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黄昏のオダマキ  作者: ないある
陋能転国編
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1話【黄昏】

目が覚めた時私は倒れていた。土により身体が汚れている。土に肌や服が汚れ大変不愉快だ。

体を捩る。長い間使われていなかったようで動かすにも感覚が遠い。

目元の砂と土を手で何度も払うとようやく私は目を開いた。日が落ち始めて薄くなった光が目を照らす。


目の前に…異形がいた。

 

目も口もないのに私を見ているのが分かる。白と黒で2極化された枝のような頭。その中心に青い炎が灯り左右に赤い炎が燃えている。

それがしゃがみ私を覗き込みじっと動かない。私は声が出ない。

誰だ。なぜ私は此処にいる?貴方は何者なのか。

それを問いただす為の口が震える。恐怖というより…長い間使われなかった筋肉が硬直したような不快感だ。


異形は手の中にある小さな生き物を私の手を掴み無理やり握らせた。

ずっと耳をぺったんこにして威嚇…やんのかステップしてるほのかに赤いピンクか薄い紫に近い小さな猫。尻尾に包帯が巻かれている。


「此方の猫の名前は『バグシィ』です」

そう言い私に手渡した。猫を唐突に渡されるとは何事だ。

「私に世話をしろというのですか…?」

ようやく動き出した喉でそう尋ねてみると異形はその燃えた木のような頭を縦に揺らした。


「はい。いずれ役立つ日が訪れます」


ぬろっ、


長軀の異形頭が立ち上がる。空間と空間の間からくぐり抜けたみたいな空間の違和感を作り上げ。2メートルもある長い体を器用に動かし姿を消した。


「………」

私は人間という種族や土地の名前はわかるのに自分のことだけ思い出せない。作為的なものまで感じてしまう。手の中の温かい小さな命はまだ威嚇のポーズをしている。もしかしたらデフォルトでこの姿勢なのか?


「おぉい!…大丈夫ですかー!?」


この場所にそぐわない元気な男児の声。おそらく10代くらいの男の子が私に話しかけてきた。

私は身体に付着した土を払ったにしてもまだ薄ら汚れている。さぞ驚いたことだろう。


――――

全く俺の仕事はいつも外回りだ。


『午後5時を回り今日の日が落ち始めていますね。えぇと…島根の太田市で』

『あ、今日も東京では在日米軍と自衛隊員が共同で……』


レポーターが遺漏(いろう)でラジオで嬉々として今日の日本中のニュースを伝えている。


歩きながら聞き流しオミッションが発生していないかいつも通り一定のルートを歩き回る。


地震、津波、土砂崩れに噴火…世界中いたるところで災害が起こりすぎて国々が疲労してからからこれだ。

国々が孤立した。まったく良いことがない。なんだか神がもうこの世界を作り変えようと決めたみたいに。


それに加えて人間は【遺漏(いろう)】と呼ばれる特殊能力を持ちだす人が現れる。

まぁ小難しい事はどうでもいいか。


今歩いている仙台の僻地も建物が壊れて更地だ。俺自身の足音しか響かない。


「……ん?」


やたら目立つ人影がいる。猫を抱きかかえて。おかしいな。昨日見た時にはいなかった。…今日此処らに迷い込んだにしては朝の見回りで此処らへんを歩いているところは見かけなかったのに。

「おぉい!…大丈夫ですかー!?」


思わず声を張り上げ駆け寄った。

そもそもこんなところで一人でいるなんて…この人も不幸な目に合ったか。話しかける以外に選択肢はない。こういう人達を保護する施設で働いているのだから。

 

――――

 

「えっはい…大丈夫です」

目の前に現れたのは黒と黄色の髪の毛が混じった丸い太眉が特徴的な十代くらいの男。

彼は迷わず私に話しかけて来た。

 

「そうですか…あぁ、えっと…居場所とかない感じですか?俺そういう人を保護する施設に住んでいて…」 

「『あけぼのクラブ』っていうんですけど。辛いことがあってもまた日が昇るみたいに明るいことが来ますようにって意味で…夜明けの意味を込めて『あけぼの』って名付けてて」


ぎこちなくも微笑みなんとか安心させようとしてくる。お陰で私は無意識に固まっていた肩を下げられるようになった。

 

「私…記憶喪失で…自分以外のことわからなくて…それに猫押し付けられて…」

「そうだったんですね…あ、俺の名前伊賀野双(いがのそう)って言います17です!」

 

猫に時折目を向けながら彼は自己紹介をする。

 

「伊賀野さん…」

「…んー双で良いですよ!…それと…敬語なしで良いですか?」

「あ、うん…」

お互い距離を縮める為にタメ口からが良いらしい。

 

「遺漏で迫害された人や家族が死んだ人の保護施設だから居場所がないならぴったりで…。俺もそこに住んでいるんだ。だから住むなら家族ってこと!」


さらっと自身のことを語ったが…彼…双も訳ありのようだ。そもそも遺漏が何なのか私は知らない。

 

