転生したら勇者や魔王もただの人
今日も生徒会の仕事をする、何故か書記に任命されてしまってから数日がたつ、真面目で人当たり良い生徒会の面々、中でも会長は文武両道!質実剛健!自分に厳しく人に優しい男!彼こそ日本を背負って立つ逸材と思う人物だ、もと魔王でなければ…
何故気付かなかったのだろう、思えばいつからだ親がやたらこの学校に入学させたがり、有り得ない思い出話しに違和感を感じたのは、普通だと思ったんだけどなー。
ヤサグレ顔で仕事をしていると生徒会室に男子生徒が飛び込んできた!
「魔王様!大変です!」
「今の私は生徒会長です、どうしました?」
魔王…生徒会長は冷静に言い放つ、正直かっこいい。
「ゆ・勇者がまた、校内で喧嘩を!」
「ふぅ、またですか…」
急いで現場に向かうと、数人が倒れている真ん中に短ランにパーカーの男が立っていた。
「よう、魔王」
「今の私は生徒会長です、吉田君…」
「吉田じゃねー勇者だ!魔王!」
端から見たら中二病患者の争いだな…
「他校の生徒と喧嘩したり校内を物色したり…そろそろ退学になるよ」
「うっ!」
さすがの勇者も退学は避けたいようだ。
根本はともかくボクの日常を完全大破させたのは入学式だった。
親の謎の圧力で受験してしまった学校…最初はやたら中二病が多いとこだと思った、だって前世の恨みとかここでは魔法が使えないとかそんな会話がやたら多くかったし、悪魔将軍やら聖騎士とか言ってんだから仕方ない。
そして…
「それでは生徒会長の挨拶に入ります」
「みなさん、入学おめでとう!私が生徒会長の伊集院です、もと魔王の私をよく思わない人もいるでしょうが…
え?魔王?はあ?ここ中二病御用達?生徒会長だよね?困惑しているボクを他所に気づくと元魔王の挨拶が終わっていた、つーか終わらされていた。
「オラ!魔王!」
体育館の後ろの扉を全開にして入ってきた男が大声をあげる、生徒会長に詰め寄って行くと先生が男を取り押さえて言った。
「コラ!勇者…吉田!何やっとるか!」
先生が男を…って勇者?今勇者って言ったよね先生!吉田勇者?勇者吉田?
テレビで見る様な光景だが飛び交う言葉はアニメだった。
「離せ!モブ兵士!テメー俺が仲間に入れなかったから仕返ししてるな!」
「あっ!酷い!やっぱり俺の名前を覚えていな…教師に向かってなんたその態度は!」
「うるせえ!モブ教師!」
「酷いっス…あっちでも俺のこと…」
哀愁を漂わせながらも仕事をしているモブ教師、これ中二病とかじゃないのか。
入学式は中止になり、新入生は教室に誘導される、廊下を歩いているとフライドチキンのおじさんに似た人が歩いてきた、学園長だ!砂漠でオアシスを見つけた様に走り寄った。
「学園長!この学校の人達変なんです!」
「どうしたね?落ち着いて話してみなさい」
その落ち着いた雰囲気に安堵を覚え、話しを進めようとしていた時だった。
「国王!また勇者が問題を起こしています」
ん、国王?学園長だよね、国王だっけ学校の偉い人?
「落ち着きなさい、今のわしは学園長!何時までも大臣気分はいかんぞ校長」
おまえもかぁぁぁぁ!
安息の地が蜃気楼と化した俺に国王が話しを続けた。
「なんじゃ、両親からなんも聞いとらんか?」
ん!両親?そう言えば前世で二人は敵同士で父さんは悪魔だったとか、母さん僧侶でなんか悲恋の最後を二人で…ちょっと待て!ガチ!ガチなの?ラブラブ夫婦の幻想でなくて転生なの!
「…聞いてました、仲人をして貰ったそうでありがとうございます、国王様」
スルーしてきた設定を思い出し胃液を口に含みながら国王様に挨拶をする。
「君はこの学校で唯一純粋な現世人だから他の学校を進めたんじゃがのう、まあ何か困ったことがあったら言いなさい」
そうして国王様は去っていった。
教室に着くと元悪魔戦士の担任が来て挨拶がてらみんなの自己紹介が始まった、悪魔やモンスター、騎士や商人と軽い同窓会が始まりアウェイを味わっていると自分の番が来た…
「えー、悪魔将軍と僧侶の息子の…」
どうやらボクの両親はかなり有名らしく更に息子のボクも話題の人らしい、好奇の目が痛い、何をしゃべっているのか分からなくっていると凄まじい行き良いでドアが開いた!
「ここか?悪魔将軍と僧侶の息子がいるのわ」
やっぱり勇者だ、とりあえずこの学校で平穏に過ごすのは無理なんだと感じた。