ライ麦畑のその先で③
そうして俺達は、アズサに引き寄せられたどうしようもない馬鹿として、二人で共に生き始めた。
それから、俺は様々なことを経験することとなった。特に、俺の特異性とベラトリックスの特異性がマッチした出来事があり、それは銀行強盗だった。
ベラトリックスが開心術で周りの人々を気絶させている間に、俺が分厚い扉をくぐり抜けて金庫の金を盗むという行為はなにより興奮した。それがとてつもなく気持ち良くて、何回も重ねているうちに俺達はお尋ね者になってしまった。
別に後悔はしていない。行けるところまで行ってみる、それが俺の人生だ。ただ、時折思う。空の上からそんな俺達を見ているであろうアズサは何を思っているのだろうか? と。俺達が死んだ時、恐らく辿り着くのは天国ではなく地獄だろうからアズサには多分会えない。だからアズサ本人に会って確認することもできやしないが、俺達がアズサを忘れることなど一秒たりとも存在しない。
強盗の準備をしている時も、強盗をしている真っ最中でも、警察に追われている時だろうと、いつだってアズサは俺達の心の中に宿っている。
――ベラトリックスとと共に人生を歩み始めた俺は、ライ麦畑から出る最中にこんなことを訊いてみた。
『列車内の真実ってなんだ?』と。
そしたらベラトリックスから、『記憶を取り戻したらじきに分かる。アイリック・カンザスエイト精神医療センターで目醒めたお前に、看護師が説明してたからな。実体験なんだから、俺が説明するよりも記憶を取り戻した方が早い』という返答が返ってきた。
そうして時間は経過して、ベラトリックスの開心術によって失われていた記憶を取り戻した俺は、そのアイリック・カンザスエイト精神医療センターで看護師から教えてもらったという〝列車内の真実〟とやらを、イギリスからアメリカへ帰る飛行機の中で反芻した。
『――アズサさんが生前計画していた、ブエノスアイレスへの旅行計画。それを、人体実験の最中に昏睡状態に陥ってしまったあなたがご自身の精神世界の中で発現させたのですよ。恐らく、Gardenや悲しみの湖畔などで精神世界を共有していた故に、アズサさんの精神の一部がキビトさんの精神の中に混入してしまったのでしょうね。どうでしたか? アズサさんが生前あなたと行きたがっていたブエノスアイレスの列車旅は――』
………………待てよ?
つまり……あれは……列車内のことは、全て昏睡中に見た夢だったということか?
本当に?
じゃあ、今隣りに座っているベラトリックスは、一体なんなんだ? ……まさか俺の……幻覚なのか?
長い作品でしたが、最後までお読みいただき本当にありがとうございました!
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また、次の小説でお会いしましょう。柊蓮でした。
では、また。




