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屍少女は何になる  作者: 島原流星群
第一章 屍生・狩猟・変革
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第一話 開始

「......どうしてこんなことになったんだろう?」


 荒い息を整えようと必死に息を吐く。けれど肺に穴が空いてるからそこからどんどん漏れていく、穴を塞がなければいけない。と思ってもどう塞ぐかがわからない。何故なら右腕はボロボロになっていて、左腕は折れて使い物にならないから。


「い......たい......」


 もう一度思う。


 ———どうしてこんなことになったんだろう?



 §



 それは、私が家で勉強をしている頃の話だった。


(......はぁ......)


 そう内心溜息を尽く。勉強や稽古は嫌いではないのだが、事あるごとに『成果を出せ』という父のことが、どうにも苦手なのだ。


『南極の空に裂け目が発生してから一週間、国連は裂け目に対する調査を進めており———』


 テレビからは『裂け目』のニュースをしている。発生した頃は話題になっていたが、空に裂け目ができたからっていろんなことは無くならないし、何も起きずただ開いただけの状態なのですぐに世間の興味も無くなった。


 そんな時、急に鋭い頭痛がした。


「え......?あっ!?」


 酷く鋭い頭痛がする。痛くて仕方がない。立っていられない。そしてそのまま———



 私は、意識を、手放した。



 <———あなたは死亡しました>

 <魔物化パッチが適用されます>


 <肉体構成変化中......[不死族]【F−級】《レッサーゾンビ》に変化完了>

 <専用スキル〔不死〕〔痛覚遮断〕〔魔〕〔腐敗無効〕〔捕食本能〕〔眉目秀麗〕を獲得>

 <汎用スキル〔捕食 lv1〕〔闇魔法 lv1〕〔自動再生 lv1〕を獲得>

 <称号〔はじまりのゾンビ〕〔特異個体〕を獲得。〔特異個体〕の効果により記憶及び経験の復元、追加スキルの取得開始>

 <専用スキル〔聖〕〔聖属性無効〕(光属性無効〕を獲得>

 <汎用スキル〔演技 lv3〕〔偽装 lv3〕〔言語(日本) lv9〕〔言語(英語) lv4〕〔演奏 lv3 〕〔料理 lv5〕〔聖魔法 lv1〕〔光魔法 lv1〕を獲得>

 <復活に時間がかかります......復活まであと6分......>


 <それではこれより良い屍生をお過ごしくださいませ。>



 §


「......痛ッ......」


 また、貫くような頭痛がして私は目覚めた。

 目を開けるとそこには我が家の天井。取り敢えず立ち上がり、服についた皺を伸ばす。

 取り敢えず水を飲もう。そう思い立ち、冷蔵庫を開ける。そこには氷と冷凍食品のハンバーグとクリームコロッケが———


 <専用スキル〔捕食本能〕をアクティブ化します。


 食べたい。


 食べたい食べたい食べたいっ!


 そのまま手掴みで袋と中に入っているプラスチックの容器ごとハンバーグを食べる。冷たい。硬い。歯が痛む。でもそれがどうした。食べて食べて食べる。いくら食べても収まらない。お腹は空いていないのに食べたくて仕方がない。そうしてどうにかハンバーグを喰らい尽くした時、


 <〔捕食 lv1〕の効果発動中......対象の捕食部位が90%に満たなかったため失敗となります>


 というアナウンスが聞こえた。何なのだろうと思いつつも、私はクリームコロッケに手を伸ばし、例によって袋ごと噛み切った。最後の一個をお腹に収めた時、ようやくその異常な食欲は収まった。


「ハァ......ハァ......今のは......?」


 異常だ。明らかに異常な状況を前に私は恐ろしくなった。私は一体どうしてしまったのだろう。怖くて仕方がない。私がその恐怖に押しつぶされそうになった時———


 <一定以上の恐怖ダメージを確認。〔恐怖耐性 lv1〕を獲得します。>


 ———また、その声が聞こえた。


「なんなの......?コレ......?」


 私はその声に問う。今はさっきのことを考えていたくなかった。別のことを考えて目を背けていたかった。


 その声に反応した時、私の目の前の床に半透明の水色のタブレットが出現した。手に取ってみるとそこには文字が浮かび上がる。


 <名称:志野 紗綾香(Sayaka Shino)

 種族:[不死族]【F−級】《レッサーゾンビ》


 Lv:1/10

 年齢:0

 体力 75/75

 魔力 16/16

 気力 65/65

 力:13

 硬:15

 知:32

 技:29

 信:36

 ステータスポイント:10


 専用スキル:〔不死〕〔痛覚遮断〕〔魔〕〔腐敗無効〕〔捕食本能〕〔眉目秀麗〕〔聖〕〔聖属性無効〕〔光属性無効〕


 汎用スキル:〔捕食 lv1〕〔闇魔法 lv1〕〔自動再生 lv1〕〔演技 lv3〕〔偽装 lv3〕〔言語(日本) lv9〕〔言語(英語) lv4〕〔演奏 lv3 〕〔料理 lv5〕〔聖魔法 lv1〕〔光魔法 lv1〕〔恐怖耐性 lv1〕


 称号:〔はじまりのゾンビ〕〔特異個体〕>


「え......?」


 ゾ、ンビ?

 私は驚く。それはつまり、私が死んだことを意味するからだ。いやそれよりも、


「何これ......魔法?スキル?ハハッ......意味わかんない。なんなの......?」


 私は「これがもしかして夢なんじゃないか?」と思い、自分の頬をつねった。痛い、だが痛みが鈍い。それを感じて思う。

 やっぱり夢だったんだ。父があまりにも苦手すぎて私が現実逃避のために作り出した夢なんだ。だったらこの状況にも納得が、


「......いくわけ、ない。」


 さっきの食欲はどう説明する?あんな体験したことのない食欲が夢に出てくるわけがない。そもそもこんなこと望んでない。一体誰がこんな夢見せろといったのだ。


 私は半ばヤケになっていた。もうどうにでもなってしまいたかった。


 タブレットの表示が変わる。そこには「初心者ミッション」と題して幾つかの項目があった。


 <人間族を一名殺害せよ


 報酬 ステータスポイント+5     >


 <魔力を解放せよ


 報酬 魔法大全 上下巻       >


 <人間族を一名救出せよ


 報酬 救出した人間族の好感度上昇  >


 <一度進化せよ


 報酬 進化時の最高ステータスに応じた

 装備一式              >


 <サービス開始まで生き延びよ


 報酬 専用スキルをランダムで一つ  >


「ハハッ......ははは......ふひっ......ひひひひ......」


 変な声が私の口から出た。こんな声が私から出せるとは思っていなかった。だがそれほどに非現実的だったのだ。



 そのまま、私はしばらく笑い続けた。


<一定以上の恐怖ダメージを確認、〔恐怖耐性〕のlvが上がりました。>


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