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愛憎姉妹百合

 真白ちゃんは私達をずっと見つめている。私達がエッチするのを待っているのだろう。


「真白ちゃん……まさか今日一日中私達を観察するつもりなの?」

「勿論! そうすればいつかは見れるからね。二人共エッチしたくてたまらないんでしょ? だから早く始めてよ、そして僕に見せて!」


 冗談じゃない。そんなの一番他人に見られたくない光景だ。


「真白ちゃん、それはちょっと……」

「安心して、二人の間に挟まって邪魔するつもりはないからさ、部屋の隅で大人しく見ているよ」

「いや、そうじゃなくて……エッチを見せるつもりはないよ」

「何で? 恥ずかしいの?」

「当然でしょ! だってエッチしてる時の音とか……声とか……ああ! 恥ずかしいよ……」


 自分で言ってたら、エッチしてる時の光景が頭に浮かんで来て猛烈に恥ずかしくなってしまった。こんなの絶対に他人に見られたくない。


「ねぇねぇ、どんなエッチしてるの? どっちが受けなの? 性格的にはお姉ちゃんが受けで、姉御が攻めかな?」

「言わない! 絶対に言わないもん!」


 的中してる……ちょっと動揺してしまった。


「いいもん、聞かなくてももうすぐ見る事が出来るからね。楽しみだなぁ」

「その辺にしとけよ真白。彩果が困ってるだろ」

 

 みなもが強い口調で真白ちゃんに注意する。慕っているみなもの言う事なら大人しく聞いてくれるかも。


「姉御のお願いでも聞けないな。だってこれは僕の仕事に関わる事なんだから」

「仕事って……イラストの事か?」

「僕は師匠に恩返ししたいだよ。その為には百合シチュエーションを見て詳細に描く必要がある。二人にはその協力をして欲しいんだ!」


 彼女にとって新月は絵の技術を教えてくれた恩人だ。それでプロになる事が出来たのだから。そして新月に恩を返せる機会が巡って来た。私も応援してるしできることがあるなら協力してあげたい。


「でもさすがにエッチは見せられないよ……それ以外なら協力してあげられるけど」

「つまり二人がイチャイチャしてる所をずっと見てても良いんだよね!」

「エッチ以外の事ならね」

「じゃあキスして! 百合キスを描きたい!」


 それくらいなら見せてあげても良いかもしれない。私も新月の新作ラノベが早く読みたいからね。


「待てよ、何でお前に一々指図されなきゃならないんだよ。大体私達でなくても見れるだろ。女子校なんだから百合カップルが沢山居るんだろ?」

「……」


 真白ちゃんは下を向いて黙ってしまった。これで私達から手を引いてくれるかもしれない。


「……僕はね、お姉ちゃんと姉御がこの世界で最も尊い百合カップルだと思っているんだよ」

「え、そうだったの?」

「その二人のイチャイチャを絵として書き留めたいんだよ。そしてこの尊さを全世界に伝え広めたいんだよ。だから二人じゃなければ駄目なんだよ。協力して欲しいな」


 そんな風に思っていてくれたなんて知らなかった。みなもと私か世界一尊いだなんて……えへへ照れる照れる。


「真白ちゃんは見る目があるよ! さすが私の妹だね!」


 私は真白ちゃんに抱き着いた。そして頭を撫でてあげた。


「えへへ、お姉ちゃんに褒められるのが一番嬉しいよ」

「全く姉妹百合は最高だぜ! お前ら姉妹尊すぎんだろ!」


 なんかみなもが勝手に尊みを感じている。でもどうしよう。真白ちゃんは引くつもりはないみたいだ。


「真白ちゃん、どうしてもエッチが見たいんだね。物凄い執着心だよ。」

「お姉ちゃんが僕を選んでくれていればこんな事にはならなかったのかもね。もう遅いけどね」

「本当に私の事が好きだったんだね。性愛の対象として見てたんだね」

「お姉ちゃんは僕の憧れの人で、愛情の対象でもあり、憎悪の対象でもあるんだよ」


 何で憎まれなきゃいけないのか。私は真白ちゃんには姉としてちゃんと接してあげてたのに。目一杯可愛いがってあげたのに。向き合ってたのに……


「僕はお姉ちゃんの背中をずっと追い続けていたんだよ。僕が絵を描こうと思ったのはお姉ちゃんの影響なんだ。絵を描いて皆から凄い凄いって言われてるのを見て、僕もああなりたいなって……」


