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第四百十四話 日輪

 赤様は俺と弁財天が背中に乗ると、周囲にフィールドを張ってくれた。そうすることで、ダンジョンの中は宇宙空間でも空気があるようだったのを塞いでくれた。普通にそのまま飛ばれていたら、俺はもちろん弁財天でも耐えきれない。


 音速の壁など軽々と破り、このダンジョンの宇宙とでも呼ぶべき場所にいても速いと感じる。景色が後ろに流れていく。そんな中で想像していなかった光景が目の前にあった。丸い球体に囲まれ、真っ平らな大地を持つ空間。


 そんな巨大な球体がダンジョンの宇宙には無数に浮かんでいた。ガラス玉の中に世界を作った。昔の人が考えていたような世界観。そんな不思議な球体が赤様が飛んで行く先々に見られた。その光景を見て見覚えを感じた。


 何しろそれは、


「ストーンエリアだ……」


 無数の考えられないほど数多くの巨大なガラスの球体が、ダンジョンの宇宙空間の中にいくつも浮かんでいた。


「驚いた?」

「驚いた」

「実は私も話には聞いていたけどこうして見るのは初めてなのよ。ちなみに日輪に近づくほどストーンエリアの浅い部分になっていくそうよ」

「こんな風になってたんだ……じゃあブロンズエリアより下に行ったら?」


 ダンジョンの構造というのはよく理解できずにいたが、こんな風にダンジョンの宇宙にあちこち浮かんでいるものなのだ。そしてそれらがきっと空間をつないで行き来することができるようになってるんだ。


「私たちブロンズエリアから飛んできたけど、日輪からもっと離れた向こう側には、無数のシルバーエリアとその対になるゴールドエリア。そしてさらにもっと向こう側にはルビーエリアの巨大な世界。そしてもっと日輪から離れるとサファイアエリアにダイヤモンドエリアがあるの。ダンジョンの宇宙空間には全てのダンジョンの世界が広がっている。そう言われてるわ」

「どれぐらい広いか分かってるのか?」

「一光年よりは広いんじゃないかって言われてるわね」

「一光年……」


 9兆4600億km。距離に直せばそれだけある。やはりダンジョンの中はよく理解できない世界だと思わされる。そしてダンジョンの中は俺が想像していたのより、はるかに広かった。


「ちなみにダンジョンの宇宙空間を渡って他のエリアに行くのは無謀というよりバカなのだそうよ」

「そっか……」


 その昔ダンジョンが現れた頃から、ダンジョンゲートはどこに繋がっているんだろうとずっと疑問だった。その疑問が解消していくのを感じる。そうするとこの空気すら存在する広大な宇宙空間は、そもそもどこにあるんだろう。


 次にはそんな疑問が湧いてきた。地球と空間的なつながりのある場所に存在したりするのだろうか。例えば天の川銀河のどこかにあったりとか。そんなことを考え出すと夢中になってくる。でもすぐに美鈴達のことを思い出して我に返った。


「楽しんでる場合じゃなかった……」

「そんな気分にはなれないわよね。祐太君。到着するまでの1週間どうするの?」

「また弁財天と修行と言いたいところだけど、今回はちょっと考えがあるんだ。自分の“中”でやろうと思う」

「そう。じゃあ残念だけど、私もそうするわ」


 蒼羅様に運んでもらった時のような修行を弁財天は考えていてくれたようだ。今回はそれはしない。自分の中に“あいつ”がいるからだ。俺は弁財天と少し距離を開けて赤様の背中に腰を下ろすと、目を閉じた。


 目の前にピンク色の髪をした女性がいた。



 日輪は遠い。それでも赤様の背中の上にいると、その距離がどんどんと近づいてきているのがわかった。日輪は最初、星の点のように見えていた。それが、徐々にその大きさを増していく。今は月ぐらいの大きさで見えるようになった。


 とても眩しいし暑い。まだ地球から太陽の距離よりも離れているはずだが、目の前にあるのではというほど熱量を感じる。赤様のフィールドも熱を防ぐようには作ってくれていない。普通の人間なら燃えて骨も残らない。


 それぐらい暑いのだ。これだけ距離があっても1万度ぐらいはある。この辺りの空間になると巨大なガラス玉の中に浮かぶ世界は、どこにも存在しなくなっていた。どんな世界もこんな場所にあったら生物など生きていけない。


