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神託の翻訳者~僕だけ読める神託の石板は最強のアーティファクトでした~  作者: 猫柱


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33/33

33.目標の先にあるもの


追放された男がいた。


その男は『天界』出身であり、『神』の一族であり、そして反逆者だった。


彼は『王』の意見に反対した。中層世界、人類の領域にモンスターを放ち『神』の器を作成する計画は己の『神道』に反していたからだ。


そして男は敬遠された。『神』の社会において、発言力を失ったのである。


自分の意見は間違っていない。


男はそう言い続けた結果、追放されることになった。


たが、その男が辿り着いたのは下層でも、中層でもなく、中途半端な、狭間の大地に流されたことに気付く。


最果ての大陸でひとり、途方に暮れる。

想定とは異なる、何もない世界。


嵌められた。


男が強い復讐心を抱くのに時間は必要なかった。

持ち得る全てを使って上層から神を引き釣り落とそうと研鑽を重ねる日々。


しかし、何十年、何百年。

時を幾度も重ても、能力を充分に扱えない子供しか、召喚することは出来なかった。


閉鎖世界は、いつしか失敗作が溢れ、国となっていた。人々の預かり知らないところで進む復讐劇。


それは、『天界』に返り咲くことで、完遂するはずだった。


計画は失敗。再び投獄された(もと)神は、そこで初めて、自らが『神道』に反していたことに気付くことになった。


復讐に固執しすぎて、いつしか人類を二の次に考えてしまっていたのだ。


その結果、レグナリアは崩壊寸前。

それは、過ちの代償。


しかし、『神』を罰する力を持つ少年は言った。『レグナリア』を再建させましょう、と。


その言葉に賛同し、驚愕する。

一日と待たずに、中層に『レグナリア』の街並みが『再現』された。


男は新設された国の『王』となるよう進言した。


しかし、少年ははっきりと断る。


「僕には、目標がありますから。あなたは、まっとうな『王』としてこの地を治め、人々と真摯に向き合ってください。それが、あなたに与える『罰』です」


そう言い残して、少年は立ち去った。


Ж


「出来た!」


空は青く、晴れ渡っていた。


視界に広がる街はピカピカの新品で、兼ねてより目標の『孤児院』と『教会』を建て直し、シスターにプレゼントした。


敷地は広大な広さがあり、その大半が畑として使用されていた。

全自動の機械が、作物の世話をする。


これで、経済の立て直しも容易である。


「マルス。行こうか」


感慨に耽っていた僕は、騎士の呼ぶ声に振り向いた。


「はい、今行きます」


「報告があります! 『監視員』から連絡がありました。下層が動いたと」


「まったく、いつまで立っても平和は訪れないね」


穏やかな春の空気。

それに似つかわしくない争いの一報。


「僕が行きましょう」


「良いのかい?でも、今日は指導が─」


「そちらはクロムさんにお任せします。僕はそのまま直帰になると思うので、明日会いましょう」


「わかった。明日、朝に迎えに行こう」


ほんの僅かな時間、戦場に赴き、直帰する。

モンスターが減少した世界から魂を回収しようとする輩は、弱かった。


彼らが連れていたモンスターに襲わせると、そそくさ逃げていったのだ。


亀裂を塞げば、ある程度時間は稼げるはず、そうと決まれば『趣味』を嗜んでから帰宅しようと街の方を見た。


「さて、今日はどんな出会いがあるかな?」


Ж


巨大な『ビル』が建ち並ぶ街の一角にみすぼらしい格好をした男がいた。


男はフードで顔を隠した怪しい格好。


そして、通り掛かる人々に怪しい声を掛ける。


「神託、神託が必要な方はいませんかね?」


足を止める者はほぼいない。

『神託』が本当なら、男はみすぼらしい格好で銅貨を要求しない。


当たり前の認識。


それでも。


『神託』にすがるしかない人は存在する。


そして、少年がひとり、神託を受けにやって来た。


「あの、僕は騎士になれますか?」


「ほう、どうして騎士になりたいんだい?」


「お金がかせぎたくて」


「ふむ、騎士になるには学校に通うべきだ。明日、ダンジョン学校に行ってみてはどうかな?」


「家貧乏だから、そんなお金、ないと思う....」


「さて、神は君が学校に通い、騎士になると予言された。信じるかは君次第だ」


「...分かりました。ありがとうございます。これ

お金────あれ?」


男は姿形を残さず、消え去っていた。

まるで、存在そのものが幻だったかのように。


少年は、幽霊を見たのだと戦慄した。


「うわあ!?」


Ж


「ただいまぁ!」


笑顔で扉を開く。


奥からトテトテとお出迎えの足音。


僕が。


僕が欲しかったのは。


最初から近くにあった。


世界を救う必要はなく。


『家』を建て直す必要もない。


ただ、当たり前のように近くにいてくれる存在。


『家族』を見た。


僕は、『神託』より大事なものに気付いたのだ。


僕の顔から、今日一番の笑みが溢れる。


僕はいま、幸せだった。


食事時、話題の中心は今朝スタートしたマルスの冒険談。


決まっていつも、冒険は大冒険に変わる。


そこに嘘はなく、話題は尽きない。


翌朝、また、冒険が始まる。


マルスの冒険はまだ終わらない。


「行ってきます!」

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