 知らなかった……それで新月に弟子入りした訳か。


「でも描けば描くほど、自分の才能の無さを思い知らされるんだ……そしてお姉ちゃんの凄さを実感するんだ。僕は、お姉ちゃんに嫉妬していたんだ」

「そんな事……真白ちゃんだって絵の才能あるよ、天才だよ。だってプロになれたんだから」

 

 そのプロになるのだって、真白ちゃんの方が早かった。私は五歳で描き始めて、十五歳でプロになった。それに対して真白ちゃんは九歳で絵を描き始めて十四歳でプロデビューを果たした。当時の私は驚かされたよ。だから私も真白ちゃんを尊敬していた、そして同時に嫉妬していた。


「なんか……私達って似た者同士だね。私も真白ちゃんに嫉妬してたんだよ、ずっと……」

「僕の何に嫉妬するのさ、お姉ちゃんの方が売れてるのに、評価されてるのに」

「私は十年かかったのに、真白ちゃんはたった五年でプロデビューしたから。そんなの嫉妬するに決まってるじゃん」

「でも売れてるのはお姉ちゃんの方じゃん」


 そんな事は気にしないで欲しい。好きな事を仕事に出来ているのだから楽しんで描いて欲しい。真白ちゃんだって十分売れてて、BL界隈ではカリスマ絵師扱いなのに……もっと自信を持って欲しい。


「僕はね、お姉ちゃんを困らせたいんだよ。一泡吹かせたいんだよ。実力じゃ勝てないからね。だから一番見られたくないエッチを見てやるんだ。ずっと張り付いてやるんだ!」


 なんて執念なんだ……これを本当に彼女一人で思い付いたのかな? 誰かの入れ知恵なのではないかと勘ぐってしまう。


「おお、これはまさしく姉妹百合! そして互いを意識して嫉妬し合う絵師の姉妹……好きだけど嫌い……ずっと見ていられるぜ!」


 何やらみなもが興奮している。丁度姉妹百合にハマっているみたいだ。


「これぞ愛憎姉妹百合だ!」


 ちなみに姉妹百合は私が最も好きな百合ジャンルだ。姉妹百合についてならずっと語っていられる自信がある。


「一口に姉妹百合と言っても、沢山のバリエーションが存在しているからね。最近はおねロリが好きかな」

「丁度私もおねロリにハマってるな」

「やっぱりみなもとは気が合うね! みなもー!」

「よしよし」


 ふと真白ちゃんに目をやると、食い入る様に私達を見つめていた。


「百合ハグは学校でもよく見るけど二人がすると尊みが違うしペンが進む。ありがとうお姉ちゃん、姉御」


 目をキラキラ輝かせている。百合観察をしている時の私も、他人から見るとこんな感じなのだろうか。


「ついでにこの勢いでエッチも見せてくれるとありがたいんだけど」

「絶対! 見せないんだから!」

「ラブラブの二人がいつまで我慢出来るかな? 僕は気長に待つ事にするよ」

 

 真白ちゃんはここに住み着くつもりらしい。ならば姉として面倒を見なければならない。無理矢理追い返すなんて出来ないもん。私って姉馬鹿だな。


「どうするんだよ、真白の奴……エッチを見るまで帰る気はないみたいだぞ」

「仕方ないよ、真白ちゃんが諦めるのを待つしかない。だから当分エッチは我慢してね」

「私は別に見られても大丈夫だぞ」

「私が駄目なの! そんな恥ずかしい所見られたくない!」


 多分人間が他人に見られて一番恥ずかしい行為だと思う。だからこういうのは愛する人にだけ見せるものなんだ。だから真白ちゃんには見せられない。


「真白を追い返さないのか?」

「そんな事する訳ないじゃん。私の唯一人の可愛い妹なんだよ!」

「お前ってシスコンだな」

「えへへ、真白ちゃんって可愛い所いっぱいあるんだよ。なんていうか一緒に居ると面倒見たくなるってうか……」


 真白ちゃんはちょっと人見知りな所もあるけど人懐っこくて可愛い。なによりあの笑顔に癒される。こういう所は雪菜に似ている。あんなに腹黒くはないけど……


「お前……真白の事を話してる時は顔がデレデレになってるぞ。どんだけ妹の事好きなんだよ」

「私は姉馬鹿だと自覚してるからね! みなもも真白ちゃんによく癒されてたでしょ?」

「初めて会った時は小生意気なガキだなと感じたけどな。接しているうちに嫌な奴じゃないって分かったし私を姉貴分として慕ってくれてるからな。何より彩果との姉妹百合を何度も堪能させて貰ったし」


