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蛇の呪いをかけられたので解呪の為に全力で王位を目指します  作者: 蜜柑缶


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32 お茶会5

 何度か深呼吸をした。この緊張感は、そう、初めて魔物を討伐するために騎士コースのみんなと森へ入った時と似ている。


 騎士コースに入って三ヶ月ほどしたとき訓練の一貫で最初の実践はゴブリンやスライムを倒すことだ。地方の平民の同期達は地元で既に倒した経験がある者も多く、私のように全く初めての者は王都の貴族の中でも少なかった。貴族でも男は騎士として育てるためにある程度学院へ入る前に家で鍛えられるからだ。

 私も特例で鍛えられてはいたが王女であるため魔物を倒すのは危険だと言われて連れて行ってもらえなかった。

 

 初めて訓練で対面した魔物はゴブリンで、私は上手く倒せず引率していたアーネストに助けてもらった。

 

「さぁ、行きましょうか?ヴィヴィアンさま」

 

 私は意を決すると立ち上がった。

 

 もうあの時の私とは違う。

 

「お姉さま、ヴィヴィアンと呼び捨ててください♡」

 

「………ヴィヴィアン、行くわよ」

 

「はい!」

 

 段々と扱い方がわかってきたよ。結構雑な感じで良いかも。

 

 ちょっと出鼻を挫かれたが最初に向かったのはヴィヴィアンがさっき言ってた『ベルトナ国民の私達がリアーナ殿下の為に出来ることは何かを考える会』の初期メンバーのテーブルのようだ……出来るなら即時解散をお願いしたいところだが王位を狙うためには存続させ利用せざるを得ない。

 

「皆様、お姉さまが来て下さいましたよぉ」

 

 さぁどうぞと可愛く前に押し出され一瞬怯みそうになったが直ぐに立て直した。ここで尻込みしていては後が続かない、まだここは味方の陣地だ。

 

「では改めまして、ご機嫌よう皆様」

 

 ニッコリと王女らしく微笑みテーブルを囲うお嬢様達の顔を一人ひとり確かめた。みんなこの国の学院へ通うために親元を離れている娘ばかりだ。学院へ通う年齢は基本的に十三歳以上とはいえまだ幼さが残っている娘もいる。

 

「お勉強のためとはいえ見知らぬ土地で暮らすのは大変でしょうね」

 

「あ、あの、殿下。私は最近来たばかりですがお母様とこんなに離れたことがなくて」

 

 中でも一番若い娘が直ぐそばで顔を見上げて話しかけてきた。

 

「そう、お寂しいでしょうね。大丈夫なの?」

 

 ちょっと目が潤んでいる感じがする。綺麗に結い上げられた髪が数本乱れていたのでそっと直してあげた。

 

「あっ、ありがとうございます」

 

 その子はポッと頬を赤らめ下を向いた。

 

 可愛らしいなぁ……

 

 そう思って見ていると他の娘達がほぉ……っとため息をついた。

 

「絵になりますわ」

「本当に」

「ヤッテ頂きたいという衝動もございますけど」

「アレをこちら側から見るというのもいいですわね」

 

 数人がこっくりと頷き合っている。

 

 これは理解しようとしては駄目なやつだな、次に行こう。

 

 ごゆっくりなさってくださいねと言い残し隣へ向かった。

 席次表によるとそこにはパトリシアとイスラ姉様支持のお嬢様達が集まっているテーブルだった。

 パトリシアはテーブルの都合か家同士の繋がりか、ヴィヴィアン達と違うそこのグループに混じっていた。

 

「あら、パトリシアさま。もう気分は落ち着いた?」

 

「はい、お気遣い頂いてありがとうございます」

 

 私達がにこやかに話しているとそこへ他のお嬢様が口を挟んできた。

 

「どうしてリアーナ殿下は王位を継ごうとお考えになったのですか?前までは無関心なように見えましたのに」

 

 少し様子見な先制パンチだ。私はその娘を見ると困ったような顔をした。

 

「いけなかったかしら?あなたは私には王は向かないと思いますか?」

 

 聞き耳を立てていたのか、まわりのテーブルからざわっと何やらささやく声が聞こえる。

 

「いっ、いいえ!そうではなく、どうしてかと疑問に思いまして。イスラ殿下は直ぐに意思表明なさいましたから」

 

「そうね、イスラ姉様はサムエウ兄様がお亡くなりになって王が崩御された後フルール姉様が辞退してすぐに意思表示なさいましたものねぇ」

 

 イスラは七番目の王妃の娘だ。当時は少し勇み足な雰囲気が漂いそれをきっかけで混乱が始まったのだ。何となく上から順番だと思っていた王位継承権が実はエルデバレン王国法典によればそうではないらしく、皆が忘れ去りかけていた法典を持ち出しイスラ姉様は王位継承権を主張したのだ。

 

「イ、イスラ殿下は優秀で先見の明がおありになって皆様より先んじて主張なさったのだと思っております。他の方は遅れて追随なさいましたけど」

 

 今の混乱のキッカケがイスラだということは誰の目にも明らかな事実だ。それが良いか悪いかは別問題だが。

 