 だからストーンエリアのガラス玉などあるはずはなかった。


「もう50億キロぐらいは飛んだのですか?」

「うむ。それはもうかなり以前に通り過ぎたぞ」


 たまに目を覚まして話しかけると赤様は意外と気安く教えてくれた。赤様が飛行して、3日後ほどにはもうダンジョンの宇宙空間には星などなくなっていた。


 ダンジョンには空気があるから本来ならばどれほど熱量のある存在でも、その熱を吸収されてしまうはずだが、暑い。いや、熱い。


「ストーンエリアにいた時。遠くに見える星の輝きは何なのかってずっと思っていたのですが、何のことはない。俺がいたストーンエリアと同じ空間が世界に浮かんでただけなんだ」

「そういうことだな」

「弁財天は、たまに起きているのですか?」

「ああ、たまに目を覚ましてはお前と同じく、お前の様子を聞いてくるぞ」

「そっか。赤様、弁財天に俺は元気だってお伝えください」

「了解した」


 外の様子が気になり、意識を自分の中から戻していた。煉獄獣バルガレオルが住んでいた場所を思い出す。あそこよりまだ高温なのだ。ゴールドエリアで出会った紅麗様が自分を封じていた理由がよく分かる。


 紅麗様ならばきっといるだけでゴールドエリアの世界そのものが燃えてしまう。


「今からだと神の争奪戦の時、信長たちが【黄泉孵りの卵】を諦めた理由がよく分かります。空気があってこの距離でそれでもこんなに熱を感じる。近づいたらどれほどのものになるのか、ちょっと怖いぐらいですね」

「想像通り。いやおそらく想像以上に日輪は恐ろしく熱いから覚悟しておくことだ。正直私は、お前たちでは無理なのではないかと思っている」

「そんなにですか……」

「お前たちを招待した以上、紅麗様は自分の熱を抑えようとはしてくれる。それ次第によっては近づけるとは思うが、それでもな……。先に言っておくが、失敗しても送り届けてはやるから死ぬ前に出てこい。でなければ帰りの話し相手がいなくなってしまう」

「赤様。失敗した後の話は考えておりません。俺はここでどうしても命をかけなければならないのです」


 でなければこの行動の意味が何もなくなる。


「覚悟は決めているのだな」

「はい。それにしても……みんな無事だといいんですが……」


 何度目になるかもわからないつぶやき。今の状況が気楽であればあるほど、焦りは募る。こんな場所から気にしたところで仕方がない。物理的な距離がどれほど開いていることか。俺だけで帰るならもう10年かけても帰れない。


 セラスがあの世界でうろついているのだ。本来ならセラスはもっと【災禍の手紙】で足止めできると思っていた。しかし想像以上に足止めの効果がなかった。【災禍の手紙】はレダがレガであった頃に生み出したアイテム。


 レダが製作したものなら、簡単にその効果を取り除くことはできない。それはたとえセラスであっても……。そして伊万里は手紙の効果でセラスたちの行動を全力で邪魔して、俺たちに内部情報を流そうとする……。


 セラスはそれを止めるのにかかりきりになる。そのはず……。しかし想像以上に早くセラスは前線に出てきて、ジャックと米崎が殺された。美鈴と榊だって……。俺は仲間を見捨てたかもしれない。


「本当なら助けられなくても助けに行くべきだった……」

「衝動に駆られて動いたところで、お前が死んで、全てが最悪な形に終わっただけであろうよ。それよりも、自分自身のことに集中しなさい」

「そうですね……」


 女々しい自分に歯噛みする。俺は一度目を閉じてから、すぐに開いた。


「赤様。もう着くまで目を覚ましません」

「頑張ってこい」


 赤様はちょっと寂しそうだったけどすぐに頷いた。全てが無事に終わればいろんなことをもうちょっとちゃんとしたい。美鈴や……そして扱いが宙ぶらりんになっている榊も……。


 俺の自惚れでなくて、榊が俺に恋心を持っているなら応えようという思いもあった。でもそれもこれも全て、自分が強くなり、全てを無事に終える力を手に入れられてこそである。俺はそのために座禅を組んだ。


