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流転の國 vol.7 〜幻と記憶が交差する宙色の物語〜  作者: 川口冬至夜


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第四十五話 その頃の流転の國

一方、流転の國ではルーリが『長距離転移』を発動しようとしていた。

「では、ルーリ様。行って参ります!」

「よろしく頼むぞ、クラヴィス」

「はっ!」

先日、クラヴィスが送った書状を受け取ったヒカル王から「ぜひとも貴殿と話がしたい」旨の返事が届き、今から桜色の都に行くところだ。

「クラヴィス、忘れずに『宝玉』を渡して下さいね」

「はい!必ずお渡しします!」

シロマは陛下への手土産にと『全回復』の術式を刻み込んだ宝玉をクラヴィスに持たせたのだ。

最上位白魔術師である彼女の宝玉ならば、きっと喜ばれることだろう。

《こちらミノリ。クラヴィス、気を付けて行ってきてね》

ルーリの部屋で寝たきりのミノリからは『念話』で見送りの言葉が届いた。

《こちらクラヴィスです。ミノリ様、ありがとうございます!行って参ります!》

「…クラヴィス、準備は良いな?」

「はっ!」

ルーリが『長距離転移』を発動させると、次の瞬間クラヴィスは桜色の都の王宮に立っていた。

そこへ、

「クラヴィス殿…!よく来てくれましたね…!」

ヒカル王直々にクラヴィスを出迎える。

「陛下…!此度は謁見をお許し下さり、感謝申し上げます。また、貴国に対する数々のご無礼を主に代わりまして陳謝致します。一方的に盟約を破棄致しましたこと、誠に申し訳ございませんでした」

クラヴィスはその場に跪いて深く頭を下げる。

「頭を上げて下さい、クラヴィス殿。昨年、貴方の國の主様から書状が届いた時はどうなることかと思いましたが、今日こうして再び貴方に会うことが出来て私はとても嬉しいのです」

ヒカル王はそう言うと恐縮するクラヴィスを立たせ、貴賓室に迎えた。

「畏れながら、陛下。今となっては全て言い訳になってしまうのですが、我が國で起きた出来事を聞いて頂けないでしょうか…?」

クラヴィスが申し訳なさそうに訊ねると、ヒカルは笑みを崩さずに頷いた。

「ぜひ、聞かせて欲しい。なぜマヤリィ様が突然譲位なさったのか、そして新しい女王様とはどのような方なのか、詳しく教えて下さい」

「はっ。畏まりました、陛下」

そして、クラヴィスは話し始めた。

「…成程。流転の國は魔術とも違う不思議な現象が起きる所なのですね…。しかし、マヤリィ様を追放するとは、その水晶球はなんと罰当たりな…」

話を聞いたヒカル王は混乱しつつ納得しつつ、水晶球に対して憤りを感じていた。

「ですが、陛下。ご安心下さいませ。その罰当たりな水晶球は私が始末致しましたので」

…そう。クラヴィスの持つ『流転のリボルバー』に敵と看做された水晶球は、一発の弾丸で砕け散ったのだ。

「そ、それは…貴方の持つ、あのマジックアイテムで…?」

「はっ。一発で仕留めましてございます」

こういう時には自己アピールを忘れないクラヴィスさん。

「…そうでしたか」

さすがのヒカル王も驚いた。

やはり、クラヴィス殿は只者ではない…。

「は、話を戻しましょう。…では、クラヴィス殿。現在マヤリィ様の代わりに最高権力者を務めていらっしゃるというルーリ様に伝えて下さい。改めて盟約を結ぶという前提の首脳会談を開きたいと思います」

「はっ!有り難きお言葉にございます、陛下。國に戻り次第、只今のお言葉を伝えさせて頂きます」

事情を聞いたヒカル王は、再び流転の國と盟約を結ぶ為、正式に首脳会談の場を設けることを決めた。

「…ところで、クラヴィス殿。まさかマヤリィ様は今も行方知れずなのですか?」

水晶球を砕いた話に夢中で、肝心のマヤリィの現在について聞いていなかったヒカル王。

「はい。『魔力探知』を続けておりますが、今も行方が分からない状況にございます」

「…………」

「ですが、生きていらっしゃることは確かです。万が一マヤリィ様が亡くなった場合、我が國は崩壊するとのことにございました」

「…それも、例の水晶球が?」

「はっ。その通りにございます」

それを聞いたヒカル王は絶望する。出来れば捜索の手助けをしたいが、流転の國の『魔力探知』をもってしても見つからないマヤリィ様をどうやって探せば良いのだろう…。

「クラヴィス殿。マヤリィ様は…桜色の都にいらっしゃる可能性が高いと言いましたね?」

「はっ。我が國の書物の魔術師がそう申しておりました」

それはミノリが『長距離念話』でシャドーレから聞いた話だが、クラヴィスはその情報源をすっかり忘れている。

ただ、ミノリが何度も「マヤリィ様は桜色の都にいらっしゃるわ!」と言っていたことだけが記憶に残っている。

「ならば、我が国が総力を上げてお探ししたい…と言いたいところですが、何も手がかりがない状態では、この国の領土は広すぎていくら時間があっても足りないでしょう」

ヒカル王は言う。

「とはいえ、このまま何もしないわけにはいきません。早急に、王都全域を捜索するよう白魔術師部隊に命じます。万が一のことを考えると、回復魔法に長けた者を派遣するべきだと思うのです」

