第三十九話 銘名
「しかし......派手にぶっ壊れてるっすねぇ。」
柏田の言葉で私たちは目の前に置かれた物品の数々を見る。
砕けた牛旁剣にべこべこに凹んだ大盾。そしてボロボロになった私と陽毬さんのプロテクター。あと瓶の破片が刺さりまくってボロボロの美幸の背嚢。
「まあ......でも柏田、ぶっちゃけ仕方なかったと思うよ?ゲルウダ戦は本当にキツかったんだし......」
あの戦いは一方的に蹂躙された戦いだった。......まぁ、実際は私のポカでボロボロになったわけだが。
「弱音を言わない、紗綾香。ゲルウダみたいなのが出るって知られたんだから今度からはもっと予想外に対する対策を覚える。」
「陽毬さぁん......」
私は私の眷属の陽毬さんをげんなりしながら向く。この人本当に私を主としてみているのだろうか?
「紗綾香の言う通りだよー!実際ゲルウダとの戦いはきつかったでしょー!?」
「美幸ー!」
私は美幸をひしっと抱きしめる。ああ美幸、美幸こそ私の真の味方だ!
「......お二人さん、仲良いのは構わないっすけどそろそろ話進めさせてくれないっすかね?」
そこに水を差す柏田の一言。私は美幸から離れてこほんと空咳を一つする。美幸は暫く惚けていたがやがてハッとしたような顔になりすぐに柏田の方を向いた。
「じゃあ、この装備群っすけど......ぶっちゃけると修復は不可能、なんで買い替えしなきゃなんすよ。でも『特攻課』の予算は前回の購入と新規職員の装備用意で使い過ぎたから待たなきゃいけないって八千代課長が言ってたっす。ここまではいいっすか?」
私たちは頷く。装備に関しては先に聞いていたから特に驚きはなかった。
「まあ、なんで暫くは予算増加を待ってください。......大丈夫っすよ。御三方の実力ならすぐに首切りみたいな感じにはならないでしょうし。」
柏田の説明が終わったので、私は尋ねたいことを聞く。
「あのさ、柏田?」
「ん、なんすか志野さん?」
「いや、この短剣どうしようかなって。」
私は一昨日から保有していた蒼の短剣を見せる。ゲルウダの腹を貫いた時脂がついたから錆びているかヒヤヒヤしていたが骨を使った装備だったのでそういう心配は杞憂に終わった。
「ああ......その短剣っすか。それなら志野さんの個人資産になったっすよ?」
「は?」
私は柏田の言葉に耳を疑う。こいつ今なんて言った?
「いや、だから個人資産になったんすよ。まあこの後書類書いてもらわなきゃいけないっすけど、これからは『特装課』から手に入れなくてもいいっす。」
「いや、なんで?」
訳がわからない。何言ってんだこいつ。
「なんでって......まあ、3係が色々ちょっかい出してきそうなんで。それに『特対課』の何人かは個人資産化してますので前例がないって訳じゃないっすよ。」
「......そうなんだ。」
私は考えるのがめんどくさくなったのでもう適当に頷くことにした。
「ていうか、この短剣って名前なんなの?よくこういう武器にはなんか銘があるじゃん?」
「えーっと、その武器は......『prototype-A』っすね。なんの面白みもない名前っす。」
確かになんの面白味もない名前だ。恐らく命名したのは『特研課』だろうなぁ......
「......じゃあ、私が名前変えていい、かな。これから多分結構な付き合いになる相棒なんだし。」
「いいと思うっすよ?好きに決めて。それも前例ないわけじゃないんで。」
柏田の許可を得た私は名前について考える。
「......話終わった?じゃあ、次は私の大盾についてなんだけど———」
蒼色の短剣だから......グランブルーナイフ?なんかダサいな......それとも蒼玉丸とか......西洋系のナイフだし合わなそう。
「———そっか。まあ仕方ない、暫くは後方で頑張る。」
「それじゃあ次私ー!もっと頑丈な———」
うーん.......元々の名前から決めようかな。『prototype-A』。proto、A.......
「あ。」
そこで一つピンと来るものがあった。これならどうだろう?
「どうしたっすか?名前決まったっすか?」
「うん......決まった。この短剣の銘は、『プロティア』。どう?かっこいいでしょ。」
我ながらいい名前だと思う。しかし柏田は半眼でこちらを見てこう言った。
「なんか拗らせた奴が着けそうな名前っすね。」
「はー!?」
「紗綾香、落ち着く。」
「落ち着いて紗綾香ー!紗綾香のネーミングセンスが拗れてるのは今に始まった話じゃないでしょー!?」
なんと、美幸まで私の敵になるか!私は憤慨していた自分の気持ちが音を立てながら萎んでいくのがわかった。
「......わかった。でも納得はしてないから!絶対いつかギャフンって言わせてやるからー!」
私が捨て台詞を吐くと、みんな一様にやれやれと言わんばかりに首を振った。なんでさ。
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