 弁財天も正座をして目の前で目を閉じて手を静かに合わせていた。夫婦が2人でいて触れ合うことは一度もなく、たまに目を覚ました時だけ赤様と話をした。そして話が終わると、すぐにこの状態に入る。


 弁財天も自分の中に世界を作り、その中でひたすら自分の力に対する修行を続けているそうだ。そして俺の世界の中にはあいつがいた。今回の件には、協力してくれないかと思ったが、あいつは協力してくれた。


 本来なら絶対要求されるはずの見返りも“宿代”ということで免除された。



「——レダ』

「来たか……日輪はだいぶ近づいたか?」


 相変わらずの花園の中で、優雅に椅子に座って紅茶を飲んでいる。ピンク色の髪をした美少女は、今日も上機嫌だ。相変わらず、見た目の美しさと中身が一致していないなと思える。中身を知っているからそう思えるのか。


 知らなければただの美少女に……。いや、見えるわけない。きっと誰が見てもレダは美少女の皮をかぶった化け物に見えたはずだ。それぐらい笑みに性格の悪さが浮かんでいる気がした。


「お前は俺をいつも見てるんだ。外の様子ぐらいわかるだろう」

「会話をしているだけだがな。答えてくれないとは寂しくなってしまうぞ」

「もういいか?」


 話を切った。社交辞令のような挨拶は意味がない。


「ふん、つまらん」

「レダ。この行動に、意味はなくても自分は頑張ったって思いたいんだよ」


 嫌になるほどの無力感。ヒーロー思考で無鉄砲に突っ込めば良かっただろうか。何度も考えたがやはりそれでは死ぬだけだった。


「頼む」


 レダに頭を下げた。


「……まあよかろう」


 ここでは俺と大きさを変えず、見た目は人間の美少女となっているピンク髪のレダは、立ち上がるとその両手を前に出した。俺はその手に、自分の手のひらを開いて、ぴったりとくっつけた。


 行うことは【意思疎通】である。そこに思考加速を付け加える。現在の俺は従来の俺よりも思考加速させることで、自分の考えるスピードをAIを超えるスピードに上げることができる。そのため【意思疎通】をしている状態で思考加速する。


 弁財天達とかつて、蒼羅様の中で行ったことをレダとしている。


 レダは、


『このレベルでどれほど努力しようとも、レベル1500を超えるような相手には、大した意味はない』


 と言ってくる。そんなことはわかってる。でもやれるだけのことはやった。そう思うために努力を続けるのだ。レダは【意思疎通】の中で俺の目の前にいた。お互いこの空間の中では服も意味もないと裸だった。


 この状態でもなんの性的興奮もなかった。目の前にいるのはピンク髪の綺麗な女は、綺麗な皮をかぶった化け物なのだと、余計な感情は排除した。


《先ほどはどこまで進んだかな》

《レダの知る限りのダンジョン内の情報だ》

《おお、そうだったな。ちょうどロキについて話していた》


 ロキ……虚言神。噂レベルでしかその存在は知らない。この話が役に立つのかとも思えるほど、今のところ何の関係もない異国の悪神。それについてレダが話しかけたところで、前の話は終了していた。


 少しだけ聞いた話だがかなりの力を保有する悪神であり、ユグドラシル以外の国をいくつも破壊しているという。ロキに狙われた国はどんなに強い神がいようとも、最終的には滅びてしまう。それぐらい凄まじい疫病神らしい。


《ユグドラシルではこの悪神が最も恐ろしい存在という認識でいいのか?》

《それで間違いない。私よりも若いはずなのだがな。ロキが来てからユグドラシルは変わった。ユグドラシルでは神よりも悪神が強い。その原因もロキだ》

《関わりたくない相手だ》

《だろうな。私ですらロキは好きになれん。ユグドラシルではロキが現れるまで悪神が必ずしも神よりも強いというわけではなかった。むしろ最高神ゼウスの力は絶大だった》

《ユグドラシルはオーディンじゃないんだよな……》


 地球の神話として残っている中ではユグドラシルの最高神はオーディンだった。


《違うな。まあそれもこれもロキによってあちらの国がいくつも滅ぼされたせいなのだがな。始まりは才気に溢れていたゼウスが、ロキによって滅ぼされた世界からユグドラシルに逃げ延びたことから始まった。そこからロキの嘘が仕込まれた》

