第31話 俺の生きる道 その1
カルデロウ・ドラグニカ
旧姓、加藤太郎
彼は日本の首都、東京の
極一般的な家庭に産まれた
そう、不自由もない人生を、送って来た彼であったが
若くして、癌により病死
その最後の一年ほどは、まさしく
地獄の苦しみだったという
だが、そんな彼を待ち受けていたのは
死後の天国でもなく、地獄でもなく
この異世界への、片道切符であった
そこからは王道
比類なき能力を手に入れ、勇者と厚遇される生活
その名を各地に轟かせ、順風満帆な生活を過ごしていた
その彼をある日、この戦いへと導く使者
女神が、やって来たのだ
ある条件をクリアするだけで
今以上の、さらなる力を手に入れられるという
既に力というものに魅了されていた、この男
安易にこの誘いを受け入れたのだった
だがそこに居たのは……そこに、あったものは
自由
全てを自由に生きる、柳犁の姿であった
自らには存在しない、圧倒的な輝き
それを加藤は、柳犁から感じ取っていたのだ
それだけで、憧れぬ筈もない
自分には無いものを、柳犁は
その悉くを持っているのだ
その時から、太郎は
自分自身が、不自由で仕方ないものと感じた
できうるならば、彼のように
柳犁のように、俺も生きてみたい
それが俺の、生きるべき道となるのだから!
それならよぉ、こりゃチャンスなんじゃあねぇか?
その柳犁が、この先に……一人で行ってるんだ
この、扉のすぐ先に!
例えここへと侵入しよう、って奴が現れたのなら
そいつからこの扉ぁ、守れんのは
俺しかいねぇんじゃねぇか!
「来いよ!女神の犬の天使がぁ!
こっちはテメェ等程、不自由に生きちゃいねぇんだ
それを!邪魔しようっつーならよぉ
俺がそんなマネ……絶対にさせやしねぇ!」
「シシシシシシシシシシ!!!!????
なーんだ、血気盛んなひとだシなー
誰も戦う、だなんて言ってませんよ?」
何をほざいてやがる……
このタイミング、喧嘩してる最中によぉ
敵に塩を送るような野郎を
タダで返すわけにゃあ、いかんでしょうが!
用者、その間数十メートル
既に、加藤太郎にとっては十分射程圏内!
今すぐにでも、相手を消し炭に出来る距離
だが警戒は怠らない!
太郎の能力は、女神を介して相手に知られている
それに対し、太郎は相手の情報が皆無!
更には、太郎の本能が訴えかける!
この距離感でも、相手を一撃では仕留めきれないと
それだけの力を持った相手だと!
……妙だな
チンチクリンで、変な顔して……猫背で
どう見たって強そうになんて見えない、野郎が
酷く……隙のねぇ様に見える
なんつーか、どっからどう打ち込んでもよぉ
全部、対処されちまうんじゃねぇかって
そーゆう、恐怖心が……
ええい!それがどうした
どの道、俺の能力は相手に当てない限り
決して勝ち目がない!だったら……
無理だろうがなんだろうが
ぶち当てる、のみ!
ここで太郎、動く
「死竜咆哮ォォォォ!!!!」
開幕の咆哮!
この一撃が止められようとも関係ない
なんか臆するのがかったるいので
取り敢えず打ち込んどいた
「……っが」
しかし、この一撃もまた
容易に躱せるものではない!
<<ズガァァァァァァァン!!!>>
「………………」
予想に反し、太郎の一撃は
がっつり直撃した
「おいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!
当たったぞ!おもくそ直撃したぞ!
いや、これいいな……不意打ち
割と、高確率で当たるんじゃねぇか?
俺の作戦勝ち、ってことなんじゃねぇか」
柳犁をリスペクトして、本能で動いてはみたが
何これ楽勝やん、そりゃ柳犁もこーするわなぁ
だってこれ、何も考えずに勝てるんだもん
こっから先の展開だって、考えずに済むんだも……
「ちょ……いきなり何してんの」
前言撤回
生きてました、仕留め切れてませんでした
相手、起き上がって来て悠長にしてまーす
つか標準語になってね?