 私が優秀でないと言われたと思ったのかヴィヴィアンがムッとした顔を隠すことなく言い返した。

 

「まぁ、優秀な方というのは時折空気を読まないことがありますけど、まさか既に準備万端だったなんてこと、イスラ殿下に限ってはそのようなことありませんわよね」

 

 王が崩御されて、七日経たないうちに意思表示したイスラに気分を害した者は少なくなかった。まるで崩御されることが分かっていたかのようだった。

 

「まぁ!よくもそんな事を!」

 

「あら、なんですの?何かお気に触りました?イスラ殿下はそのようなことは無いと言っただけですけど」

 

 お互いに一歩も引かずに睨み合い会場が静まりかえる。どうにも収拾がつかない感じだ。

 

 仕方がない、やるか。

 

 私は諦めてヴィヴィアンの肩をキュッと引き寄せた。

 

「ほら、もういいでしょ?他のお客様を放って置いてはいけないわ」

 

 ヴィヴィアンはそれでも何か言いたかったのか悔しそうに私を見上げた。

 

「でも……」

 

 私はヴィヴィアンの身体をこちらへ向かせるとぷにぷにと頬を突いた。

 

「早く私の可愛いヴィヴィアンに戻って笑顔を見せて」

 

 ヴィヴィアンが頬を赤く染めて「はうっ」っと目を潤ませるのと同時に色々なところから悲鳴があがった。

 

「やっぱり見てるだけなんて我慢できない!」

「私もぷにぷにして欲しい!」

 

 会場が騒然としてさっきの騒ぎはかき消えた。ヴィヴィアンと言い合っていた娘まで一瞬ポッとしていたのでこのお茶会に招待されている時点である種の(へき)が潜んでいるようだ。

 

 そこを的確に突ける私って大丈夫なんだろうか……

 

 

 

 

「皆様、ご機嫌よう。先程は騒がしくしてしまってごめんなさいね」

 

 マクシーネ支持者のテーブルへやって来たが何故か少し雰囲気が違った。他よりも緊張感がありお互いに顔を見合わせ誰が何を言うか窺いあっているようだ。

 

「どうかしましたか?何かお気に召さないことでも……」

 

「いいえぇ!!何もございません。本日はお招きありがとうございます」

 

 変な緊張状態で主催者のヴィヴィアンを見て挨拶をし、私をチラッと見ている。

 

「まぁまぁ、大丈夫ですよ。先程ご覧になった通りお姉さまはとてもお優しい方ですから、そんなに緊張なさらなくてもつまらないことでお叱りにはなりませんわ」

 

 は?叱るとは?

 

 ヴィヴィアンの話によるとマクシーネ姉様は少しでも無作法であったり気に食わないと文句を言ったり話し掛けても聞こえないふりをしたりして傍に寄せないそうだ。そういえば母娘共々意地悪な物言いをよくしてるわ。

 

「マクシーネ姉様はこだわりが強いですから、周りは大変ですものね」

 

 側にいたお嬢様の肩にそっと触れクスッと笑った。

 

 私にも覚えがあるよ。

 

 するとその娘は私の言わんとすることがわかったのか思わずという感じでクスッと笑った。一気にテーブルの雰囲気が変わりリラックスした感じが漂い出した。

 

「今日はそんなこと気にしないで楽しんでね。このお菓子は菓子店『パルス』のまだ売り出していない物で西の国で流行っているマカロンというお菓子なの。良ければ感想を聞かせて」

 

 西方の国で流行ったものは必ずエルデバレンでも流行る。それを聞いた他のテーブルの客達も一斉に菓子に手を伸ばした。今迄私の動向を注視しすぎて誰も食べて無かったようだ。

 

「まぁ、可愛らしい形ですね」

 

 先程一緒に笑ったお嬢様がコロンとした丸い形のクリームが挟んである焼き菓子を手に取り一口かじった。

 

「サクッとして軽い口当たりでいくらでも食べられそうですわ」

 

「本当に!それにクリームもサッパリして美味しい」

 

「あら、これはお味が違うわ」

 

 会場のあちらこちらから上々の意見が聞こえてくる。さっそくガルムに知らせて早く売りに出すよう言っておかないとね。

 

 その後も各テーブルを回ったがオスカリの支持者とは王位に関しては話しすらでず、それ程力を入れて無い感じが見て取れた。だったら何故王位継承権を主張したのか疑問に思うが私自身はじめは母上が勝手に進めていた話だったので同じかなと思った。

 

 ゲイル支持のテーブルとは和やかな感じで話すことができた。そもそもゲイルと私は結構仲がよく行き来もある。ゲイルが騎士コースに見学に来たときも一緒に学びたいと可愛く話してくれていた。最近は私が少し自分の事で忙しくしていたためあまり会えていない。

 

「ゲイル殿下はリアーナ殿下の事をとても慕ってらっしゃいますね」

 

 ひとりの娘が微笑ましそうに話す。

 

「そうなの、たった一人の弟ですもの。可愛く思っています」

 

 皆がそうでしょうねぇと頷き何事もなく終わった。

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