《嘘……虚言神の名前通りということか》

《そうだ。ロキの嘘は様々なものがある。キリスト教には7つの大罪というものがあるだろう。ロキはそれを面白がってな。その7つになぞらえて嘘を仕込むのが好きだ。ユグドラシルにおいてやられたのは、怠惰の嘘。頑張らずとも良いのだという嘘をゼウスの中に仕込んだ》

《どうなったんだ?》

《結果として真性の神にゼウスは届いたが、そこから止まった。そして一番トップが止まればどんなにレベルが上がった探索者の世界でも、下はそれに続いてしまう。悪神がやりやすい世界が誕生する》


 そうしてもうほぼ完全にロキの手のひらの上になり、ロキがその気になれば滅ぼすのは簡単だと、レダは続けた。


《ロキはいつも誰かを騙し、嘘を吐き続けなければ生きていけない悪神だ。ユグドラシルが滅びれば次はどこの国が狙われるであろうな》


 ロキ。全ての言葉に真実は一つもなく。嘘で塗り固めた存在。その姿すらも本当か嘘かわからず、常に喋っている言葉ですら信用できない。そんな存在なのだという。


《どんな風に嘘をつくんだ?》

《どんなというよりは、しゃべること全てが本当か嘘かわからん。通常、人が嘘をつけば綻びが出る。嘘が積み重ねれば積み重なるほど現実とのギャップは大きくなり、嘘を続けることが困難になっていく。しかしロキは違う。私が知る限り本当のことか嘘のことか一度でもはっきりしたことがない。はっきりした時にはその世界はもう終わっている》

《嘘つきとか、なんだか姑息そうにも思えるんだがな》

《それでも、その嘘であの男はブロンズエリアにある国を次々と滅ぼした。ある意味、勤勉なる悪神といえるだろう》

《他の世界にも真性の神はいて、それでも騙されるのか……》

《神であれ何であれ心には隙があるもの。ロキはその隙に入るのがとてもうまい》


 なんとも面倒な相手もいたものだ。ユグドラシルで出会わなければいけない悪神が、ロキでなかったことは本当に幸運だった。まだ一度も見たことのないロキという悪神。俺はそのロキになぜか興味を深く抱き、レダに情報を求めた。



「——以上の事からも100万年前からダンジョンが始まったという情報には信憑性があるな」


 今回の話はロキから始まり、最後に白蓮様が話したことについても聞いていた。究極系のこと、100万年前に戻ること、戻るために必要なこと、セラスという存在に対するレダの見解。


 神太陽・日蓮に到着するまでの1週間。俺の【意思疎通】の中で経過した時間は、1週間を軽く超えた。その間、レダの知識を頭の中に詰め込み続けた。そうすることが俺の今回の修行目的だった。


 修行に意味がないのなら、少しでも知識を手に入れる。それが一番ベストだと考えたからだ。おかげで俺はかなりダンジョンに詳しくなることができた。


「さて。お前との長話もそろそろ終わりのようだ。私は自分がおしゃべり好きだと自覚しているがな。さすがにこれほど長い時間、喋り続けたのは初めてだぞ」

「俺もだよ。自分が生きてきた時間よりも長く誰かとずっと喋り続けるとは思わなかった」

「であろうな。六条祐太。では目を覚ますといい。目を開けばその前には、日輪が輝いているぞ」


 レダの言葉を最後に目が覚めていく。弁財天はすでに起きているようで、俺ではなく赤様の進行方向を見ていた。俺もそれにつられて正面に目を向けた。そこには真っ赤に光り輝く太陽があった。


【神太陽・日輪】


 このダンジョンという広大な世界のエネルギーの大元となるもの。熱い。レベル907になり、熱に対する耐性も格段に上がった。それでも皮膚が焼け焦げては鳳凰としての再生能力で復活していってるのがわかる。


 この場所にいるだけで少しずつ自分の体力がなくなっていくのも感じられる。しかし同時に、鳳凰としての生命力が、削られたエネルギーを周囲からどんどんと吸収していく。そしてそれができるだけのエネルギーが周囲に溢れていた。


