◆15.内緒
僕は敬音を抱きかかえたまま、悠美が待つであろう自宅まで走って戻った。
玄関のドアを開けると、悠美はすごい勢いで駆け込んできたかと思うと、僕の腕の中の敬音を確認して、安堵の混ざった溜息をついた。
「・・・もう!!心配ばっかりかけて!!」
悠美の瞳には徐々に涙が溜まり、今にも溢れ出しそうだ。
「敬音、ダメじゃない!!一人で勝手に・・・」
悠美は大きな声で、敬音を睨みつけた。
「もういいよ」
僕はそれを止めるようにして、言葉を挟む。
「敬音だって悪気があったんじゃないんだから。ちゃんと自分で悪いことをしたんだってわかってるよ。だから」
僕は敬音をそっと床に降ろすと、悠美をたしなめるように肩を摩った。
「まーくんは、敬音に甘すぎるのよ!!」
「もう終わりにしない?お腹減ったよ。ねっ。敬音?」
罰の悪い顔をしていた敬音も、僕の言葉でゆっくりと表情がほぐれていく。
「はいはい。もう・・・・わかりました」
悠美はまだ言い足りない小言をブツブツと言いながら、キッチンへと向かっていった。
僕は悠美の姿が見えなくなったのを確認すると
「今日の交通事故のことはママには内緒だよ。もっと心配しちゃうといけないからね」
そう敬音の耳元で囁いた。
敬音はにっこりと笑って頷いた。
何故こんなことを言ったのか、自分でもわからなかった。
ただ、悠美に彼女の存在を知られたくなかった。
僕は今頃病院に向かっているであろう彼女の姿を思い浮かべながら、彼女にたいしたことがないことを願うしかできない自分が歯痒くて仕方がなかった。




