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蛇の呪いをかけられたので解呪の為に全力で王位を目指します  作者: 蜜柑缶


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23 学院4

 経理の講義が終わって直ぐにジャクソンに手招きされた、勿論ナザリオも一緒に。

 

「この後は講義はないですよね。このままさっきの罰として片付けを手伝ってください」

 

 私達は教室内の片付けを済ませた後も次の講義に使う為の資料作りまで手伝わされた。

 ナザリオは他の講義を受けてはいないが午後からは騎士コースの訓練に参加するつもりだったろう。私も午後からお茶会の補習がある。

 

「先生、これはいつまで手伝えばいいのですか?午後から補習があるのですが」

 

 なかなか解放してくれない感じでちょっと焦る。お腹も減ったし。

 

「リアーナ殿下は私に感謝して下さっていいですよ。あのまま直ぐに殿下を廊下に放り出せばきっと我こそは階級にこだわらない貴重な存在だと喚く生徒達に取り囲まれ揉みくちゃにされ挙句の果てに救出に来たアーネスト様に切り倒された生徒達の(しかばね)が積み上げられていたでしょうから」

 

 ふんっと鼻をならすジャクソンは時としてオーバーな物言いで何かをごまかす癖がある。何故かナザリオもうんうん頷いてるけど意味わかってる?っていうかどこから話を聞いていたんだ。

 

「何を仰っているかよくわかりませんが、私がどうあろうとアーネストは関係ないと思いますが」

 

 手にした資料を揃えるために机でトントンと慣らしながら答えた。部屋の中にその音だけが響き何故かナザリオとジャクソンが顔を見合わせている。

 

「本気で言ってるのか?」

 

「不遜ながら殿下は時折恐ろしく鈍いと言われることがあるでしょう」

 

 馬鹿にされてる?

 

「話の意味はわかっておりますよ、だけど私と親しくなりたい者などそれほどいるわけがないと言いたかったのです」

 

 ジャクソンは少し考え込むと私を椅子に座らせその前に自らも座った。

 

「殿下はかなり偏った生活をしてきたせいでかなり偏った考え方をしてるようですね」

 

「先生、考え方というよりは知識が足りないというか、情報不足なのでは?」

 

 ナザリオの意見になるほどと頷き改めて私を見た。

 

「実際のところ王家のお子様方の中で皆が一番興味をそそられているのはリアーナ殿下です」

 

「興味……どういうことですか?」

 

 私はただただ騎士団へ入るべく鍛錬をしてきただけだ。体質的に鍛えてもガタイは良くならず騎士団へは入ることは出来ないが。王女であることも邪魔してるし。

 

「王族のお子様方はそれぞれ注目の的ですがその中でもリアーナ様が一番世間の目に晒されていません(・・・・・・・・)から」

 

 そうだっけ……まぁ今回のお茶会の件にしてもそういう事で皆が珍しがってるのかな。

 

 ナザリオがため息をついて肩をすくめた。

 

「ピンときてないみたいだな。上手くやってるよ」

 

 ジャクソンも同意するように頷いていた。

 

「本当に、のびのびさせているようで世間からは隠されている。待てよ、よく考えたら恐ろしくなってきた……あなた達ここはもういいから行きなさい。これ以上ここにいると余計な事に巻き込まれそうだ」

 

 急に何かに気づき急かすように二人共部屋から追い出された。廊下はもう講義の最中なので静かで誰の姿も見えない。

 

「よくわかんないけどお腹すいたわね。食堂に行きましょう、貴方も食べてから次へ行くんでしょう?」

 

「あぁ、ここなら食費を気にせず食べられるからな」

 

 学院の食堂は学生なら誰でも無料で利用できる。裕福でない特待生などにはにはかなり好評で席を確保するのは結構大変だが、まだ昼休み直前の講義が終ってない今なら空いているだろう。

 

 エミリオは後ろからついて来ていて、ナザリオと二人で並んで歩きながら食堂へ向かっていたがその途中でふと中庭が目につき、コレットが中庭で呪いをかけられたと言っていたことを思い出した。一緒に話を聞いていたエミリオも私が考えていることに気づいたのかゴホンと咳払いをした。

 

 ちょっと探ってみたかったが今は止めておいた方がいいか。

 

 何とか思いとどまり食堂へ向った。

 