「息をするだけで体の内部から燃えてなくなりそうだ」


 吸い込んだ息が熱すぎて、呼吸を止める。改めて日輪をしっかりと見つめる。温度とは高くなればなるほど、色は赤ではなく青に近づいていくというが、日輪は真っ赤だった。この辺からしてダンジョンの中は物理法則がおかしい。


 雷神様が使用する紅い雷からして、物理法則がおかしいので、その点に関して突っ込んだところで仕方ないのかもしれない。日輪から感じられる純然たる濃いエネルギーが1つにまとまっている。


 たとえ日輪が超高温でなかったとしても、以前の俺だったら気分が悪くなって立ってられなかった。エネルギーが強すぎて毒気になっている。


 ブラックホールというものが目の前にあったらこんな気分になるんじゃないだろうか。真っ赤なのにどこまでも力が強すぎて、闇のように深く暗く思え気味が悪いとすら思えた。


「本来は金色に輝いているらしいけど、紅麗様の影響で真っ赤に染まってるそうよ」

「日輪よりも紅麗様の方が上なわけ?」

「もちろん。私たちの認識だと紅麗様は日輪よりはるか上の存在よ」


 このエネルギーの塊みたいに思える存在よりもまだかなり上。いろんな意味で遠くまで来たものだ。


「六条祐太。案内はここまでだ。後は自分たちで行け」

「一緒に行かれないのですか?」


 かなり丁寧に俺は聞いた。


「招かれていないものは例え私であっても紅麗様のそばに近寄ることは許されない」


 赤様がそう呟くと、俺たちの体は赤様の目の前に移動していた。【強制転移】させられたようだ。日輪の前で赤様と向き合った。


「……赤様。誠にお礼を申し上げます」

「ありがとうございました」


 弁財天が頭を下げ、俺も頭を下げた。


「六条。その言葉はまだ早い。帰る時にどうするつもりだ?」

「ああ、そうでしたね……」

「ちゃんと送ってやるから帰ってくるのだぞ」

「はい。必ずそうします」

「良い返事だ。私は紅麗様より言われているのだ。用事が終わればまたここにおいで」


 どう見ても信じられないほどいかつい顔をしたドラゴンなのだが、どこか優しげに見えた。そして俺と弁財天様はもう一度頭を下げた。俺は鳳凰の姿に変化する。そして赤様から離れた。


 不気味なほどに赤い太陽。そちらへ引き寄せられるように飛んでいく。


「弁財天。熱は大丈夫?」

「ええ、私が今着ているこの着物ね。アイテム名【火除けの神衣】というの。熱耐性がとても高い上に、防御力もあって、とある方からお借りした貴重なアイテムなの」

「どんな人? っていうか神様?」

「大八洲国で私の1つ前に12柱になったお方がいてね。事情を話したらしばらく貸していただけることになったの」

「やっぱり強い人なの?」

「ええ、レベル1873。木花咲耶姫。祐太君の国だと火難除けの神様としても有名ね。昔からとてもお優しい方でね。大八洲国の女なのに性格がいいからとても尊敬されているの。私が今回のクエストで、手助けを頼める相手としては最大級の相手ね」


 日本の古事記に出てくる神様だろうか。失礼ながら知らなかった。これからも大八洲国とは関わっていくだろうから古事記や日本書紀は一度ちゃんと読んでおいた方がいいなと思った。


 そして【火除けの神衣】の効果だろう弁財天は俺よりもこの熱が平気そうだった。真っ赤な球体。日輪に向かって飛んでいく。真っ赤な炎を放つ、その中に小さな穴が1つ開いた。



「……持っていたよ……早くおいで……」



 そんな声が聞こえた。あの時聞いた紅麗様の声だった。なんとか到着することができた。ここで何としてでもセラスに対する有効な対抗手段を持ち帰らなければいけない。まずは【黄泉孵りの卵】。


 そして贅沢を言うようで悪いがそれ以上の何かを手に入れたいと思っていた。

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― 新着の感想 ―
木花咲耶姫は【火除けの神衣】との関連で「火難除けの神様としても有名」というかたちで書かれていますが、 世代による差があるのでしょうが、私の世代だと、諸星大二郎先生の漫画「マッドメン」や、「コノハナサク…
ロキさんこっわ
宇宙空間に空気があったら、そりゃあ熱伝わるよね。
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