第十五話 試用
4/2 五十嵐陽毬のスキルに心情察知を書き忘れていたため修正。
「よーこそ、『特殊害獣対策用装備課』へ。」
そこには一人の青年が待ち構えていた。
「あ、自分、柏田 貴志っていうもんっす。よろしくっす。」
「あ、どうも......志野 紗綾香です。」
「澤田 美幸です〜。」
「五十嵐 陽毬。よろしく」
服装は味気ないシャツに黒いチェックのズボン......制服だろうか?髪型は短めだ。
「えっと......それで柏田さん。」
「あ、柏田でいいっす。自分さん付けとか慣れないし、敬語とかも別にいいんで。」
「あ、じゃあ柏田ね。よろしく。」
「紗綾香......」
なんだね美幸?柏田自身がそう言っているのだから、別にそれでいいだろうに。
そう思いながら私は柏田に気になることを言う。
「じゃあ......柏田。ここが『特殊害獣対策用装備課』って言ってたけど、ここどう見ても普通のオフィスよ?」
そうなのだ。柏田のいる席の辺りが多少大きくはある。が、それ以外は普通のオフィスだ。
「あー、これはっすね。」
「貴志くん?多分『見せる』方が早いわよ?」
柏田は、優希課長秘書にそう言われて「それもそうっすね。」と頷いた。
瞬間、柏田の手が虚空に突っ込まれた。
「えっ......!?」
「あっ......!?」
私たちは驚く。そのまま柏田は一本の警棒を取り出した。
「これが俺の職業《武器庫番》の専用スキル〔武器庫〕っす。これで色々武器を入れてるっす。」
「貴志くんは『特装課』に本当に必要な存在なのよ?」
「紗枝さんが言うとただの嫌味っすよ......」
成程、これは確かにすごい。柏田さえいれば武器を安置する場所要らずだ。盗まれる心配も一人を除いていない。ただ、問題は、
「質問。柏田が武装を持ち逃げした際にはどうする。」
五十嵐さんが質問する。その通りだ。柏田はいつでもこの武器を持ち逃げすることができる。
「大丈夫よ、確かに貴志くんは武器を色々と持ってるけど、それでもほんの一部だから。ないとは思うけどそういう時のために他にもちゃんと武器の安置所はあるわ。」
優希課長秘書はそう言う。ならば安心なのだろう。
そして、話が終わったのを見計らって、
「それじゃ、皆さんのステータスを見せてくださいっす。」
と柏田は言ってきた。
「ステータスを〜......?」
美幸がそう言う。どうやら気づいていないようだ。
「基本的にはステータスに合った武器を手渡すっす。何も合わない時には色々出して、気に入ったのを選んでもらうっす。」
「なるほどー。」
まず渡したのは五十嵐さんだった。
「これ。」
私たちは興味本位で横からステータスを覗く。
<名称:五十嵐 陽毬(Himari Igarashi)
種族:[人間族]《盾持人》
Lv:1/99
年齢:19
体力 80/80
魔力 10/10
気力 80/80
力:20
硬:20
知:20
技:20
信:15
ステータスポイント:5
専用スキル:〔衝撃吸収〕〔盾重量無効〕〔パリィ〕〔踏ん張り〕〔心情察知〕
汎用スキル:〔自動回復 lv1〕〔気力自動回復 lv1〕〔防御 lv1〕〔魔力変換 lv1〕〔盾術 lv1〕〔能力変容 lv1〕〔言語(日本) lv9〕〔言語(英語) lv5〕〔言語(韓国) lv2〕
称号: >
「「おお〜。」」
私と八千代課長の声が重なった。ステータスは平均的だが、職業とスキル構成がタンク向きだ。
「ふむ。盾っすか。ならコイツっすね。」
そう言って柏田は一枚の盾を取り出す。
厚みのある盾だ。ただ、ファンタジーなどでよく見る鉄製の盾ではなく、黒色一色の光沢のある盾だ。よく見ると靴や鞄についてある革だ。
「使用素材はカーボンに革っす。重量は......この専用スキルなら言わなくても良さそうっすね。仕組みは簡単で、滑した革をカーボンに貼ってるだけっす。どうっすか?」
五十嵐さんは盾を持ってみる。地面に下ろすと高さが私の脇ぐらいまである大きな盾だ。厚さは4センチは超えているだろう。
「よくわかんない。」
そう五十嵐さんは言った。もっとこう、なんかないのか。
「そうっすか。そりゃよかったっす。」
しかし、柏田は良かったと言う。何故だ?
