普通じゃなかった1日 その1
その日は「今日は、転校生を紹介だー」なんていう、ノーテンキなおね先生の声で幕が開いた。
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そんな30分前からの今に、走りながら頭を抱える。器用か。
もうメチャクチャだ、何があれば命を狙われているという錯覚が現実になる?
嫌な記憶だ。あの男達の、ゴーグル越しにも見えた視線が思い出される。
こっちを人、ではなくモノ、として見てくる人の色。
ナゼ? なぜ? 何故?
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階段を駆け下りる。というより、ほぼジャンプして踊り場に落ちる。
足に足を引っ掛けて転びそうなほど、動揺が体に出ている。自分の身体機能をここまで疑ったことは始めてだ。
そんな状態で一段ずつ降りることは出来ないと判断して、廊下を走っていた勢いを殺さずにジャンプする。
水平移動だけだったのは一瞬、重力に引かれて体が落ちていく。
着地は右足で、姿勢をブラさないためだけに接地させる。ギリギリ踊り場に接地。
落下の勢いは一切吸収しない。体を地面近くまで縮めながら水平移動の勢いを使って重心を前へ。
手もついて狭い踊り場の壁に当たらないように体を制御し、左肩を滑らかに接地させて滑る。
背中で踊り場の奥側壁に当たる。
あれ、この動きのほうが精密に体使ってね? 状況判断がもうメチャクチャだな?
あと、人が上を飛んでるんだけど?
背中に衝撃をうけながら、なんか変な事考えてるな。なんて思ってみるが、でも飛んでる人は変だろ。
どういうルートを辿ったのか分からないが、謎の転校生クンは折り返す階段の真ん中、手すり兼用の横壁を蹴って踊り場方向に向かってジャンプしていた。
あぁ、確かにそこは一度で踊り場に行くよりは楽そうだなとは思うが、ちょっとその発想はなかった。
壁で飛んだ後に、踊り場の壁に蹴りを入れて水平方向の力を無理やり消している。それでも、私の破れかぶれのジャンプよりスピードが制御された移動は、余裕を着地に表してくる。
と、思えば、着地の勢いのまましゃがみ、こちらの襟元へと右手を伸ばし、容赦なく引っ張ってくる。
「―――」
声にもならない。というか、口が開かない。服が上へと引っ張られ、顎下にあてがわれたかと思えば、首すら跳ね上げる勢いで食い込んでくる。
口が開く隙間すらなく、背中の痛みが少し出てきたようなタイミングで、踊り場をスライド。
転校生の方に寄ったかと思えば、左腕をこちらの右腕下に通し、
「ヒィッ!?」
視界が急速に動く。頭が、アッパー状態から下を覗き込むようにして動き、合わせて視界も下へ急速に動く。ちょっとした浮遊感と、トランポリンかなにかで急速に跳ね上がったような感覚。
上下左右がもうよく分からないが、自分の足元方向が視界に入り、そこには先程まで居たと思う踊り場が見える。
なんだそりゃ? と思うのと同時に、体が落下する感覚。まるで横になってトランポリンに落ちていくようなソレ。これ、プールに同じ様な体勢で落ちると痛いんだよなぁ。
空中を横に、寝ながらスライドしている時にする思考じゃない。
でも、この体勢は多分、右腕に感じる転校生クンのせいだろう。急な移動だったせいか、肩が痛いし。
あー、分からん、どうなってんのコレ!
◆
世界の速度に、ついていけない! とか思ってると教室に入っていた。
人は居ない。ものけのから。いや、ソレで良かった。
教室に入る時、転校生クンがドアを蹴破って中に入ったのだから。吹っ飛んだドアは教壇や机、イスを巻き込んで窓に衝突している。いや、もんの凄い音だった。多分。情報が整理しきれていないし、物理的に目が回っているので外界の情報を精査しきらない。というか、背中と肩が痛い。
痛みに耐えかねて背中を丸める最中、足先を何かが通り過ぎていく。
ビックリして足を引いた端から、ランダムに眼の前の床が傷付いていく。
足元しか視界に入らなくて
「はい、邪魔」
「グェ」
今度は声出た。ヒキガエルみたいだったが。
襟元を掴まれて後ろに引っ張られる。遠慮のない後ろへの力に、机とイスを巻き込みながら後転する。
喉を圧迫されたため咳き込むが、咳の音が脳の中にすら響かない。
もう、耳は麻痺してしまったんだろう。
多分そうなんだろうな、テレビや動画なんかよりも迫力のある銃声に、全部かき消されていくのだから。
命狙われチャン:可哀想な人ですね。
謎の転校生クン:誰だ、誰だ、誰だ。
ノーテンキなおね先生:ノーテンキなお姉ちゃん先生。別に教室の誰とも血縁関係が有るわけじゃない。頼りになる姉御系女子、良いよね。