 周りから見ても私と真白ちゃんは仲良し姉妹みたいだ。それが百合に見えているらしい。ちょっと照れくさいな。


「だから真白ちゃんを無理矢理追い返すなんてできないよ」

「あいつはお前を困らせたいみたいだけどな」

「だとしても怒れないよ。可愛い妹がそれで泣いちゃったら嫌だもん。だから我慢して諦めてもらうのを待たないとね」

「なんてこった。こっちはする気満々だったのに暫くお預けかよ……」

 

 みなもの性欲が強すぎる。私も人の事言えないけどいつまでエッチをせずにいられるんだろう。もしかしてずっとこのまま……?




 みなもは晩御飯を作っている。ママから教わっているだけあって格段に上達しているし料理のレパートリーも増えたみたいだ。


「出来たぞ。今夜は豚バラキャベツのしょうゆ炒めだ! スパイスもきいてて美味いぜ」

「おお、ママがよく作ってくれた料理だ! とうとう伝授したんだね」

「環瑠さんに比べるとまだまだだけどな。でも彩果と真白にとってのおふくろの味だぜ」

「真白ちゃんも好物だったみたいで何度もおかわりしてたからね。絶対に喜ぶよ!」


 その真白ちゃんは居間でちょこんと行儀良く座っていた。今どきの女子高生らしくスマートフォンをいじる事もな。お嬢様学校に通っているだけあって行儀が良い。私とは大違いだ。


「真白ちゃん、みなもが夕飯を作ったから一緒に食べよ」

「姉御の手料理……僕が食べてもいいの?」

「お前を飢えさせる訳にはいかねぇからな。私の料理を特と味わえ。栄誉満点だぞ!」

「なめこ味噌汁もあるよ。ちゃんと減塩してるから体にも優しいよ!」


 さすがママが得意としていた料理だ。この豚バラもだけど塩分を取りすぎないように工夫していて健康に気を遣っている。それでいてお肉と野菜のボリューム満点。ママの私達に対する愛を感じる。真白ちゃんにも伝わってるかな。


「これってお母さんがよく作ってくれた……」

「真白ちゃんの大好物だったもんね!」

「うん……」


 なんだろう、どことなく浮かない顔をしている。もしかしてみなもが作ったから完璧に再現できてないかもしれないから不安なのかな。


「とにかく食べよ! いただきまーす!」

「どうだ? 初めて作ったにしてはよくできてるだろ?」

「美味しい……これをみなもが作ったんだね。」


 ママの料理の味を見事に再現出来ている。やっぱりみなもは凄い。


「どう? 真白ちゃん」

「お母さんが作ったのと同じ味だ……姉御は料理の天才だね」

「よせやい。環瑠さんに比べたらまだまだだぜ」


 よかった、真白ちゃんが笑顔になった。やっぱり彼女の笑顔を見ると癒される。


「ビールも開けちまおうぜ。豚バラと相性抜群だって環瑠さん言ってたからな」

「お酒が止まらなくなっちゃうから一本だけだよ」

「分かってるよ、むしろ彩果が飲み過ぎないようにしないとな」


 どうやら私はお酒に強いみたいだ。最近になってアルコールを含んだお酒を飲んでみたけど全く酔う気配がなかった。


「もしあの時普通のアルコール入りのビールを飲んでたら彩果は酔わずにあの下品なやり取りもなかった……『オーバーキル』も誕生しなかった訳だよな……」

「えへへ、バタフライエフェクトってやつだね」


 我ながら変わった体質だな。ノンアルコールで空酔いするのにアルコール入りのお酒に強いなんて……

 ふと真白ちゃんがお酒を飲む私達をみつめていた。


「どうだー? 真白も飲んでみるか?」

「もうみなもったら! 真白ちゃんはまだ十八歳だよ。お酒は二十歳になってから!」 

「遠慮しておくよ、僕が酔ったら二人がエッチするのを見逃すかもしれないからね」


 そこはまだ二十歳未満だからって断って欲しかった……まさか私達が酔った勢いでエッチすると思ってるのかな。絶対見せないんだから!