「柏田、私に武器はないの?」
しかし私がそれを聞く前に五十嵐さんは柏田に問うた。
「武器なら......これっすね。」
と言って取り出したのは一丁の長銃だ。先端には刃が付いている。
「牛蒡剣......所謂銃剣っすね。これ使ってくれればいいっす。」
五十嵐さんはそれも手に取ろうとするが、柏田はそれより早く武器庫に収納する。
「あ、ダメっすよ?使う予定もないのに凶器を二つも持たせられないっす。というか盾も没収っす。」
と言って柏田は盾に触れそれも武器庫に収納する。
五十嵐さんの表情は変わらなかったが、「残念だ」という空気を醸し出していた。
「はいー、それじゃあ次私ね!」
二番手は美幸だ。
<名称:澤田 美幸(Miyuki Sawada)
種族:[人間族]《調合師》
Lv:1/99
年齢:15
体力 60/60
魔力 30/15
気力 50/50
力:10
硬:10
知:30
技:30
信:5
ステータスポイント:10
専用スキル:〔調合知識〕〔魔力貯蔵〕〔等価交換〕〔錬金空間〕〔夢幻〕
汎用スキル:〔魔力操作 lv1〕〔魔力放出 lv1〕〔融合進化 lv1〕〔分離退化 lv1〕〔解析 lv1〕〔言語(日本) lv9〕〔言語(英語) lv4〕
称号: >
「んん?」
おかしい、魔力が限界を超えて貯蓄されている?これは一体どういうことなのか?
「ねえ、美幸?魔力が限界量超えてるんだけど何か知らない?」
と私は聞く。しかし美幸の方も、
「ん......?」
とわかっていない様子。
「美幸?」
「いや......確かにここに......私の見間違い......?ごめん、なんだっけー?」
美幸はしばらく称号の欄のあたりをじっと見ていたが、そこから視線を外して私の方を向いた。
「いや......魔力が限界を超えて貯蓄されてるんだけど......」
「あっそれは多分〔魔力貯蓄〕のスキルだと思うよ?限界を超えて貯めるって言ってたし。」
ほーう。これはまた強めのスキルを引いたもんだ。
「このステなら......これっすかね?」
そう言って柏田が取り出したのは一本の警棒だった。しかし妙なのは、根元の方に丸い透明な石が2つ埋め込まれていることだった。
「これは見ての通り警棒っす。でも魔法系の職業についてるひとたち向けに根元に魔石ぶち込んだやつです。魔石っていうのは魔物の核なんですけど、そいつを使ったやつは魔力の消費量が下がるんすよ。」
柏田の説明を聞きながら、美幸は杖を持つように警棒を持つ。
「重っ......!」
しかし重たいようだ。手が震えている。それでも持ち上げ、杖のように構える。
「あっ、待ってください澤田さん、その格好今すぐやめてくださいっす。」
「えっあっはい!」
しかし柏田がその格好を止めた。周りを見ると緊張気味だ。
そのまま美幸がゆっくりと警棒を下ろした時、私たち以外の人達がホッと息を吐いた。
「いやあ......危なかったっすよ。ほんとに。」
そう柏田は言う。どうやら何かあったらしい。
「質問。過去に何があった?」
「あー、前に火炎術師のやつが似たようなことした結果、意図せず炎の魔法が出ちゃったことがあってっすね。それが燃え広がっちゃって結果やばいことになっちゃって......今回は何もなかったけど、注意してくださいっす。」
そう柏田は言った。
「あ......危なかった......!」
そう言ってプルプル震える美幸。かわいい。
そのまま美幸は持っている警棒を返した。
「さてと......」
あとは、私か。