決意
貴以が消えた後、お兄ちゃんは徐に口を開いた。
「母さんに真実を伝えるべきなのかそうじゃないのか、有咲はどう思う?」
急にお兄ちゃんは私にどうするかを聞き始めた。
正直戸惑った。だって、母さんはもうすぐ現実だと死んでしまう。
そんな人に真実を伝えるのは精神的にきついのではないか、そう思って考え込んでしまった。
「急には答えだせないよな。俺だって、辛いさ。
母さんや父さんが死ぬ、自殺しますなんて、実の親に向かっていうことじゃないからな。たぶん、張り倒される覚悟で行かなきゃいけないかもな。でも、言い方悪いけど、すごろくみたいに考えてみたらどうだ?」
「…すごろく?」
何故急にそんなことを言い出すのか、お兄ちゃんの考えていることが分からなかった。
「実際に起きるべきことは起きてもらわなきゃ、俺たちがこの世界に取り込まれてしまう。
でも、起きるはずのない出来事が起きないように俺たちは気を付けることができる。つまり、一回休みとかをしないように二人で協力しよう。
もちろん、母さんや父さんの死を経験しなくちゃいけないから、精神的にも身体的にも病んでしまうこともあるかもしれない。
でも、それが現実であり真実だから。
それだけ絶対に捻じ曲げちゃ、いけない。有咲、お前なら分かるよな?」
「分かる、あの時はお兄ちゃんもきっと、きっと辛かったはず。
それをもう一度繰り返さなきゃいけないのは嫌だけど、ずっとお母さんのいる世界も嫌。現実世界でお母さんが安らかに眠れないもん。成仏させてあげたいもん。」
「とりあえず、母さんに真実を…伝えよう。」
私たちは部屋を後にし、母さんのいる居間へ向かった。