なんか普通に喋ってね、相手
「しまった語尾が、シー
キャラが崩壊しかけちまったんだ、シー」
あ、作ってたんだ
キャラ作ってたんだ
なーにー、あの小悪党っぽいキャラ
キャラ気取るとか、そうゆう次元じゃないシー
もっと語尾に芸術打ち込むとかさー
それぐらいインパクトないと
「えー、ゴホンゴホン
それでだー、カルデロウくん
ちょっと大事な話あるんだけど、聞いてくれない?」
相変わらず標準語なんですが……
まぁいいや、それより
大事な話……ってなんだよ
「ああ、話聞いてくれるだけでいいから
しばらく、攻撃しないでくれるだけでいいから
女神様がねー、どうしても伝えてくれだって
伝言役も楽じゃないのよ、ね?ね?」
割と必死こいてるわな
うーん、開幕?
初っ端から飛ばしすぎたし
少しはいいかな
「……黙ってくれた?
聞いてくれるかな?OK」
OK
「答えはないか……当然
じゃ、話始めるよ」
御託はいい、とっととしてくれ
「カルデロウ・ドラグニカ
君は再び、我々と共に闘う気はないかね?」
「ないです」
即答
あんな連中に、二度と付き従うわきゃねーでしょう
よってこの話はキャンセル、もういい?
も一発ぶっ放しちゃっていい?
もうそこのアンタ、消し済みにしちゃっていい?
と、直ぐ様にも殲滅を実行しようと
魔力放出の構えを取る、加藤太郎
「ちょ!分かったから
辞めて、その構え辞めてね
まぁーたくもう、これだから
無理だっ言ったんに、来させるんだからなー
めんどくせぇ、いっそのこと俺も……
なぁ、一緒に女神倒さね?」
「ふざけんな
あんだけ女神様好き好き言ってた連中が
そう易々と寝返るだぁ?
誰がそんな言葉、信じるってんだよ」
ハァリナとか
「無理かぁー……
やっぱ、かったリィなぁー
オメェら……
そんで、仕事しないって訳にもいかねぇし
一応、やっとくかぁ?タイマン」
「そのつもりだけどな、こっちは等に
そうでもなきゃあ、出会い頭にあんなの
打ち込むもんかねぇ」
ようやくだ
俺と相手さん、二人が面と向かってから
もう大分たったもんだ
割と俺、常に前線で戦ってたから
こうゆったりした戦い……どうにも慣れないねぇ
柳犁程苛烈なのもあれだが……
平均的には、俺も案外好戦的なもんでねぇ
「いくぜ、お前相手なら
敗北の苦渋も、飲まされそうにないしね」
勝てる戦いなら……俺の本望よ
「死竜災害」
<<ガシャガルゥゥゥウワアアァァァァ!!!!!!!>>
暴風の天災害!
コイツはなぁ、名にも恥じず
その周囲の天候すらも変える、本物の災害さぁ
本来マトモに喰らえば、生きちゃいれねぇこの技
(柳犁を除く)
とくと味わいなぁ……
「シッシッシー、それしかねぇか
やってやるよぉ、そんならよぉ」
先ずは第一陣、爆砕のオンパレード!
竜型のエネルギーがよぉ、所構わず
うねり、そして破壊する!
この超範囲の攻撃は……そう簡単に
うち敗れるものじゃあねぇぜ
「カッティング……プライド」
<ジャギッ>
「……っへぇ?」
へ……何これ
俺の……死竜災害が、一瞬で
真っ二つにされちまったじゃあねぇか!!
呆然ともする!
絶対に相手を仕留めるという、自身を持った自らの攻撃を
軽く掻き消されたのだ!
それどころか
その2つに分断された、自らのエネルギーが
自分へと、確かに向かって
降り注いで来るではないか!
ありえねぇ……あの威力だぞ!
人なんざ軽く消し飛ばしちまう、威力のよお
あの攻撃が、跳ね返されたとでも言うのかー!
俺の攻撃が、まるで……
剥がれかけのジップみてぇによ
ベロンって
こっちに向かって来るじゃねえか!
「シッシッシシシ、悪いねぇ
俺の能力と、アンタの能力じゃあ
相性が最悪、なんだよねぇ」
てことでとっとと
やられちまいな!
次回へ続く
次回 俺の生きる道 その2




