第3話 グミ
振り返った黒づくめの前に立ちはだかる、両手をポケットに突っ込み前かがみ、汚泥ような舐め回す視線でのそりのそりと歩み寄り、
「誰だぁ?誰だっていいだろ、ボンクラ!!」
男はそう叫ぶとキャシーの口を塞いでいた男の顔面に右脚のきつい一撃をお見舞いした。
まさかそんな距離まで近づいていたとは思いもよらなかった男へ撃ち抜くように放たれた一撃でキャシーの口から手を離し吹っ飛んだ。
「せんせぇー!!」
口が自由になったキャシーが叫ぶ。
そう、助けに来たのはマイケル高橋その人であった。
「花は触れずに眺めているから美しい。そうだろ?」
そう言うと、残った黒づくめに向かって高橋は構えをとった。右手、右足を前に出すスタイル。
(コイツ シロウトネ)
あまり見かけない構え方に黒づくめは油断をしたのだろう。キャシーの脇腹から手を離しマイケルと相対した。
「ミナカッタコト二スル カシコイネ。イマナラ オマエ ユルシテヤルデスヨ」
よほど腕に自信があるのだろう。しかし高橋は引かない。
「おまえが何を言おうと俺はお前らをゆるさん!!」
言い終わった瞬間、黒づくめは右を振りかぶった。そのまま高橋の顔面めがけて拳を打ち込もうとするが、それは届かなかった。
最短距離で高橋の右ストレートが顔面にめり込んでいたからだ。
そのまま静かに黒づくめは崩れ落ちた。
「花に手をかけるとこうなる。と言う話さ」
「せんへぇーぶひぇーん!!」
安心からか、涙と鼻水で顔がとんでもないことになりながらキャシーが走り寄る。
「もう安心だ。家まで送っていこう。」
「ぶひぇーありがとーございますぶぅー。
「で、でも、・・・」
キャシーはふと浮かんだ疑問をぶつけてみた。
「なんで先生はこんな人気のない夜道にいたの??」
「ほ、ほらあれだよ俺世間体気にするからさ、たまたま歩いてたらキャシーが連れて行かれそうで!無視しても良かったんだけどそうするとPTAとかうるさいじゃん?」
イマイチ答えになっていないが助かった安堵の方が大きいキャシーはその狼狽を気にもとめず
「先生、本当にありがとう!はい、グミあげる!」
「キャシー、前からおまえがクラスで配ってるそれを見て思ってたんだが、それはタピオカだ」
あはははは
うふふふふ
生徒と、先生としての絆が生まれた夜であった。




