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神託の翻訳者~僕だけ読める神託の石板は最強のアーティファクトでした~  作者: 猫柱


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15/22

15.魔法と技は使いよう


「ははっ見ろ、魔物がごみのようだ!」


開戦を告げたのは魔法による爆発だった。

一人ではない、数多の魔法使いが三列に並び、詠唱を絶え間なく繰り返していた。


「第二班、前へ!」


地平を焼き払う炎の海。


魔法は元来、戦闘に向かないと言われていた。

だがそれは、個人戦のような接近戦のお話。


遠距離の乱戦では、この上ない威力を発揮する

のは必然。何故なら反動を気にする必要が無いからである。


炎は自らの肉体を焦がし、氷塊は周囲を凍てつかせる。


魔力で防げるのは魔法であり、発生した運動エネルギーは例外だった。


故に、魔法使いは肉体を鍛える。

雨にも負けず、風にも負けず、雪にも、暑さにも負けない肉体を作るのだ。


そうすれば、大抵の反動は克服することが可能だ、と信じられている。


だが、今魔法をぶっぱなしている魔法使い達は屈強とは言い難い者達。


日頃、反動を恐れて威力を制限する彼らは、その鬱憤を晴らすかのように、全力で、はっちゃけた様子だった。


「ひゃっほーう!」


「全身全霊、魂を燃やせ!」


「俺は氷だ。すべてを凍らせる!」


「もっかい並ぶぞ!」


魔法使いは、遠距離戦が得意。

ならば、当然接近戦要員の『勇者』もいる。

彼らは少し後方で戦場を俯瞰していた。


「おい魔法使い共、俺達の獲物は残しておけよ!」


「うるせぃ、悔しかったら今からでも魔法を覚えな!」


「お前、魔力の無い奴もいるんだぞ!」


「そりゃすまん」


何だか緊張感に欠ける会話に、緊張が解れた。

獲物を取り合う程平和なら、問題は無いだろう。


楽しそうに魔法を放つ魔法使い達。

折角なので、魔法部隊に加わってみることにした。


簡単な説明を受けて列に並ぶ。


「第7班、準備!」


「終焉の炎、生命の...」


詠唱が開始する。詠唱は魔法を強化する祝詞。

格好いいけれど、残念ながら僕の魔法に詠唱はなかった。


「放てっ!!!」


「【ファイヤーボール】」


それは、相棒のドラゴンを真似た魔法。

威力は弱めで、背の高いオークが吹き飛ぶ程度だったけれど、集団魔法が作り出す炎は、自陣まで熱波を届けた。


「次、氷雪系前へ!」


魔法部隊を後にして、後方に引き上げる。

僕には、連発出来るだけの魔力がないからだ。


「おっ、マルスじゃねぇか!」


「リク!」


手持ち無沙汰な近接部隊のなかに、見知った顔を見つけ、思わず駆け寄った。


「何をしているの?」


「暇だからな。新しい技を考えていたのさ」


「どんな技?」


「そうだな、名付けて『落とし穴』」


「それって技なの?」


「おいおい、んなこと言ったら液状化なんたらは技じゃないだろうが」


「う゛確かに。でも、許可は貰ったの?」


「は? そんなん貰うわけ無いだろ?」


「え゛」


Ж


警備隊長は悩みを抱えていた。


「...きな臭いな」


「マルス、お前きな粉食ったのか?」


「きな粉って何?」


「知らないのか? 餅につけて食うと旨いんだよ」


「...お前達、何者だ?」


「僕はマルスです!」


「ほぅ、君が例の?」


「おっちゃん、何か悩んでるのか?」


「少し、気になることがあってな」


「近接部隊は遊んでるぞ。動いて貰えば?」


「いや、近接部隊は動かせない」


「さっき見てきたけど、ゴブリンなんかにリク達『勇者』を使うのは、少し勿体ないですもんね」


「でも、暇だぜ。おっちゃん、強いモンスターは出てこないのか?」


「そこだよ、君達。基本、モンスターは群れない。群れる場合、上位種による指示があるものだ。奴らは明らかに統率されている。しかし、指揮官らしきモンスターは見当たらない。これは、明らかな異常だ」