 大きく開かれた入口から中を覗くと思った通り人はまばらだった。席を確保しようと中へ入ると、こちらに気づき見ていた女生徒達がその視線を私達の後ろに向けると小さく悲鳴をあげた。やな予感がする。

 

「ここにいたのか」

 

 ため息をつきそうになるのを何とか我慢するとゆっくりと振り返った。

 

「アーネスト……先生、何か御用ですか?」

 

 音もなく逃げようとするナザリオの上着の裾をぐっと握りしめ作り笑顔をした。

 

 キラキラしい銀髪を輝かせ切れ長の目にスッと通った鼻筋と薄い唇の端正な顔をまともに見ては目がくらむ。笑顔を作ると見せかけて目を細め視界をボンヤリとさせながらジリジリと後ろへ下がっていく。

 

「話がある、これから一緒に食事をどうだ?」

 

「は?」

 

 ビックリして目を見開くと眩しくて目が潰れそうになった。

 

「い、一緒に食事ですか?」

 

「何か都合が悪いか?」

 

 ここ最近、特に半年前に例の話をして以来アーネストとはまともに向き合っていないどころか、この前の馬車の中ぐらいしか個人的に話すらしていない。その前からも最近はそれほど交流がなかった為、私的にはそろそろ破婚でもするんじゃないかと密かに思っていた。

 

「わ、悪いです。今からナザリオと一緒に食事をする予定です」

 

 必死に逃げようとしているナザリオの上着を引き寄せ腕をガッツリ掴むと見せつけた。

 

「うわっ、離せ!俺は……いえ、私は急用を思い出しましたから今すぐにここから離れなければいけません!ですからリアーナと……殿下と食事は出来ません」

 

 首をぶんぶん横に振りながら私を振り払おうと頑張るナザリオ。

 

「こう言っているのだから構わないな」

 

 アーネストは素早く近寄ると私の手を握りナザリオから引き剥がしそのまま引きずるように食堂から連れ出された。

 

 ナザリオ!ホッとした顔するんじゃない!!

 

「エミリオ!助けて!!」

 

 護衛の役目を果たすように手を伸ばしたが何故か微笑ましそうに見ながら悠々とついてくる。

 

 私が窮地に陥っているのがわからないの!?

 

 そのまま誰にも助けられることなく学院にあるアーネストの部屋へ連れて行かれるとそこには既にテーブルがセッティングがされていた。

 

「あまりゆっくりと出来ないから料理は全て先にテーブルに並べさせるが構わないな」

 

「はい……構いません」

 

 本来なら一皿ずつ運ばれる料理を先置きにして時間短縮するのは大歓迎だ。二人きりの食事なんて幼少の頃以来じゃないだろうか。

 

 一応の婚約者ではあるし護衛のエミリオもドアの外へ出した。無言で食べ始めた部屋の中に、カトラリーの控え目な音だけが響いている。一体何の話があるのか気になり時々目だけでアーネストの様子を窺うがその表情は全く読めない。

 

「お茶会を開くそうだが?」

 

 急に話しかけられ思わずナイフを落としそうになる。ここで失態を冒せば何を言われるかわからない。

 

「お茶会ではなく、貴婦人コースの補習です」

 

 動揺を隠しナイフを握り直した。

 

「あぁ、君は騎士コース以外は疎かにしていたからな」

 

 自分は幾つも同時に並行して講義を受けても成績優秀でしたものね!

 

「最近は反省してキチンとこなしております。ただ、実習の場合は時間が取りづらくて……」

 

 これまでのツケが溜まっていただけに言い訳がましく聞こえて恥ずかしさが込み上げる。

 

「だが補習に参加する人数を制限し厳選された者だけが出ることが出来ると言われているのは本当なのか?」

 

「それはフランソワーズ先生が決めたことです。本来の補習受講者は五名で、それでは内容が簡単すぎると不平の声があがった為です」

 

 席の争奪戦が起きたことまで感知しているのだろうか?そんな事を気にするなんて一体何を考えているの?

 

 私が不審に思っているとアーネストがこちらをじっと見た。

 

「では君が意図して上位貴族の娘達を補習と称してお茶会を開き懇意になろうとしているという噂は間違いなんだな?」

 

 その言葉に今度こそナイフをガチャリと落とした。

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