第24話 突入と無双
「貴様何者だ!?」
倉庫の中にいた三人の荒くれ者たちが一斉にリーネに向かって叫んだ。
「さて、何者でしょう? 自分が何者だとはっきりと言い切れる存在などいるのでしょうか?」
その問いに対して、リーネはわざとらしく首をかしげた。
一見すると、可愛らしくも見えるその仕草だが煽りでしかない。
「ふざけるな! ここをどこだと思ってやがる!」
「あら? 先程の私の言葉が聞こえなかった、いえ、理解できなかったんでしょうか?」
ここがどこかなんてことはもうわかっている。
「どうも暗殺者ギルドの皆さんですね。おっと、残念ながらそれは効きませんよ」
喋るリーネの背後から、その首を狙って切りかかってきたナイフは、リーネの首に当たると、まるで何かに弾かれたかのように跳ね返された。
(素晴らしい対応ですね)
どうやら一瞬のうちにリーネが脅威だと理解して、隠れて攻撃の機会を伺っていたらしい。
襲いかかってきた男は一瞬戸惑ったようだったが、次の瞬間には姿を消していた。
「まったく、話している最中に攻撃を仕掛けてくるなんて、マナーがなっていませんね」
何事もなかったかのように、リーネは涼しい顔で続ける。
「しかし、これで正当防衛が成立しますね。あなたたちが私に攻撃を仕掛けてきたのですから、やりかえされても文句は言えませんよ」
なお、最初に扉をぶち破ったのはリーネである。
「襲撃だ! ボスへ報告しに行く! お前らは足止め……いや、処理しろ!」
荒くれ者の中のリーダーらしき一人が叫びそのまま奥へ走っていく、残りはリーネへと襲いかかってきた。
「ふふっ、さて、色々と試してみましょうか」
この機会にリーネは色々と死神の力を試すつもりだった。
「まずはあなたですか。あなたにはこれでお相手しましょう」
まず向かってきた細身のナイフを持った男にリーネは指を指す。
その瞬間、リーネの指先から黒い光が飛び出し、男の胸辺りに命中した。
「ぐはっ!」
打ち込まれた黒い光は大した大きさでもなく、威力もさほどでもなかったが、男は口から血を吐いてそのまま倒れ込んでそのまま動かなくなった。
そして打ち込まれた部分から黒い煙が吹き出し、そのまま身体が枯れていく。
リーネに向かっていたもう1人の男が、倒れた男を見て立ち止まった。
(まず一人目です)
「なんだ! 毒か!?」
「ええ、正解です。もっとも通常の毒とは言えないかも知れませんがね」
リーネはから放たれた毒は、死神の力で作り出したもので、簡単に言えば生物から生命力を排出するという効力を持っている。
「……ぅ」
「生きているのか!?」
黒い煙が吹き出して枯れていく部分は魂石と一緒だが、これの恐ろしいところは生きたまま身体が枯れていくという部分にある。
「ふむ、これは便利ですね」
倒れ込んでしまった男を見下ろしながら、リーネは楽しそうにそういった。
その表情はまるで子供が新しいおもちゃを手に入れてはしゃいでいるかのようだ。
「さて、あなたはどうしましょうか……そうだ、どうせだったら……」
リーネはそのまま悠然と男へ近づいていく。
「……っ!」
男はリーネが近づいてくるのを見て、即座に臨戦態勢に入った。心地の良い殺気を感じ取ったリーネは思わず微笑んでしまった。
「ふっ!」
その瞬間、男のナイフがリーネの胸を貫いた。
リーネの胸から血が吹き出す。
「ほほう、ふむ」
それでも、リーネは驚くことなく、自分の胸に刺さったナイフを珍しげに見る。
「なるほど……いい腕ですね。間違いなく心臓に刺さっていますよ」
なんとなく感覚でわかった。これは普通の人間であれば、即死してもおかしくない。
「ですが、どうやら私には効かないようですね」
リーネはそう言いながら、ゆっくりと自分の胸に突き刺さったナイフを抜く。
(痛みも一瞬ですみましたね)
その瞬間、リーネの胸の傷口が塞がっていく。さらに切り裂かれたローブまでもが戻っていく。
「これは便利な身体ですね」
「なんなんだよ! お前は!」
さすがのこれには男も恐れおののいたのか、後ずさりを始めた。
「何って襲撃者ですよ。あ、これ返しますね」
リーネはそう言うと、引き抜いたナイフを男に向かって投げつけた。
男はナイフを掴もうとしたが、なぜか男の手を突き抜け、男の身体まで突き抜けた。
「ど真ん中ピッタリというところでしょうか」
心臓を貫いたナイフが壁に突き刺さると同時に男は倒れ込んだ。
(これで二人目です)
「さて……」
一旦、戦闘が落ち着いたと息を吐くリーネ。と、もちろん、そんなことはなく。
「ぐっ!」
ドサッとリーネの後ろから大きな音がした。
「おや、隠れていればいいものの」
くすくすと笑うリーネだが、もちろん、天井に張り付いていた男を落としたのはリーネの仕業だ。
死神の前には隠密など通用しない。
「せっかく生き残れるチャンスだったのだから逃げておけばよかったものを。しかし、こうしてとどまっていた以上、自殺志願ということでいいですよね?」
リーネは笑いながら倒れた男に近寄っていく。
「むぐぅ!」
男は必死で抵抗しているが、口も身体も動かない。これも当然リーネの仕業だ。
「あなたは……そうですね。この鎌の実験にでも付き合ってもらいましょうか」
リーネはスルスルと背中から大鎌を取り出すと、男の前に立った。
「知っていますか? 死神の鎌って単に魂石を作るだけの道具じゃないんですよ」
リーネは大鎌を振りかぶると、男の身体に向かって振り下ろした。
「こうやって、あなたの身体を真っ二つにすることだってできるんです」
きれいに2つに分かたれた男の身体からは血ではなく黒い煙が吹き出した。
「しかもですね。なんと、これでも生きたままなんですよ。ほんと便利な道具ですよね」
リーネは楽しそうに笑いながら、苦痛で顔を歪める男を見下ろしていた。
§
「怖すぎる……」
そんな様子を外から覗き込んでいたレイヴンが恐怖におののいたのは言うまでもない。