「つまり、強いモンスターが隠れているのですか?」


「そう考えている。これ程の規模。Aランク一匹で統率できるとは、思えんのだ」


「じゃあさ、備えておけば安心じゃねぇか?」


「ふむ、備えとは?」


「『罠』だ。落とし穴を仕掛けて置くんだよ」


「それが、この戦況下で実行出来ると?」


「ああ!」


「元には戻せるのか?」


「たぶんな」


「...神託の少年」


「はいっ!」


「これは、神様に指示されたものなのかね?」


「違います! ...けど」


「けど?」


「否定もされていないので、やることは決まっているのかな、と思います!」


「...よしっ、ならばやってみなさい」


呆気なく降りた許可にご機嫌な様子のリク。

戦線スレスレを、二人で散策する。


そう、想定していた肉体労働的なものは一切せず、ふらふらと歩いていた。


思わず、疑問が口から漏れた。


「ねぇ、いつ落とし穴掘るの?」


「ん? ()()()()()()()()


「え?」


「俺の『スキル』知ってるだろう?」


「絶対防御の盾!」


「まぁ、絶対はなかったけどな。お前に負けて、スキルを見直したんだよ」


「また強くなったの!?」


「ああ、今では落とし穴だって、ノールックで掘れるぜ」


「凄い! 僕も、石板失くしちゃったから頑張らないと...」


「おま、アーティファクト失くしたのかよ!?」


二人の談笑は、再び鳴り響いた警報によって中断される。襲撃を知らせる筈の音。


しかし、見える範囲のモンスターが攻め混もうとする様子はない。


「どうする? 戻る?」


「いや、このまま突っ切ったほうが早い!」


外周を駆け抜け、振り出しに戻る。

そこは、想定外の様相。逃げ出すモンスター。

逃げ出す人々。


一見不可解な状況は、一匹のモンスターが作り出した惨劇。


「...リヴァイア、サン」


Sランクのモンスターが、王都に【絶望】を運んで来た。


『キィィィィィィ……ルルルル……オォォオオオオオオオン!!』


極大の咆哮が、耳をつんざき、街を震わせた。

見上げるほどの威容は人の何十倍もあり、鋭い眼光が見下ろしている。


総身は蒼白く、幾重もの鱗に覆われた体は川のようにうねり、尾は地平の彼方に消えていた。


「狼狽えるな、私に続け!」


『キィイイイ!』


務めを果たさんと近接部隊が攻め立てる。

そこへ、『水』を象徴する竜が口腔を向ける


「GravityAbyss(グラビティ・アビス)


─重圧。

強制的に閉じられた歯列の隙間から凄まじい水流が漏れ、大量に降り注いだ。


よろめき、しかし動くことの禁じられた巨躯。その隙を『勇者』は見逃さなかった。


「うぉおおおおおおおお!」


夥しい光が剣となって突き刺さり、鮮血が舞い、逃れようと暴れ、藻掻くリヴァイアサン。

それを、氷炎が追撃する。


─まるで英雄譚えいゆうたんのような戦闘。

それは、強大なモンスターを打倒する勇者達の物語。


「ッ!!」


リヴァイアサンの標的が、一点(ひとり)に集中する。


重力を操る男は、鞭のようにしなる尾に追撃され、強大なブレスを止めた。重圧によって剃らされた攻撃が虚しく空を切った。


戦況は人類の有利に展開している。

...そう油断させていたのかもしれない。


重圧に閉じられた口腔が、がぱぁっと開かれる。

拘束に負けず、ひとりの標的に向け解き放たれた伊吹(ブレス)


「クソッ!」


「ヴァルドールッ!!」


─至近距離、計算された攻撃。

水圧が衝撃となって、男を包み込んだ。


膝をつき、肩で息をするヴァルドール。

そんな彼を救ったのは、一枚の土板。


...だが、ヴァルドールも無傷では無かった。


「あいつ、俺の盾を貫きやがった!」


水流は反れた。しかし、それはヴァルドールの足を抉り、地面を穿ったのだ。


「私に構うな!! 攻撃を続けろ!」


救出を拒み、再び魔法で押さえつけようと試みる。しかし、もはや完全に押さえつけることは不可能だった。


暴れ狂うモンスターに誰もが二の足を踏んだ。

『負の感情』が、戦場を支配する。




...その時、天に一振の刃が降り立った。


─剣の降臨。

瞬間、誰もが時を止め、凝視した。


それは、踊るように。

天高く、青髪を靡かせ、空を舞う少女。

月夜にきらめく剣に手が届き、舞い落ちた。


「あははははははっ」

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