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ふふふ、なんという万能感。
あれから私はとても頑張ったと思う、呪われている人なんだなとこっそり思いながら、それでも彼を受け入れる決意は変わらずついにやり遂げた。
途中、浄化の魔法を何度か無意識に発動していた気がするけれど、その記憶も朧気だ。
とにかく、私シュテフイーナは頑張りましたわ。と、お母様お姉様達に胸を張って報告出来る。
名実ともに妻となりました、声を大にしては恥ずかしいので言えませんが、互いに満足し疲れ果てて眠りについて、気がつけば夕方近く。
朝食も昼食も取ることなく、寝室に籠っていた新婚夫婦、そうですこれこそが正しい新婚の姿です。
くぅぅという声で目を覚ました私は、真っ赤な顔で私を見ているギュスターヴ様と見つめ合い、言葉にするなら、ふにゃぁとでもいえばいいのかという、だらしのない顔で互いに笑い合いました。
このまま幸せな時間を過ごしても良かったのですが、朝も昼も食事なしで過ごしていたので、人生で初めてお腹が鳴きました。
なんの音か分からずキョロキョロしていると、恥ずかしそうに「空腹すぎてお腹がなったみたいだ」と告白するギュスターヴ様が可愛くて、ときめいたのは仕方のないことだと思う。
呼び鈴でメイドを呼び、それぞれの部屋で入浴しながら「おめでとうございます若奥様」と言われる照れくささ。
思わず両手で頬を押さえながら、お印が残ったシーツを思い出し、それに引きずられる様に様々と思い出して照れくさいやら恥ずかしいやらで貧血を起こしかけた。
お印は無いと困るけれど、何をしてそうなったか誰の目にも分かるのも恥ずかしい。
でもあれが無かった方が問題だから、あれは皆が幸せになる印だ。と心の中で誰とは無しに言い訳し、少し楽なドレスを着せてもらい薄化粧した私はウキウキと夕食が並んでいるであろう食堂に向かった。
扉をメイドが静々と開き、微笑みを浮かべつつその内心はウッキウキの私は、部屋に入った途端私を見て立ち上がったお義母様から熱い抱擁を受けた。
声を上げたり飛び上がって驚いたりしなかった私を、誰か褒めて欲しい。
豪華な食堂にはなぜか使用人は誰もおらず、義理の両親と旦那様と義理の弟妹だけがいた。
抱きつきはしなくても、お義父様も感極まった表情でそれは弟妹も同じ。
私の頭の中は、何故? と疑問しか浮かばない。
「シュテフイーナ、体は平気?」
私に抱きついたまま、心配そうなお義母様に、恥じらいながら頷く。
お義母様は尊いお生まれのせいか、とてもおっとりとしている方だ。ギュスターヴ様が優しいのはお義母様の血なのかもしれない。
「あぁ、あなたが嫁いでくれて本当に良かったわ。息子を受け入れてくれて本当にありがとう!」
「お、お義母様?」
「お母様! 表現が露骨すぎます! でもお義姉様、兄様を嫌わずにいてくれて感謝しますわ! うっかり呪われるような人なのに、私お義姉様の心の広さと強さに感動いたしました!」
両手を組みキラキラした目を私に向ける義妹に、やっと理由が飲み込めた。
そういえば、昨日の式の間中こちらの家族は私と視線を合わせないようにしていた。
私は何かして嫌われたのかと心配していたのを、今の今まで忘れていた。
「もしかして、昨日私と視線を合わせないのにしていました?」
こういうことは黙っているとろくなことが無いと、私は考える方だ。
お姉様達みたいに、視線で語るなんて私には出来ないし、遠慮して黙っていて言い事は何も無いとギュスターヴ様で学習済だ。
「あぁ、大切なお式の最中に不快な思いをさせて申し訳なかったわ。呪われた息子と結婚させるなんて、騙しているみたいであなたに申し訳なくて」
「あ、そういう……」
この方々、おっとりゆったりしていても、言動は高位貴族そのものとばかりに日頃感情を外に出さないのに、昨日は本当におかしかった。
まさか、私に申し訳ないと思っていたとは。
「もし呪いが解けず心まで猫になってしまったら、あなたが離縁を選んでも恨まないと誓うわ。その時は生涯不自由しないように……」
「母上何を言うのです!」
「まあ、お義母様ご心配無用です。まだ猫の姿には会っていませんけれど、生涯私の旦那様はギュスターヴ様一人だけですわ。もし猫の姿から戻らなくなっても離縁なんて考えませんので、その際はどうか離れにひっそり二人で住まわせて下さいませ」
新婚に離縁の話なんて、なんて縁起の悪いことを言うのだろう。
でも、息子と嫁を心配してのことなのだろうと思えば、笑顔は引きつるが本気で怒ったりは出来ない。
「まあ、シュテフイーナ! あなたってなんて素晴らしいの!」
ギュスターヴ様もだいぶ感激屋な気がするけれど、それはどうもお義母様譲りらしい。
素晴らしい、ありがとうと繰り返し言いいながら、私を抱きしめるお義母様は旦那様と言動がよく似ていると思う。
「感動はそのくらいにして、食事にしよう」
お義父様が落ち着いた声でそう言いながら呼び鈴を鳴らすと、ゾロゾロと給仕達が部屋の中に入ってきた。
「私ったら取り乱しすぎね。シュテフイーナ申し訳なかったわね」
「いいえ、お義母様のお気持ちとても嬉しいです」
にこりと微笑むと、お義母様も同じく微笑みながら席に着いた。
悪い人ではないのだ、それが結構厄介なこともあるけれど。
こっそりため息を吐きながら私も席に着き、テーブルに並べられていく前菜に空腹を感じていると、急に部屋に入ってきた執事がとんでもない事を告げた。




