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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第三幕 スラム調査編

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第31話 救出と帰宅

「……先に進まなきゃ」


 足元の倒れた男たちを地面のように踏みつけながら、リーネは洞窟の中をさらに進んでいく。

 考えることはなにもない。ただ、先に進まなければ。そういう思いだけが残っていた。

 やがて、洞窟の奥に小さな明かりが見えてきた。

 明かりに近づいていくと、そこには小さな牢屋があった。


「……ひっく」


 中から鳴き声が聞こえた。

 明かりによって照らされた牢屋の中には、数人の子どもたちと一人のシスター服を着た女の子が見えた。


(アリア……)


 リーネはその姿を見て、ほっと息をついた。

 同時に熱くなっていた胸の中が、すっと冷えていくのを感じた。


(こんな姿は……見せられませんね)


 見せられないではなく、見せたくない。

 そんな思いに駆られたリーネは、死神の姿になり黒いフードを深く被った。


「……」


 無言で牢屋に近づいていく。


「……? ひっ!」


 中にいた子どもたちがリーネに気が付き、短く悲鳴を上げた。


「ひっ!? 助けて!」


 怯えた子どもたちが一斉にリーネから距離を取った。


「……お、おちついて!」


 アリアが子どもたちをなだめようと頑張っている。

 その姿を見ながら、リーネは牢屋に手をかけ、力を込めた。

 ガキン、という音とともに、牢屋の鉄格子が外れた。


「ひゃあっ!?」


 今まで囚われていた檻が壊れたのに、子どもたちはますます怯えてしまった。


(これでよしです……あとはアリアに任せましょう)


 ちらりとアリアに目を向けて、リーネはそのまま後ろを向いて歩き出す。


「……へっ? あの……」


 後ろからアリアの声が聞こえた。

 それでも、リーネは振り返らない。


「……待ってください!」


 自分を呼ぶ声、駆けてくる足音。

 その直後に背中に感じる柔らかく温かい感触。


「……」


 さすがのリーネも足を止めて背中を見る。


「ありがとうございます! 助けてくださったんですよね!」


 アリアがリーネに抱きついていた。

 リーネはアリアの手をそっと外し、振り返った。


「……」


 アリアの瞳には怯えの色はない。あるのはリーネに対する感謝だけ。


「……私のせいで捕まったも同然ですから」


 リーネは思わず、俯いてしまった。アリアがあまりにも眩しすぎた。


「そんなことありませんよ! 悪いのはあの人さらいたちです!」


 アリアは強い口調で言い返してきた。


「それに、助けに来てくれると信じていましたから!」


 それは無条件の信頼だった。


「……」


 リーネはその言葉に胸が熱くなった。


(そうか、そうですよね……)


 この時、ようやくリーネは理解した。


「……友だちですから」


 友人関係。それ以上でも以下でもない。

 噛み締めるように呟いたリーネに、アリアが満面の笑みを浮かべた。


「さあ……おっと……」


 リーネはアリアの手を取ろうとして、ふと気がついた。


(見られたくないだなんて……私らしくありませんでしたね)


 リーネは、ゆっくりとフードを外し、顔をアリアに、そして子どもたちに見せた。


「……あっ!」


「あれ? ……お姉ちゃん?」


 子どもたちはリーネの顔を見て、驚きの声を上げた。


「よくも怯えてくれましたね。傷つきましたよ」


 リーネは笑いながら、子どもたちに一歩近づく。


「せっかく助けに来たんですよ? もっと嬉しそうにしたらどうですか?」


 リーネの言葉に、子どもたちはぽかんとした表情を浮かべた。

 しかし、すぐに言葉の意味を理解したのか、歓声を上げた。


「やった!」


「助かったの?」


「お姉ちゃん! ありがとう!」


 さっきまで怯えていたのが嘘みたいに、子どもたちはリーネに駆け寄ってきて、取り囲んできた。


「おやおや、調子のいいことで」


「ふふっ、良かったですね」


 リーネとアリアは目を合わせた。


「さあ、改めて、帰りましょうか。こんな辛気臭いところにいたくはないですからね」


「はい! 帰りましょう! 私たちの家に!」


 リーネはアリアの手を取り、洞窟の外へと歩き出した。

 その後ろからは歓声を上げる子どもたちが続いていた。



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