「…あ。心を読む遺漏者(いろうしゃ)はあけぼのクラブと提携している集落のアメトリンにはいないんだよね」

「…?いろう?」

「……あ、知らない感じ?…自分以外のことはわかるって筈だったけど…まぁいいや。教えるね」

「宗教とかアニメとか…多くの人の記憶にあるものが現実に漏れた。からその力を【遺漏(いろう)】手に入れた人を『遺漏者(いろうしゃ)』と呼んでいる」

「敵対的に現れた遺漏のモンスター【オミッション】と呼ばれている」

「集合的無意識から漏れた記憶…」

そんな事がありうるのだろうか。手に口を当てて考えていると双はさらに情報を追加した。 

「…まぁ、それも上が教えられたことみたいだけれど」

「…教えられた?」

「異形の頭を持つ2メートルの長身の存在がそう呼ぶようにとわざわざ政府の人に教えたらしい」

まぁこれはレポーターが暴露したんだよね。と言っているが私は異形頭の方が気になる。

「…その異形…知ってるかも」

「え?」


その瞬間

地面から巨大な異形が飛び出した。

銅の王冠をかぶり顔半分がワニ、もう半分が人の顔をしたアザラシのよう。ウミウシのような下半身に背中にワニの尻尾、背中にサンゴがついた3メートル程の生き物。


「オミッションだ…!」

双は自身の足元から電気を発し警戒しながらも先ほどの話を聞き返す。


「ねぇ!異形頭知ってるって何!?」

 

此方にヨタヨタと動いてくるオミッション。動きは速くなさそうだが先ほどの飛び出し方…体は硬いはず。


「この猫渡されたんだよ!名前はバグシィらしい!」

「そっか!ありがと!」

 双はオミッションに向き直った。

「っよしさっさとこいつ絞めるぞ!」

 双は電気を足元に流すとサーフィンのようにオミッションに向かって行く。

電気を波に見立ててサーフィンをする。これが双の遺漏というものなのか。

バグシィを少し離れた所の岩陰に下ろす。逃げる素振りが全く無い。

そのまま双の方へ視線を移す。 

…私は何ができるのだろうか。『普通』と違うことができる。普通を私はちゃんと理解している。人は電気に乗ってサーフィンできない。飛べない。そういった普通とは違うもので私が持っているもの…。


私は走り双を追いかけようと動く。いつの間にかすぐ近くにいた。


双も振り返りその普通と違うものを見て動きが硬直している。


「え?え?今結構離れてたんだけど…瞬間移動?」

「…そうとしか言えない…」

 

私自身驚いたが『早く追いつきたいと』目的地を脳裏に目的を入力したように考えた瞬間到着していた。


瞬間移動。それが私の遺漏だというのか。


「この遺漏の…最尤の使い方」

私は瞬間移動であのオミッションの体内に瞬間移動して…身体を内側から手で引き裂いた。

内側から肉や臓器、皮膚を引き裂かれオミッションは血を噴き出しながら呻き身動いだ。

 

「ぅ、ええ?手、硬くない?え?鋭いの?」

そういう使い方なのかとかなぜ引き裂けるのかと色々疑問に思いながらも双はまだオミッションに息があることを察知し行動に移った。


「まだ生きてる!後は任せろ!」


バリバリと足元の電気が一層強さを増し突進する。私の手により怪我をした部分を更に追撃した。


しかしまだ生きている。頭が割れそこから大量に分身のような殻を吐き出しぶつけようとしてくる。

私は瞬間移動で躱し双は電気で破壊していく。

殻の中は時間とともに中身が生えてくる。分身体をかつくるのかと考え私達は率先してその殻を破壊していく。

足で潰したり電気で壊したり…。

オミッションはそれを止めるようなことはしなかった。ひたすら殻を吐き続けている。その姿は何とも気色悪い。

「埒が明かない本体潰したほうが良い」

私がそう話すと双も頷き双が私の手を取りサーフィンで私を引っ張った。

私は電気に乗れない。手を離したら電気に巻き込まれる。

「行くぞ!」

そう言い私をオミッションに向けて投げつけ私は手でオミッションの体を突き破り地面に転がる。その後を追うように双が突っ込んでくるため慌てて瞬間移動で離れた。 

とうとうオミッションは倒れ動かなくなった。

殻を一つずつ潰してようやく最後の一個を潰した。

もうあのオミッションはいない。

それを見て二人でグータッチをした。返り血まみれの手で双の手を血で汚してしまったが。

バグシィはそれまで大人しくあのやんのかステップのまま待機していた。私から離れる気はないらしい。


危険が去り私達は改めて『あけぼのクラブ』へ向かうことにした。そこは元々大きな老人ホームだったらしいがそれを改修し今に至るらしい。

双が大きいと言うだけはある。近くで見ても物々しいくらい広そうだ。2階は無いが建物の敷地が広い。


「ただいま〜」

双がドアを開き入る。私も後ろに続いて「お邪魔します」と一言挨拶し中に入る。


そこには狼人間のような獣人から老人、青年に少女、老若男女と一癖も二癖もありそうな人々が集っていた。

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