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真実

夕食中、お母さんとくだらない話で盛り上がった。

すると、お父さんが会社から戻ってきた。

「おませさん、ただいま?」

朝の騒動をお父さんはまだ引きずっていたようだ。

しかし、私はもう水に流し、むしろ忘れていた方だった。

「おませさんじゃ、ありませんよ。夢でも見ていたみたいですよ。

ご飯はどうしますか?お風呂先に入りますか?」

お父さんは居場所がないと感じたのか、そそくさにお風呂の方へ行ってしまった。

すると、電話が鳴った。

お母さんが急いで電話をとった。

相手は類からだったようで、私に代わってほしいと言ってきたようだ。

「もしもし…」

(あ、有咲?大丈夫、さっきあんなこと言ってたからさ。

心配になって電話しちゃった。)

「私ならもう大丈夫。悪い夢でも見てただけだよ…きっと。心配かけてごめんね。明日はちゃんと部活にも出るから。おやすみ。」

とちょっと強引に電話を切った。

お母さんは、心配そうにこっちを見た。

「学校で何かあったの?後、お父さんがいる前じゃ話しにくいでしょ?今のうちに朝なんであんなことを言ったのか話してもらえないかしら?もちろん、怒っているわけじゃなくて、何か理由があったから、あんなこと言ったのでしょ?」

お母さんが一番引きずっていた。

私は分かってもらえないことは承知だが、思い切って話してみることにした。

「お母さん。今すぐに分かって、とは言わないから、私の話をよく聞いてほしいの。」

(分かったわ。話してごらん。)

「朝、私が目を覚ました時、なんで実家にいるんだろうって思ったの。私は一人暮らしをしていたし、実家には…」

(どうしたの?なんで泣いてるの?

私はあなたの話をちゃんと受け止めるから。話してごらん。)

「私の…小学校卒業式前日に…お母さんは…亡くなった。

お父さんもそれに耐えきれなくなって自殺をした。だから、実家には誰もいないはずって、だから怖かった。」

私は涙を抑えることはできなかった。

(あなたは大学生って言ったわね?)

「うん。大学生になったよ、お母さん。

見た目は小学生だけど、元いた世界では、大学生になりました。」

(ありがとう…正直言ってもらえてうれしいわ。)

「お母さんは私のこと疑わないの?」

(だって、私はあなたのお母さんよ。自分の子供疑うようなことはしないわ。)

「ありがとう。」

…ただいまー。

「あ、お兄ちゃん帰ってきた。」

お、サボり!元気そうにしてるな!

「サボりって言わないでよー」

じゃあ、サボちゃん?

「ちゃん付けしただけじゃん。」

(おかえり、凪。ご飯どうする?)

母さん。ご飯は学校の先輩先生と食べてきたから、大丈夫。

連絡できなくてごめん。

(大丈夫。とりあえず着替えてらっしゃい。)

分かった。また後でな。有咲。

お兄ちゃんは、足早に二階の自分の部屋に行ってしまった。

お母さんはうれしそうにカレーの二杯目を食べていた。

私はふと時計を見る。

お父さんがお風呂を入ってから、かれこれ30分以上だ。

普段から10分くらいしかお風呂に浸からないお父さんが30分以上、お風呂に浸かっているのはおかしい。

私はお母さんに何も言わずに、お風呂場に向かった。

「有咲、どうした?そっちは風呂場だぞ。」

二階から降りてきた、お兄ちゃんが声をかけてきた。

「お父さんのお風呂、長くないかなって、様子を見に行くだけだよ。」

「じゃあ、おれも見に行くよ。確かにいつもより随分長風呂だしな。」

お兄ちゃんも気になっていたようだ。

二人で、お風呂場の近くまで向かった。

しかし、その先の扉から物音一つしない。

二人で顔を見合わせ、扉を開けた。

お父さんは…いなかった。代わりに窓が開いていた。

私とお兄ちゃんは急いでお母さんのところへ向かった。

「お母さん、お父さんいないよ?どこ行った?」

お母さんは、ただ、そうなの?と言って、特にこちらに何も言ってこなかった。

お兄ちゃんと私は、お母さんが何故そんな不自然な態度しかとらないのか、まったく納得がいかなかった。


ヘックションッ。

外からお父さんのくしゃみが聞こえた。

「あれ?今お父さんの声しなかった?」

「したな…ウチの風呂、薪?」

お母さんは、私たちを指さして、ずっと笑っていた。

「うちはずっと薪ですよ?お兄ちゃんは違う人なの?」

そういえば、お兄ちゃんは私よりもずっと前に生まれている人間なのに、私と同じリアクションをとっていた。

家のお風呂が薪であったことにまるで気が付いていないようだった。

そう考えていると、お兄ちゃんに2階の部屋に来い、と呼び出された。

渋々お兄ちゃんの部屋に行くと、扉をピシャリと後ろから閉められた。

「お前、母さんに何か話したのか?」

(まぁ…その…)

「じゃあ、お兄ちゃんにもその話をしろ。」

(じゃあ、話すけど…まずその話し方やめてよ。

お兄ちゃんにもって、ずっとお兄ちゃんって自分のこと呼んでいるけど、正直気持ち悪いよ。)

「ずっと…って…分かったよ。俺に話をしろ…これでいいか?」

(よし、合格。お兄ちゃんは私とは異母兄弟だから、内密には血は繋がっていないけど、一人の肉親である。)

「ちょっと待て。家族なら親父も母さんもいるじゃないか!」

(お兄ちゃんが私と同じ世界に住んで、そこから来たのなら分かるんじゃないかな?私の父親と母親は既に亡くなっているっていうことに。)

「…チッ」

(私は小学生ではなく、大学生。

小6の卒業式前日に母親は亡くなり、お父さんもそれを追うように自殺している。それが私の記憶であり、真実。)

「お兄ちゃんが有咲と同じ世界から来た人間だって、なんで分かった?」

(私とお父さんの様子を見に行ったときに、薪風呂だと知っていたら、私と同じリアクションはとらないのに、同じ動作をしていた。だから、そうなんじゃないかと思って。)

「分かった、有咲、お前だけには話そう。」

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