桜色の都には白魔術師部隊も存在するらしい。分かりやすく言うと医師で編成された救急隊だ。

「我が国は攻撃面では脆いですが、白魔術の適性を持つ者は数多くいる。その為、白魔術師部隊は『クロス』とは比べ物にならないほど人数が多いのです。まぁ、斯く言う私も白魔術師ですが」

その時、クラヴィスはシロマから託された宝玉のことを思い出す。

「陛下、突然で申し訳ないのですが、流転の國唯一の白魔術師から預かった宝玉がございます。ぜひ陛下にお渡しして欲しいとのことですので、どうかお受け取り下さいませ」

そう言ってクラヴィスが宝玉を取り出すと、それを見たヒカルは驚く。

「これは…『全回復』の術式…!?」

「はっ。一度きりですが瞬時に『全回復』魔術を発動することが出来ます」

クラヴィスはすぐに術式を理解したヒカルに驚きつつ、一応説明する。

「もしや、これは貴方が活躍した西の国境線のモンスター討伐の際に一緒に来た白魔術師殿の『宝玉』ですか?」

あの時、壊滅しかけた『クロス』の魔術師達に対して広範囲の『全回復』を発動し、皆を無傷で帰還させたという桜色の都のもう一人の英雄、というか救世主。任務完了後はすぐに流転の國に帰ってしまったと聞いたが、同じ白魔術師として、ヒカルはその人物に興味を持っていた。

「まさか白魔術師殿まで『宝玉』を作り出すことが出来るとは…。あの時は会えませんでしたが、次にクラヴィス殿がこちらに来る時は一緒に来てもらえませんか?」

「か、畏まりました…。彼女はあまり公の場に出たがらないのですが…陛下のお望みとあらば連れて参ります」

クラヴィスは心配になったが、彼の言葉を聞いたヒカル王は嬉しそうに微笑むのだった。


「クラヴィス、只今戻りました!陛下は再び盟約を結ぶことを前提に首脳会談を開くとおっしゃっていました!それと、宝玉を作った白魔術師殿に会いたいと仰せでしたので、今度私が都に行く時はシロマも一緒に来て下さい!それから、王都の白魔術師部隊が……」

「落ち着け、クラヴィス。情報量が多すぎる。ひとつずつ分かりやすく説明しろ」

流転の國に帰ってくるなりヒカル王と話した内容の全てを一気に説明する勢いのクラヴィスに、ルーリが呆れた顔で命じる。

しかし、既にクラヴィスの話のひとつに反応した者がいた。

「クラヴィス。今、陛下が私に会いたいと仰せだったと言いましたか?」

「はい。『全回復』の宝玉を作った白魔術師殿にぜひとも会いたいとおっしゃっていましたよ」

「無理です…!私には…そんな…畏れ多い…」

シロマは恐縮する。

「落ち着け、シロマ。その話は後で考えるぞ。…で、クラヴィス?優先順位は任せるから落ち着いて分かりやすく報告しろ」

「はっ!畏まりました、ルーリ様!」

こいつ、ヒカル王に会えたのが嬉しくて興奮してるな…。

と、ルーリは思った。


「ルーリ…クラヴィスが帰ってきたの…?」

部屋に戻ると、ベッドに寝ているミノリが声をかけてきた。

「ああ、今さっきな。桜色の都と再び友好国になれそうだ」

ルーリは真っ先にミノリの傍へ行くと、そう報告した。

「よかった…。これで、皆も桜色の都に行けるようになるわ…」

ミノリは弱々しい声で言う。

「でも、マヤリィ様はどちらにいらっしゃるのかしら…」

「クラヴィスによれば、桜色の都の白魔術師部隊に王都全域を捜索させるとヒカル王が言ってくれたらしい。こちらの『魔力探知』が機能しない以上、人員を割いてもらえるのは有り難いことだ」

ルーリはそう言うと、優しい眼差しでミノリを見る。

「必ずマヤリィ様を見つけ出して『宙色の耳飾り』を受け取って頂く。そうすれば、お前の身体も治るはずだ。…つらいだろうが、もう少し待っていてくれ」

「ありがとう、ルーリ……」

ミノリはもう起き上がることも出来なかった。

抱きしめて欲しいのに、身体が動かない。

その時、

「っ…?」

「たまには、私も寝る。朝までお前と一緒だ」

ルーリはそう言って布団の中に入ってきた。

そして、ミノリに寄り添い、

「温かいな、ミノリ…」

そう言ったかと思うと、自分の方が先に寝てしまった。

妖艶なドレス姿のまま、女神は静かに眠っている。もしかしたら、彼女はナイトウェアというものを持っていないのかもしれない。

「温かいのはルーリの方よ…」

ミノリは幸せに包まれた。

すぐ傍にルーリがいる。今は独りじゃない。

「ルーリ、ありがとう……」

ミノリは彼女の美しい寝顔を見ながら、心が安らいでゆくのを感じた。

いつの間にか『長距離念話』のこともシャドーレのことも忘れてしまっているクラヴィス。

シャドーレが帰ってきたあの日に保護した人物と「追放されたマヤリィ様」が結び付かないヒカル王。

国交回復は出来たものの、依然としてマヤリィを探すのは困難な状況です。


そして、流転の國内部では、ミノリが完全に消えていない猛毒魔術に冒され、一刻も早く『宙色の魔力』を発動しなければ命も危うい状態になっています。…水晶球の嘘つき!


ルーリが睡眠をとるのは、基本的に魔力を大量消費した時だけですが、今日はミノリの傍に居たかったみたい…。

ピンヒールだけ脱いで、ドレスのまま眠るルーリです。

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