月明かりの下で2
「あっ、申し訳ありません。」
アルファとの会話が終わったココティアーナは慌てて、トワズロードに返事をする。
「うん。それはいいんだけど、どうかしたの?ボーッとしてたみたいだったから。」
やはり心の中でアルファと会話していると、周りからはそう見えるようだ。
家族からもたまに言われてたし。
気をつけてるんだけど、何故かトワ様の前だと気が緩んでしまう。
実際、“わたくし”と“わたし”の使い分けにも注意してるつもりなんだけどな。
「実は私も妖精王と会話が出来るんです。それで今、話しかけられて…、アルファっていう名前なんですけど、アルファも同じことを言ってました。精霊とは同じ自然界の力を司るのだと。」
「そうだったんだ。
……なんか嬉しいな。」
ぽつりと呟くトワズロードにココティアーナは首を傾げると、
「ココと共通するところがあってさ。2人だけの秘密だね。」
微笑みながら言った彼の言葉にドキッと胸が高鳴ると、
「……もう、こんな時間だから僕は戻るね。」
「あっ…、そうですね…。」
時計を見たトワズロードは立ち上がり、スッと手を差し伸べる。
「……っ」
どきりと戸惑ったココティアーナだったが、すぐに彼の手に触れ、寝台に向かう。
「ココと話せてよかった。ありがとう。」
「私もトワ様とお話しできて、嬉しかったです。」
そう頬を緩めるココティアーナ。
すると、トワズロードは顔を近付け、そっと彼女の額にキスを落とした。
「っ!!」
「ふふっ、実は初めて会った時からずっと、そのくるんとした前髪が可愛いなって思ってたんだ。」
ーー近くで見たら、もっと好きになった。
呆然とするココティアーナを他所にトワズロードはそう言い残したまま翻し、ベランダへ向かおうとしたら、
「……ココ?」
彼女はトワズロードの夜着を握り、引き留めたのだ。
………やだ。行かないで…、
りんごのように顔を真っ赤にしたココティアーナは恥ずかしいのか目を潤ませ、
「あ、あの、まだ一緒にいたいです。」
「……。」
「だめですか…?」
「ううん…、そんなことないよ。
ーーねぇ、ココ。」
そう呼びかけるとトワズロードはココティアーナの手を夜着から離して、自分の手と繋いだ。
そしてーー、
「僕、ココのことが好きだよ。」
「っ、」
「飾らずにいてくれるココが好き。僕のことを守ろうとしたココを僕が守りたいんだ。」
ぎゅっと繋いだ手を力強く握り締める。それが誓いのように感じた。
まさか告白されるとは思いもよらなかったココティアーナ。
しかし、彼女もトワズロードと話す度に、笑顔を見せてくれる度に、胸の高鳴りが止まらない。
極め付けは、コンプレックスの前髪を好きだと言ってくれた。
優しく下がった目尻に偽りのない声色。
ふと、支度を手伝ってくれたメイドの言葉が頭によぎったーー、
“きっと、その愛らしいココティアーナ様を好きだと言って下さる方が現れますわ。”
「わ、わたしもトワ様のことが好きです。」
「……ほんとう?うれしい。」
顔を赤くし、そう紡ぐココティアーナを抱き寄せた。
「トワさま、」
「僕のお姫さまになって?」
「っ、」
ま、またそんな恥ずかしいセリフを!
ーーーん?それってつまり……、
「それは婚約者にってことですか?」
「うん。そうだよ。」
「……国王さまは許していただけるのでしょうか…。」
だって、トワ様は隣国の王子様。そんな簡単な話ではない。ルピシル国だって関わってくるわけだし、お父さま達にもなんて言われるかーー、
「多分大丈夫だよ。父上もココのこと気に入ってるみたいだし。フォース家は公爵家だからね。」
「そうなのですか?」
「うん。その話は明日また話そうね。」
ココが寝るまで居てあげる。
そう言って、トワズロードはココティアーナをベッドに寝かせる。少し前まで横になってたけれど、熱は完全に抜け、シーツはひんやりとしていた。
「トワ様は寒くないですか?」
「平気だけど……、僕も入っていいの?」
「えっ!あ、えっと…、トワさまがよろしければ…」
こくん、と小さく頷くココティアーナ。
目を逸らす彼女にクスッと笑うと、トワズロードもベッドに潜り込んだ。
2人が寝転んでも十分に余裕があるベッド。
大きな枕は何個か置いてあるけど、1つの枕を2人で使っていた。
「……トワ様が入ったら温かくなってきました。」
「ん?ココ寒いの?」
すると、ぎゅっと彼女を抱き締めたトワズロード。
「と、とわさまっ!」
「ほら寝るよ。明日は一緒に朝食を食べようね。」
「本当ですか?一緒に食べたいです!」
目を輝かせるココティアーナの頭を撫でてあげ、
「おやすみ。ココ。」
「おやすみなさい。トワ様。」
そう言って、目を瞑った彼女はあっという間に眠りについた。
ーーー…可愛い。
と思いながら、くるんとした前髪を触り、そっと額に口付けをすると淡い光が現れる。
ーーーうん。僕も出来そうかも。
そう満足げな表情をしたトワズロードも目を閉じたのだった。
ココティアーナは自分が寝たらトワ様は自室に戻るのだろう。と思っているが、当の本人は帰る気など全くなく、そのまま眠りについた。
ある意味の既成事実を作ってしまった方が噂が広まり、手っ取り早いだろうな。と考えたトワズロード。
そして翌朝、王太子が部屋にいない事に騒ぎ出す人々とココティアーナの部屋に王太子が彼女と仲良く寝ている姿を見た人々が黄色い悲鳴を上げ、彼の予想通り、2人の婚約はトントン拍子に決定するのであった。
次回はココティアーナ15歳。学園編のお話。
また、暫く執筆をさせていただきます。
……あ。トワ様もがっつり登場しますので。
あと、別のお話ですが、短編も作成中です。
何処かで見かけましたら、よろしくお願いします。