 

 晩ご飯を食べ終わって少し経ってからお風呂に入る事にした。


「お姉ちゃんってさ……そんな色気のない下着つけてるの?」

「別に色気なんて必要ないもん。スポーツブラは通気性が良くて楽なんだよね」

「私は彩果がどんな下着つけてても魅了的だぜ」

「みなもー!」

「よしよし」

「本当何処でもイチャイチャするんだね……そのままエッチしてくれないかなぁ」


 そういう真白ちゃんは随分と可愛らしい下着をつけている。今どきの女子高生って皆こうなのかな? もしかして恋人のこがらし先生の趣味なのかも。


「あと姉御はなんでノーブラなの……」

「丁度良いブラがないんだよ。家に居るときはノーブラで十分だし外ではサラシを巻いてるからな」

「この前下着を買いに行ったんだけど、みなものおっぱいが大きすぎてブラジャーの種類が少なすぎたんだよね。かわいいのが全然なかったんだよね。大きいと値が張ったりするし……巨乳あるあるみたい」

「あんなださいブラ付けるくらいならノーブラの方がマシだぜ」


 でもひんぬーなら付けられるブラジャーの種類も豊富だからね。そんな事で悩んだ事は一度もない。 これもひんぬの利点だ。巨乳に勝った! どやっ!

 

「真白ちゃん、もしかしてみなものおっぱいに妬いてる? 私と同じひんぬーだもんね!」 

「いや僕の方が僅かに大きいしお姉ちゃんは絶壁だしまったく谷間もないよね」

「あるもん! 普段はないけど寄せればできるもん!」

「私は彩果の胸が宇宙で一番好きだぜ」

「みなもー!」

「よしよし」

「本当に仲良いよね……何も頼まなくても勝手にイチャついてるとこを見せてくれるんだもん」


 真白ちゃんがマジマジと裸で抱き合う私達を見ていた。出来ればこれで満足して欲しい。

 ていうか真白ちゃんに胸マウントを取られたんですけど! そんなに変わらないんですけど! あと胸の小ささならママが一番だと思う…… 

 そのママの血をひいているんだから寧ろひんぬーを誇りに思うべきだと思う。もしかして真白ちゃんはママの事そんなに好きじゃない……? 考えすぎか。


 湯船に入っている時も真白ちゃんに凝視され続けた。気になって仕方がない。


「湯船に浮かぶ胸なんて初めて見たよ……穂積さんでもここまで大きくないからね。お姉ちゃんはこれを一人占めしてるんだよね。毎晩堪能してるんだよね」

「言わないもん! 恥ずかしくて言えない……私がみなものおっぱいをああしたりこうしたり……」

「彩果お前……自分から喋ってるぞ」

「もっと詳しく教えて欲しいな」

「駄目駄目! もう言わないからね!」


 うっかり口を滑らせるとこだった。気をつけないと。




「へー二人は同じ布団で寝てるんだね」

「夫婦なんだから当たり前だろ。毎晩彩果を抱き枕にしてるぜ」

「真白ちゃんも一緒の布団で寝る?」

「結構だよ。仲良し百合夫婦の邪魔はするつもりないからね。百合に挟まるのは誰であろうと罪だって心得ているよ」


 久し振りに会ったから昔みたいに一緒に寝るのもありかなと思ったけれど、百合好きとしての心得を守っているみたいだ。やっぱり私の妹だなぁ……


「だって僕がそこに居たら二人がエッチ出来ないでしょ? 僕は床で寝るから普段みたいにエッチを始めてよ」


 やっぱりそれが目的か。真白ちゃんが居なかったらエッチしてたかもしれない。


「真白ちゃんの前ではエッチしないもん! ていうか布団を用意してあげたからそこで寝なさい!」

「今日はしないんだね。だったら待ち続けるだけ。 僕はここに居候するつもりだよ。二人のエッチが見れるまでね」


 ああ……どうしよう。諦める気配が全くない。いつまでこんな事が続くんだろう……やっぱり真白ちゃんはいつだって波乱を起こすんだ。これからどうしよう……

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