表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/5

01.神託の石板


【陦€豸イ繧呈懇縺偵h】


これは文字だろうか?

数多の線が刻まれた石板(せきばん)。意味不明な記号(きごう)

気まぐれで変化する謎の文字。故に(いく)(なが)めても解読(かいどく)不可能(ふかのう)


 ここは、ダンジョン最深部。

(とみ)』『名声(めいせい)』『(ちから)』を求める冒険者達が最終的に目指す至高(しこう)の場所。

強者(つわもの)のみが(いた)ることを許された聖地。


しかし、この場に不相応(ぶそうおう)な少年が一人。


『グオオオォォォォォォ!!!』


徐々に大きくなる奇声(きせい)。迫り来る危機。

心臓はバックバク。


子供がちょっと無理をして、訪れていい場所では無かった。高鳴る鼓動(こどう)(したた)る汗。

後悔しても、もう遅い。


 ダンジョン最深部と言えば攻略報酬。


 夢と希望と力を与えてくれる宝物(アーティファクト)

それに(すが)った時点で、僕の冒険は成り立っていなかったんだ。


教訓。

一攫千金を(いっかくせんきん)夢見た、無茶なダンジョン攻略は禁止。

『『グオオオォォォ!』』


(...追い付かれた)

僕が作り出した『モンスタートレイン』

魔物の列車が先頭に追い付くのは道理。

途中下車が許されていない地獄の終着駅。


 追跡するは三頭の狼、両頭の蛇、有角鬼(ゆうかくき)、等々。

正規の手法で攻略しなかった者の末路。

抗ったとしても結果は明白。戦闘になどなるまい。


最後まで、(みじ)めに逃げ続けた。


転がり、掴み取ったのは攻略報酬。

念願(ねんがん)のアーティファクト。


報酬の武器を携えて成り上がる英雄譚(えいゆうたん)

そんなものはありはしなかった。想像と乖離(かいり)した宝物(アーティファクト)


売却すれば高額。実用性は皆無(かいむ)

不思議な石板は現状回復の役に立たなそうに思える。

 

(これが、強力な盾でありますように!!!)

神に祈るのは一瞬。


「やっぱ無理!」


心情を埋め尽くすのは恐怖。

鋭利な爪を避けるため、脚に力を込めて跳ぶ。


ゴロゴロ転がり転倒。


「う゛、ぐうぅ」


起き上がらなくては、向かう先は天国。

訂正。非正規な入口を見付けて入った僕は、きっと地獄送り。


擦りむいた手のひらと膝が痛い。

それでも、走らなくては......。


辿り着いたのは袋小路(ふくろこうじ)

「ハハッ、もう逃げられないや...」

僕は袋の(ねずみ)

残念なことに、この窮鼠(きゅうそ)には猫をかむ牙が無い。


最後に頼るのは攻略報酬(アーティファクト)

石板の埃を払うのは血塗れの手。

「綺麗にしたかったけど、逆に汚くなっちゃったな...」


諦めとは裏腹に、光を放つ石板。

それは天国への片道切符、或いは救いの手。

急に理解可能になった謎の文字。

【遨コ髢灘ケイ貂峨€∽ス咲嶌菫ョ豁」縲ゅユ繝ャ繝昴ユ繝シ繧キ繝ァ繝ウ】

「...空間干渉、位相修正。 『テレポテーション』!」


眼前には、僕を飲み込まんとする大きな口。


僕は死...ななかった。


目を開けると林の中。

ここは、僕が見付けたダンジョンに通じる秘密の抜け道。

僕が見たのは...夢、じゃない!!!


手元にあるのは石板。

アーティファクトを持ち帰ることは偉業。

僕は、身体の痛みも忘れて走り出す。

目指すは王都!


これで、僕はきっと億万長者!




