉ちゃんの弟子なんだよね」

「…………!」

「ヒーラーズ掃討部隊の指揮官カルセドニーお姉ちゃんも、ソフィアお姉ちゃんの弟子。2人とも、ソフィアお姉ちゃんのことが大好きなんだって!」

「なにッ……!」


 アーカイズから冷静さが消えていく。下唇を噛み締め、拳を握りしめる。身体が震えている。焦りと怒りからだろうか。まぁ、当然だろう。

 ヒーラーズ駆逐部隊3幹部――。指揮官のギョクズイ、護衛官のヘキギョクとスギライト。ヒーラーズ掃討部隊3幹部――。指揮官のカルセドニー、護衛官のジャスパーとタンザナイト。両部隊の一般幹部全員が裏切り、駆逐部隊管理官のクリアさえも裏切っている。これでは、兵士たちもクリアに従うだろう。


「残ったのは私とハンターZ型だけか」

「うん、その通りっ!」


 クリアの声に、アーカイズは青筋を立てる。内心、計画の崩壊と裏切りに怒り狂っているのだろう。それか、焦りか。

 最高司令室の奥にある扉が開き、巨体の生物兵器が出てくる。ハンターZ型だ。3メートル近い身体だ。クローン兵士を遺伝子改良し、造られた生物兵器……


「せめて、ここにいる全員の命は奪っておいた方がよさそうだな」

「セネイシアへのお許しが得られないもんね」

「…………ッ!」


 アーカイズは今にもクリアに飛び掛かりそうだ。スギライトとタンザナイトがいなかったら、間違いなく殺しにかかっていただろう。


[……クラスタ=セルヴィタス、パトラー=オイジュスを発見。始末する]

「いや、クリアもだ……」


 アーカイズが諦めたかのような声で言う。ハンターZ型の中では、まだクリアは味方とプログラムされているんだ。そして、そのプログラムは急には変えられないらしい。

 だが、それはそれで問題だ。ハンターZ型は私たちしか狙わない。アーカイズのせいで、重傷を負った私と、クラスタであの怪物を倒さないといけない。


「……ジャスパー、スギライトとタンザナイトと交代して」

「了解。クリア」


 巨大な食事用ナイフを持ったメイド服のクローンが、アーカイズに刃を向ける。代わりにスギライトとタンザナイトが出てくる。


「給仕(=ジャスパーのこと)、お前も裏切るのか? “給仕長”が悲しむぞ」

「フェール閣下をバカにしないで貰いたいな」


 魔導士フェール…… 上級幹部の1人だ。以前会ったときには、メイド服を着ていた。ジャスパーもメイド服を着ている。何か関係があるんだろうか?

 そのとき、何かを斬る音が上がる。見れば、スギライトが刀でハンターZ型を正面から斜めに大きく斬っていた。血が飛ぶ。さらに、数本のナイフを手にしたタンザナイトもハンターZ型を攻撃している。2人とも、かなりの実力者だ。素早い動きで何度も強力な攻撃を続ける。


「アーカイズっ、君のお迎えが来たよ!」

「は?」


 アーカイズは窓に目をやる。ヒーラーズ軍の上陸艦が近くに着陸しているところだった。さらに、空には軍艦が5隻も見える。


「ソフィアお姉ちゃんが、アルマンディンお姉ちゃんとカイヤナイトお姉ちゃんと一緒に、ウォルタミアまで来たんだって」

「あの裏切り者共が……!」


 アーカイズは窓の外にある軍艦を睨みつけながら言う。アルマンディンとカイヤナイトはエコノミアシティで降伏した一般幹部だ。彼女たちもソフィアの弟子らしい。

 一方、ハンターZ型はクラスタを追い詰めていた。彼女はすでに何度か攻撃を受け、シールドを張っているのにも関わらず、傷だらけになっていた。


 ハンターZ型は狂戦士の地位を持つ上級幹部。クラスタ、スギライト、タンザナイトの3人があれだけ激しく攻撃をしているのに、まだ生きているのは、さすがとしか言いようがない。

 だが、その頑丈な身体にも限界がある。あれでも生き物だ。無敵ではない。幾たびに渡る攻撃で、狂戦士の身体はボロボロになっていた。クラスタの胸ぐらを掴み、持ち上げるも、身体はフラフラとしていた。


 スギライトが血まみれの刀を手に、素早く走る。タンザナイトがナイフを手に、飛び上がる。2人はほぼ同時に攻撃する。刀がハンターZ型の左肩から右脇腹にかけて振り下ろされる。2本のナイフが右と左の首筋を貫く。

 クラスタを持ち上げていた手から力が失われ、彼女は床に落ちる。それと同時に、預けていた私の剣を手に、ハンターZ型を大きく斬りつける。


[…………!]


 ハンターZ型はダメージの限界を超えたようだった。その巨体は、フラフラと倒れる。地響きが最高司令室に鳴り響く。……七衛士の一角を担う狂戦士の最期だった。

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