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第50話 旅の終わり

 口の中が気持ち悪い、頭痛で頭が痛い、身体が上手く動かない、耳がキンキンする……


「リョウ!! 目を覚ましてリョウ!!」


「……ああ、サラか、声がでかいよ……」


「リョウ! ばか! 心配したんだから」


 抱き着かれている感じがする。頭の芯がガンガン痛んで意識がはっきりしない。


「どうなった?」


「リョウは崑崙を倒したよ、ちゃんと、ちゃんとやりきったよ!」


「ナユタは?」


「もう潜ってる。リョウの状態をみて、すぐに潜るって、ありがとうって言ってたよ」


「そうか……これ、今俺はどんな状態なの?」


「過剰な負荷がかかって、かなり危険な状態だって言ってた。

 リョウ自身はどうなの?」


「うーん、やばいんだろうな。頭は割れるほど痛いし、それに、目が見えてない……」


 目を開いているはずなんだけど、映像情報が全く入ってこない、感覚情報は多少感じる。

 肩に乗っかっている柔らかい感触はとても心地よい。


「……死んじゃ……やだよ……?」


 ああ、サラは泣いているのか、さっきから何か水のようなものが落ちてきていると思ったけど……


「回復魔法とかは?」


「もうかけた。外傷は全部治ってる。

 まだ、目とか見えない?」


 気が付けば物の輪郭ぐらいは把握できるようになっている。

 どうやら少し休めば回復しそうだ。


「少しづつ、治っているから休めば、大丈夫そうだ……」


 少しづつ現実、というかこの世界とのチャンネルが開いているような感覚だ。

 頭痛は続いているが、視覚、触覚、嗅覚、味覚……いろいろなものがこの世界とつながっていく。

 しばらくすると、目に見えるものははっきりと認識できるようになった。

 それに続いて体も思い通りに動かせるようになっていく。

 心地よく抱かれているのも幸せだが、今は現状の把握が必要だ。

 サラから体を起こして立ち上がる。


「大丈夫?」


「うん、大丈夫、ナユタは隣の部屋かな?」


「そう、あの扉の先が中枢への端末だって言ってた」


「行こう」


「……うん」


 立ち上がると少しふらつきと頭痛が増すが、それでも俺はあの先に行かなければいけない。

 この旅を終えるために……




「ナユタ!!」


 室内はがらんどうとしていた。

 それだけにその中央にある端末の異様な光景が目立っている。

 端末の機械の上部に、ナユタがクリスタル上に変化してへばりついていた……


「パパ……オハヨウ……」


「どうしたんだその姿は!?」


「装置トノマッチングガウマクイカナクテ、一時的ニ融合シテ直接操作スルシカナカッタンダ」


「……そうか……」


 戻れるのか? とは聞かなかった。怖くて聞けなかった。

 たぶん、戻れないだろうと感じたからだ……。


「ソンナ顔シナイデヨパパ、元ノ世界ニ戻ッタラ、マタ僕ヲ診テクレルンデショ?」


「ああ、そうだな。向こうに戻ったら、前よりも可愛がってやるよ」


「アリガト、パパ」


「この世界はどうだい?」


「やっぱり凄いね。ママと、パパの作ったこの世界は、美しいよ」


「そうか、またゆっくりここに来たいなぁ。そのときはのんびりと旅しような」


「ママも一緒だからね、私じゃなくて本当の」


「うん、3人でまたこの世界へ……今の僕は、ここでお別れです。

 でも、きっと新しい僕も二人とうまくやっていけると思います」


 やっぱりそうか……


「そのためにも、今やれることを終わらせないとな……ナユタ、手伝えることはあるか?」


「甘えていいですか? 一部処理をそちらのコンソールに出すのでお二人なら僕が並列よりも精度が高いと思います」


「ナユタにそう言われるのは光栄だけど、人力の方がいい作業なんてあるか?」


 コンソールに映し出された情報を見て納得する。

 なるほど、勘が必要な作業か……


「わかった。サラも、ここでお別れかな?」


「……うん。リョウ、すごく楽しかった……向こうの私も、よろしくね」


 作業部位からして、ナユタの行っていることが終盤に差し掛かっていることを俺もサラも理解していた。


「なんか、湿っぽいな! 向こうに戻ったら二人とも大忙しだぞ!

 国のお偉いさんに怒られる俺の身にもなれよ! まったく……そうだよな……

 戻ったら説明とか何とかしなくちゃいけないんだよな……まじかよ、今回ほどの不祥事は初めてじゃね……? ヤバくね……?」


 暗かった雰囲気がお通夜レベルまで暗くなった……

 はぁ……帰りたくなくなった……


「たぶん大丈夫ですよパパ。うちの国が、他の国に表立って文句を言えるはずがないじゃないですか!」


「……確かに! うやむやにしてごまかせって言われるだけだよな!!」


「そうよ! どうせ責任は私たちに擦り付けて、おしまいよ!」


「わーい! やったぁ!!」


「やったやったぁ……じゃない!!」


「首にはならないわよ、私たちの変わりなんていないし、減給ぐらいじゃない?」


「ならいいか……別に金なんてあったって使う暇がない……」


「今まで通りですよ、きっと」


「そうだな、それが一番だな」


 周囲が少しづつ明るくなっていく。


「パパ、そろそろお別れです。

 戻ったらすぐにパパの健康状態をチェックですよ!」


「ああ、そうだナユタ、サラと俺の行動は消すかなんかしといてくれ!! マジで!!」


「もうやりましたよ。サラ、ママは最初からいなかった。そうなってます」


「ちゃんとあっちでけじめをつけてよね!」


「ああ、わかってる。愛してるよサラ」


「リョウ……」


「ナユタも、お疲れ様」


「パパも、本当にお疲れさまでした」


 周囲の明るさはどんどん増していって目を開けていられなくなる。

 自分自身の体も消えてしまいそうなほどのまぶしさだ。


「皆!! ……また会おう!」









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