8話
この街の領主であるヒースは、自身の館の受付に自ら座り、色とりどりのドレスに身を包む、色合いだけはお達しの通りの娘達を、生暖かい笑みで迎えていく。
娘達は領主のヒースを見て、ポッと顔を赤らめているが、ヒースの横にいる仮面を被った不審な男を見るやいなや、怪訝そうに顔を顰めてそっぽを向き、今回の会場となった館のホールに、係の案内により向かっていく。
ヒースは幾人もの受付を済ませる中、なんの反応も示さない仮面の男をチラリと見やると、小声で問いかける。
「サラ、どうだい君の天使は居たかい?」
「…まだ来てないようだ」
この度自分が出したお達しには日付けを指定しているため、今日中には訪れるだろうが、娘達を仮面越しに見て、一喜一憂するサラザールの背中をぽんと叩く。
ヒース自身、彼を助けたという天使がいつ現れるのか、ドキドキワクワクした気持ちでいたが、あまりの人の多さにそれどころではなくなり、気がつけば全ての人の受付が終わっていたのだった。
「リーフシード、という家名だったよな、サラザール」
「…ああ、確かに彼女はそう名乗っていたはず、だ」
全ての受付が済んだ後、領主たるヒースが会場内の娘達を見やり、そして仮面の男をチラリと横目で伺ったが、なんの反応も見せないことから不審に思い、適当な言葉で一旦彼女達をその場に待たせると、その場から仮面の男と共に執務室へと向かった。
受付名簿を執事に持ってこさせ、記載された名前を確認していく。
似たような家名の中に、リーフシードの家名はあったが、イザベラとカーミラの名前しか記載されておらず、ヒースと、仮面の男…サラザールは顔を向き合わせると、思わず小首を傾げて眉をひそめる。
受付名簿のどこにも…それこそ、舐めるように見直しても彼女の名前が記載されていない、ということは、意図的に彼女が姿を見せないだけ、もしくは、彼女の家族が彼女を隠しているか、のどちらかだろう。
ヒースは眉間を揉みながら、天を仰ぐ。
「どうやら、一筋縄ではいかないようだね、サラザール」
「ああ。だが、彼女の家族がいる、手がかりはそこだろう」
サラザールの瞳孔がさらに細くなり、無意識のうちにシャーシャーと威嚇を始めた。
ヒースは爬虫類種の独占欲の強さに苦笑いを浮かべつつも、彼の天使たるアツミが見つかることを祈った。
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ざまぁ展開も少し入れようか、迷ってます。