   Ж   Ж   Ж


「帰んな、坊主」


「そんなっ、アーティフアクトですよ!?」


店主の嫌らしい眼差(まなざし)

それが少年を撫で回す。


「坊主、武器はあるか?」


「あ、ありません」


「魔法使いか?」


「違います」


「金はあるか?」


「ありません」


「で、武器も金も無い坊主がダンジョンから持ってきた石板を、誰が高額で買い取るって?」


「う"」


言い返すことなど出来なかった。

僕が店主でも、同じ疑問を持ったに違いない。

それでも、僕には溢れる自信がある。


「この石板は、転移魔法が使えるんです!」


「ほぅ、使って見せな。坊主」


成功すれば「『金貨100枚』で買い取る」と断言する店主。

僕は、意気揚々と詠唱を開始する。


「空間干渉、位相修正。 『テレポテーション』」


.................................................................................................................................................................あれ?


「お前さん、大人を舐めているのか?」

店主から感じる怒気。

僕が言えることはひとつだけ...


「ごめんなさあぁぁぁい!」


逃げ出す僕。背後から響く怒声。

億万長者は夢のまた...夢。


石板に、命を助けられた。

それだけは事実。


少年は、石板を見上げて感謝した。

「ありがとう」


【菫。縺倥€∝エ�a縺ェ縺輔>縲ゅ&縺吶l縺ー雜ウ蜈�↓蟶梧悍縺ョ蜈峨′】


「信じろ? 足元に希望の光?」


解読出来ても意味は不明な言葉。

取り敢えず、今日は下を向いて歩こう。


路地を通る。治安が悪いことで有名な通路。

普段は避けるけど、この時間帯なら大丈夫。

いざというときは全力で叫ぼう。


キラッ


路地の墨で光る物体。


それは......銀貨だった。


辺りを警戒するのは当然。

...誰も、いない。

(貰っちゃっても、バレないよね?)


カランカランッ


元々、大金を手に立ち寄る筈だったお店。

店内にはローブを纏った老婆の店主。

「いらっしゃい。おや、何度来ても同じことだよ少年」

ボロボロの少年を見て一瞬、顔が曇る老婆。

お金が無くて、薬が買えなかったのは今朝の出来事。


「これで、お薬をください」


差し出すのは銀貨。

薬は高額、安易に購入出来るモノではない。

銀貨一枚で買えるのは、せいぜい使用期限間近の万能薬。

けれども、店頭に処分品は無かった。

ちょっとだけ不安。


「...少し待ちなさい」


戻って来ない店主。

売り切れの心配する僕を余所に、奥から瓶を持って現れる老婆。


「ありがとう、おばあちゃん!」


暖かい瓶を布に包んで、店を飛び出した。


同じく帰路に着く人々。その中を、駆け抜ける少年。




 僕の家は街から少し離れた教会。

正確に言うと、そこに併設された孤児院。


「ただいま!」


仄暗(ほのぐら)い玄関。

出迎える者はいない。寂しい室内。


室内を横切って、向かうは寝室。


「おにいちゃん!」


ボロボロの僕を見て、心配する赤毛の少女。

名はエリシア。


「僕は大丈夫。それより、シスターにお薬を持ってきたんだ」


床に伏すシスター。

まだ少女と言われても通じる外見の彼女は、少し前から寝たきりの病人。


病に利く万能薬。

期待を込めて、シスターに渡した。


「ありがとう、マルス」


微笑むシスターマリー。

当然聞かれるボロボロの理由(ワケ)、語るのは今朝スタートしたマルスの冒険譚。


シスターが倒れたことから始まる。

薬を買いに薬屋にいったこと。

お金が足りなかったこと。

ダンジョンにお宝があると聞いたこと。

隠れた入口を見付けたこと。

凶悪なモンスターから逃げたこと。

謎の石板に助けられたこと。

()()()()()()()、薬を買ったこと。


今日あった出来事。

その全てを話した。


「まるで、『神託』を受けた勇者のような冒険をしたんですね。マルス」


ちょっとだけ付いた嘘。

それでも、僕のことを信用してくれるシスター。


僕が『神託の勇者』ならば、これは『神託の石板』だろう。


─訂正。

鑑定を受けていないので断定は出来ない。

『神託の石板のようなもの』だ。


僕は、神託を使って善行しようと考えた。

ちょっぴり付いた嘘を帳消しにするために...。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